1999/7
No.65
1. 吸音材について 2. 昭和7年発行の計測器カタログ 3. ISO/TC43/SC1プラハ会議報告 4. 2nd Joint Meeting of ASA and EAA会議報告 5. 寄 り 道 6. 第4回ピエゾサロンの紹介
7. 健康影響に基づいた騒音評価の方法 8. 低周波音レベル計NA-18の概要
      <会議報告> ISO/TC43/SC1、SC2、EAA/ASA報告
 ISO/TC43/SC1 プラハ会議報告

常務理事 山 田 一 郎

 3月下旬、ISO/TC43/SC1の定例総会に参加するため、プラハを訪れた。ISO/TC43は音響に関する国際規格を審議する技術委員会であり、通常、基本規格を審議するTC43本体と騒音に関する規格を審議するTC43/SC1、建築音響を扱うTC43/SC2に分かれて活動しているが、前回97年秋の浜松会議に引き続き3つがリエゾンして総会を開いた。ただし、TC43/SC1とTC43は市の西北にあるプラハ工科大で開催され、TC43/SC2は市の南東にある建築センターで開催された。総会を機に作業グループ(WG)の会合も多数開かれた。筆者の出席した会議は次の通りである;SC1/WG38(3月22日全日)、SC1/WG50(23日全日)、SC2/WG23(24日全日)、TC43/SC1総会(25日AM-26日AM)、TC43総会(26日AM、SC1終了後)。

 プラハ工科大は宿泊したホテルから徒歩10分のところにあり、落ち着いた佇まいの町を抜け小鳥のさえずる中をのんびり歩いて会場へ出かけた。総会は大きな階段教室でWGは幾つかの会議室に分散して開かれた。学生達に混じって扉のない簡素なリフトに飛び乗って上下階を移動した時はいささかスリルを覚えた。なお、WG会議の三日間は参加者全員で近くの食堂に赴きお昼を食べたが、分からないメニューと英語の会話に四苦八苦させられた。

 SC1/WG38 ; 道路路面吸音特性の現場測定法を審議するWG。出席は主査を含めて9名。筆者以外は長年一緒に作業してきた仲間同士の雰囲気だったが、いきなり会場に行ってオブザーバーとして出席したい旨申し出たにもかかわらず快く受け入れてくれ有難かった。まず、草案CD13472-1(第一部拡張路面法)に対する各国のコメントへの対応が議論された。非常に小さな吸音率の場合に測定の再現性が悪くなるため、不確かさの限界についての記述を追加するなどの条件でDISとして回付するよう提案することになった。案中にM系列相関法(MLS法)を用いるのが良いとの記述がありそれしかないという雰囲気だったため他にも方法もあると指摘したがピンと来ないようだった。帰国後、青島の方法(TSP法)に関する論文を幾つか揃えて送ったところ、知らなかったと感謝された。その後、第二部spot methodの話に移り、現状では音の漏れや路面の熱ゆらぎで安定な測定値が得られず、良い手法の提案があるまで、作業を休むことになった。

SC1/WG50 ; 囲いや作業室の設置による騒音対策の指針出席は6名。最終草案DIS 15667(承認済み)への各国コメント(表現上の軽微な修正を求めるもの)への対応が討議された。最終段階のため、逐一慎重に討議されたが、英国の委員が参加して作った最終草案にフランスから英文表現がおかしいというクレームが付き、主査らが当惑している様子が窺われた。修正の結果を付して最終案(FDIS)として回付することになった。

TC43/SC1総会;3月25日〜3月26日午前に掛けて行われた(TC43の方は、SC1の総会終了後しばし休憩した後、そそくさと行われ、わずか1時間で終了した)。会議は、教壇に議長、事務局らが座り、各国の委員らが階段教室に学生のように並んで行われた。椅子の座り心地が悪く、およそくつろげるものではなかったが粛々と進められた。午前10時開会、前回の浜松と同じ手順で議事進行し、快調に進んだにもかかわらず、夕方5時半まで延々と続いた。個々の議題については割愛するが、規格化作業の遅れが目立つためかISO中央事務局から期限厳守の指示が出て期限切れとなり作業終了となるものが続出し、その対応として姑息な手段だが新規作業項目として登録しなおす決議が幾つもあった。元来ボランタリーに行われるものだけに期限の厳守はなかなか難しいことと感じられた。ちなみに、WG25(音響インテンシティによるパワーレベル測定)は橘先生、WG28(無響室等における音圧測定によるパワーレベル測定)は子安先生が主査をされており、WG草案の作業状況等についてさっそうと説明されるのを拝見し、ひたすら感心するばかりであった。なお、次の総会は2000年12月に米国カリフォルニア、次々回は2002年春フランスのパリで開催される予定となった。最後に、日本から総会に出席したのは子安勝(千葉工大)、橘秀樹(東京大)、鈴木陽一(東北大)、鈴木英男(小野測器)、山田一郎(小林理研)、吉村純一(小林理研)である。プラハ会議の全容については日本音響学会会誌および騒音制御に掲載される記事をお読みいただきたい。

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