2003/10
No.82
1. 制度と技術力・開発力 2. 鉄道騒音における高周波音の発生 3. 統一型遮音壁

4. euronoise 2003, Naples

5. 第19回ピエゾサロン
6. 第20回ピエゾサロン 7. 2ch小型FFT分析器 SA-78
      <会議報告>
 
euronoise 2003, Naples

所 長 常務理事 山 本 貢 平

 平成15年5月19日から21日までの3日間、euronoise 2003がイタリアのナポリで開催された。euronoiseは第1回が1992年にロンドンで開かれた後、リヨン(1995)、ミュンヘン(1998年)、パトラス(2001)で開かれており、今回が第5回目ということであった。私は東大生研の橘教授、日本自動車研究所の押野康夫氏、リオンの瀧浪弘章氏とともにこの会議に出席した。

 事務局の集計によれば会議の参加者数は489名で、そのうち95%がヨーロッパからであった。また、会議の内容としては、4コマのPlenary lecture、34のstructured session、7つのcontributed session、4つのposter sessionがあり、7つの会場でこれらがパラレルに進行するという、かなり規模の大きい会議であった。

会場となったナポリ大学Federico II キャンパス

 第1日目のオープニングではGeneral ChairmanのLuigi MAFFEI氏の歓迎の挨拶に続き、Honorary ChairmanのRoberto POMPOLI氏らの挨拶があった。今回の会議は欧州音響学会(EAA)とイタリア音響学会(AIA)の共催であり、そのテーマは"The European challenge for a better sound environment"であることなどが紹介された。引き続いてPlenary Lectureに入った。まず、G.Paque氏(European commission, Directorate Environment, Brussels, Belgium)が"The environmental noise policy : an integrated approach"と題する講演を行った。その内容は2002年6月25日に欧州議会および閣僚理事会によって採択され、同年7月18日から発効している「環境騒音のアセスメントと管理に関する」欧州共同体の指令2002/49/ECに関するものであった。すなわち欧州共同体の加盟国は、1996のグリーンペーパーの結論を深刻に受け止め、将来における騒音政策を協議し結論を得て行動に入ったこと、その行動とは戦略的騒音地図(strategic noise map)を加盟国が作成すること、noise limitを定めて騒音低減のための目標を立てること、さらに行動計画(action plan)を策定してそれを実施することなどである。さらに、加盟国は2007年までに最初の戦略的騒音地図を作成しなければならないこと、2008年までに行動計画を策定しなければならないこと、2009年までに実施報告書を欧州議会および閣僚理事会に報告しなければならないことなど具体的なプログラムが進行していることが説明された。

 実は、この内容は現在ヨーロッパで進行している大きな流れであるとともに、今回のeuronoise 2003が欧州指令を実施するための重要な技術的サポートを提供するための、情報交換の場となっていたことは間違いない。実は我々の講演発表も"European and Japanese legislation comparison on noise control"というタイトルを合わせ持つセッションとしてプログラムに組み入れられていたが、このような流れの中にあるとは夢にも思わなかった。今、そのようにして会議を振り返ってみると、講演発表のいつもとは異なる活発さ、真剣さが納得できた。

 さて、欧州指令の技術的サポートに話を戻そう。戦略的騒音地図を作成するためには騒音の推計モデルが重要な役割を果たすことになる。それ故、加盟国が共通で使うための計算式の構築を図っている。すでにヨーロッパ各国には複数の騒音計算式が存在しており、統一的に使うには計算式の適合が必要である。それを実施するのがHARMONOISE Projectである。ちょっと無理があるかも知れないが、Harmonized Accurate and Reliable Methods for the EU Directive on the Assessment and Management Of Environmental Noiseのアブリビエーションである(http://www.harmonoise.org/ 参照)。

 このプロジェクトに多額の予算が投入されており、騒音源のモデル、伝搬モデル(実用モデル、精密モデル)、騒音対策、アセス方法、市民へのデータ公開方法などのツールの検討が実施されている。また、戦略的騒音地図は道路騒音、鉄道騒音、航空機騒音、工場騒音について作成することになっているので、騒音制御関係のほとんど全分野が関係するところとなっている。今後、環境騒音のあらゆる分野で、欧州の発言力が強くなりそうな予感をもちながらナポリを後にした。

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