2003/10
No.82
1. 制度と技術力・開発力 2. 鉄道騒音における高周波音の発生 3. 統一型遮音壁

4. euronoise 2003, Naples

5. 第19回ピエゾサロン
6. 第20回ピエゾサロン 7. 2ch小型FFT分析器 SA-78
       <技術報告>
 
2ch小型FFT分析器 SA-78

リオン株式会社 計測器技術部 岡 部  武

1.はじめに
 騒音や振動の発生原因を追求したり、低減対策を講じるためには、騒音や振動の波形の中身、すなわち周波数成分を分析することが必要となります。一般に周波数分析には定比分析と定幅分析の2つの手法がありますが、振動や騒音源の分析・対策のためには、詳細に周波数成分を分析する事が必要になります。この場合、FFTに代表される定比分析を行うことになります。SA-78は、この目的のために開発された2chのFFT分析器です。

2.SA-78の概要
 SA-78は現場での使用を意識したハンディタイプの 2ch FFT分析器で、好評を博したSA-77の後継器です。本器では、小型・軽量であり持ち運び易いSA-77の流れを踏襲しつつ、入力を2chとし、さらに、分析性能・機能の向上を実現しています。

 図1はSA-78の正面写真です。SA-78は電池も含めて約910gと軽量で、ハンドストラップも標準装備しており、片手で楽に持ち運ぶことができます。
図1 SA-78外観図
2.1. SA-78の機能
 SA-78ではBNC入力を2ch用意し、2chのFFT分析を同時に行うことができます。各チャンネルの時間波形やパワースペクトルをそれぞれ表示するだけではなく、2ch間のクロスパワースペクトルや伝達関数、ch間位相、コヒーレンスの測定を本器だけで簡単に行うことが可能です。特に、伝達関数を簡単に測定できるため、現場で構造物の解析等を行うことができます。

 また、本器では定電流駆動タイプのセンサを入力コネクタに直結できるため、簡単な測定系で目的とする結果を得ることができます。

 図2は時間波形とパワースペクトルの表示例です。

図2 時間波形とパワースペクトルの表示

上のグラフに時間波形、下のグラフにパワースペクトルが表示されており、下段右端のバーグラフにオーバーオール値(周波数成分のパワー合計値)が表示されています。
 上記以外にも、SA-78はハンディタイプの分析器でありながら、非常に豊富な機能を搭載しています。平均演算・トリガ機能はもちろんのこと、スペクトルの微積分や、オクターブ合成、ユーザ定義による周波数補正機能(オーバーオール値にのみ反映)、パーシャルオーバーオールの測定等も行うことができます。

2.2. 操作性
 SA-78は、現場型の製品であることを考慮し、簡単な操作でご使用いただけるようになっております。図3はSA-78の液晶画面とキースイッチの部分を拡大した写真です。キースイッチは目的毎に色分けし、操作時の視認性に配慮しております。液晶画面はバックライトを点灯する事ができますので、暗所での測定にも不便をきたしません。
図3 液晶・キースイッチ部図

 また、操作面では、図4の画面に示すように、画面に波形を表示しながら表示する関数を切り替えることができ非常に便利です。同様にレベルレンジや、周波数レンジも、波形を表示しながら設定を切り替えられますので、より早く測定条件にマッチした設定にたどり着くことができます。
図4 表示関数切り替え画面
2.3. データの保存
 測定した結果は、別売のプリンタを接続してその場で画面に表示されている情報を印刷できる他、付属のCFカードにデータを保存することができます。保存したデータはSA-78の画面に再度読み出すことも可能ですし、PC上でEXCEL等の市販ソフトを用いて2次処理を行うこともできます。

2.4. PCでのモニタ
 SA-78はPCに接続するためのUSB端子を持っております。付属のデータモニタソフトを用いますと、SA-78の画面とキースイッチがPCの画面に表示され、PCからUSB経由でSA-78を操作することができます。

2.5. 時間波形収録機能(オプション)
 上記の機能以外に、SA-78では時間波形収録機能をオプションとして用意しています。従来、測定現場で長時間の時間波形データを収録(音に例えるなら、長時間の録音)して、持ち帰って再分析しようとすると、DATを用意しなければなりませんでした。SA-78では、長時間の時間波形データをコンパクトフラッシュカードに保存できるため、現場で簡単に波形を収録することができます。収録した波形はwave形式で保存されます。

3.おわりに
 新製品の2ch小型FFT分析器 SA-78を紹介させていただきました。参考までに、本器の主要な性能を表1にまとめましたのでご覧下さい。本器が多種多様な計測の分野で利用され、活躍できることを望んでおります。
表1 SA-78 性能表

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