1985/3
No.8
1. いろいろな雛型 2. INTER NOISE 84 3. INTER NOISE84 音響インテンシティについて 4. INTER NOISE84 低周波音

5. INTER NOISE84 航空機騒音

6. パイナップル・レイン

7. 低周波音の実態について 8. 防滴型補聴器について 9.振動の基準について
       <会議報告>
 INTER NOISE 84 (国際騒音制御工学会)

 米国と日本の共催のかたちでインターノイズ84が昨年12月初めにハワイで開催されました。この会議は騒音研究の分野において文字通り国際的な重要行事で、毎年開かれます。以前この研究所ニュースで御紹介したことがありますが、83年にはイギリスのエジンバラ市で開かれました。
 12月といえば日本では冬の寒さが身にしみる季節ですが、会場にあてられたのはクーラーのきいたワイキキのホテルで、明るい常夏のイメージが今回のインターノイズ全体の雰囲気に少なからず寄与していたように思われます。ハワイという立地条件のせいで米国からの参加が非常に多かったことも会場の活気を盛り立てる要因になっていたようです。
 私どもの研究所からは10名が各自の研究成果を携えて参加しました。ホノルルの空港に降りたったのが12月2日の朝で、その日の夕方から登録事務デスクが店開きということでしたから、我々も機内で一夜を過した眠たさを残したまま名札や論文集などを受取る手続きにおわれました。日本の事務局が国内からのカタログなどのパンフレットを展示するために会場に借りたコーナーの飾りつけから、梱包してきた段ボール箱の始末まで、その手伝いに大騒ぎの一日でした。展示会場のマネージャーが大変気のいい人で、何かと親切にしてくれたのは有難かったのですが、早口のアメリカ語で話されるのには少し疲れました。彼、シュワルツ氏は展示会場の他にも色々な催しの担当者になっていたようで、活発に動きまり、また彼の夫人もバスツアーの案内役をするといった様子でした。
 此の度の大会では特に御夫人がたの活躍が特徴的に思われます。チェアマンのラング氏、企画担当のメイリングJr氏、INCE-USA会長のシーボルト氏などの御夫人がたが、汗だくで受付での応対や案内係をされていたのが印象的でした。

 

 会期は12月3日から3日間で、初日は8時半から開会式がとり行われ、ひきつづいて特別講演に入りました。特別講演は日本における交通騒音対策の実状(Japanese Experience in Transportation Noise Control)について五十嵐先生が沢山のスライドを使って紹介され、この研究所で進められた仕事の一部も登場しました。今回の大会では2つの特別講演があり、もう一つはクロッカー教授(米)のインテンシティ計測に関するもので、第2日目の朝に講演されました。開会式につづいて同じ会場が使われたこともあって、五十嵐先生の講演は大入り満員でした。
 テクニカルセッションは1階の大きなホール(パシフィックボウルルーム)を6つに区切って進められました。ボウルルームの中は完全に禁煙領域に指定され、入口のロビーに大きな灰皿がいくつもおかれており、喫煙場所に当られていたのですが、スモーカーが極めて少なくなっていることを感じさせられました。
 各セッションでは、1件20分の持ち時間で6会場同時進行のかたちで研究発表が行われました。日米共催ということで、会場毎に日米各1人づつ、2人のセッションオーガナイザが任命されて議事の円滑な進行にあてられました。日本からの発表に関するディスカッションがこみいった議論になった際にはこのセッションオーガナイザを置いたことが、大いに役立ったようです。
 今回の大会にはヨーロッパからの参加者が例年に比べて少なく、ハワイはヨーロッパから遠い所という感じがします。数少ないヨーロッパ勢にあって、西ドイツからの参加が比較的多かったのは次回(85年)の開催地がミュンヘンに予定されているからなのかもしれません。PTBのマーティン教授が閉会式でWelcome to Munichの呼びかけをされ、再会をたのしみに3日間の大会の幕が降ろされました。
 今回の特徴の一つに大会終了の翌日に設けられたTechnical Activities Dayがあります。幾つかの課題を取り上げて自由討論をしようという趣旨でINCE/USAが企画した集まりで、前日まで発表会場に使われていた部屋を利用して午前9時から始められました。夕方までの予定でしたが、実際にはどのグループも大分早めに解散したようです。正直なところ英語の飛び交う議論に口をさしはさむには語学力が遠くおよびませんでした。
 年に一度、騒音と振動についての国際的な研究発表の場であるインターノイズは我々に多くの知識や情報を与えてくれると共に日本における研究の成果を広く世界に紹介することのできる機会となるもので、今回のように10名もの参加者を小林理研から送ることができたことは大変喜ばしいことです。
 今やアメリカは日本に追いつけ追い越せ、とさえ言われているとの話をライヤン博士がパーティの席で五十嵐先生に語ったのが誇らしくもあり、身のひきしまる思いのする印象でした。                          

 (文責 山下充康)

−先頭へ戻る−