1999/7
No.65
1. 吸音材について 2. 昭和7年発行の計測器カタログ 3. ISO/TC43/SC1プラハ会議報告 4. 2nd Joint Meeting of ASA and EAA会議報告 5. 寄 り 道 6. 第4回ピエゾサロンの紹介
7. 健康影響に基づいた騒音評価の方法 8. 低周波音レベル計NA-18の概要
       <技術報告>
 低周波音レベル計NA-18の概要

リオン株式会社 音測技術部 野 島 康 生

1.はじめに
 可聴音の騒音測定分野では、携帯型で高機能な騒音計が数多く供給され広く使われているが、低周波音(周波数が80Hz以下)の専用測定器は高機能化などに対応した製品が少ないのが現状である。ここに紹介する低周波音レベル計NA-18は、ISO1)規格に定めるG特性音圧レベルと1/3オクターブ実時間分析を同時に演算する機能を搭載したもので、実時間分析器付き精密騒音計NA-27をベースに開発し、今後の低周波音測定における汎用製品を目指したものである。

図1 低周波音レベル計 NA-18

2.低周波音レベル計NA-18の構成2
 本器は、低周波音用マイクロホンUC-24と低周波音レベル計本体で構成され、その詳細を図2のブロック図に示す。

図2 NA-18 ブロック図

1)マイクロホン
 マイクロホンは、低周波音測定専用のプリアンプ一体型セラミックマイクロホンUC-24を使用している。このマイクロホンの動作原理は、音圧の変化を円錐型に整形した高分子の振動膜で受け、円錐の中心に取り付けられたレバーがセラミック振動子を変形させ、このとき発生する電圧をプリアンプで検出するものである。図3にセラミックマイクロホンの模式的構造を、図4にUC-24の周波数レスポンスを示す。

図3 セラミックマイクロホンの模式的構造

図4 UC-24の周波数レスポンス

2)アナログ部
 マイクロホンの信号は、低周波音レベル計本体に入力され、アッテネータと増幅器で構成される測定レンジ切り替え部及び1Hz〜1kHzのフィルターによって帯域制限された回路を取りA/D変換器に入力される。A/D変換器は量子化誤差による測定のダイナミックレンジが減少しないよう、24ビットA/D変換器を使用している。ちなみにサンプリング間隔は毎秒約4000回である。A/D変換器に入力される信号は波形の出力端子(交流出力端子)に分岐され、データレコーダや外部機器を接続できる。

3)周波数補正特性及び1/3オクターブバンド分析などの演算
 A/D変換されたデジタル信号は、DSP(デジタルシグナルプロセッサー)でG特性の周波数補正演算及びリアルタイム1/3オクターブ分析の演算を行うとともに、その結果を実効値変換する演算まで行う。ここで、1/3オクターブフィルタの性能はIEC61260:1995Class1に適合し、G特性周波数補正回路はISO7196:1995の基準特性をほぼ実現している。
 これらの特性は、アナログ回路で実現した場合、回路部品が温度や湿度の影響を受けやすいものであるが、DSP演算で実現したことにより、非常に安定である。図5はアナログ方式とデジタル方式の動特性の温度変化を-10℃〜50℃で測定した結果である。

図5 動特性の温度変化

4)表示
 DSPで演算した結果はCPUに渡され、同時に実効値演算した結果がD/A変換器を通して直流出力端子に接続される。この直流出力端子には、G特性、平坦特性及び1/3オクターブバンドフィルタの選択した周波数、この何れか1つをメニュー画面で設定することにより出力することができる。
 CPUは、等価音圧レベルの演算を行った結果及び、瞬時値、最大値などの表示や操作機能の制御のほか、データ通信の制御を行う。本器の表示器は192×192ドットの液晶表示器で、数値表示、グラフ表示をおこなう。

5)校正用内部基準信号
 本器には250Hz 114dBの正弦波の校正信号を内蔵し、周辺機器とのレベル合わせに用いることが出来る。
 音響校正の方法は通常の騒音計と同様にピストンホンを用いて行う事ができる。音響校正を行う場合、周 囲の低周波音の影響を受けにくくするために、10Hz以下の周波数を減衰させるハイパスフィルターを設けている。内蔵校正信号は音響校正と整合するよう、250Hzに選択した。

3.機能と特徴
1)メモリー機能
 本器は測定毎の結果を記録するマニュアルメモリーと測定値を連続的に記録するオートストア機能を備えており、いずれの記録データも表示画面に読み出すことができる。
 マニュアルメモリーは最大200画面ストアでき、オートストアで使用した場合は、音圧レベル測定画面で18000データ、1/3オクターブ分析画面で6000データ記録できる。
 オートストアしたデータに対しては、G特性音圧レベル、オールパスレベル、1Hz〜80Hzの1/3オクターブバンドの中から1つの項目を選択して、レベル−時間表示が可能である。

2)通信機能
 大量の測定データを迅速に保存したり集計するには、通信機能が不可欠です。本器にはRS232Cによる通信機能を装備し、コンピュータやオプション製品のプリンターを接続して測定中の画面やメモリーに保存されたデータを取り出したり、印字する事ができ、さらに携帯型ノートパソコン等との通信用に赤外線通信機能も搭載している。

4.終わりに
 低周波音の測定や評価あるいは対策などにおいて、従来は低周波音レベル計と分析器あるいはデータレコーダなど複数の測定機器が必要であった。ここに紹介したNA-18型低周波音レベル計は、ISOに規定するG特性とリアルタイム1/3オクターブ分析する性能に加えて、データメモリー機能などを備えており、今後、この分野に大きく貢献するものであると考えているが、皆様のご意見を伺いながら、製品品質向上に努めてゆく所存である。

 文献
 1) IEC61260:1995 ISO7169:1995

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