2003/1
No.79
1. 謹んで新年のお慶びを申し上げます 2. 表面インテンシティ計測を応用した押し当て式機器異常音検出センサ 3. 青銅噴水震盆 4. Low Frequency 2002 in York 5. FORUM ACOUSTICAUM SEVILLA 2002

6. WAVE 2002

7. 第11回国際エレクトレットシンポジウム 8. 新型騒音計NL-22/32
      <会議報告>International Workshop
 第11回国際エレクトレットシンポジウム

顧 問 深 田 栄 一

 2002年10月1日から3日まで、The 11th International Symposium on Electretsに参加した。AustraliaのMelbourneでMonash UniversityのProf. Flemingが会議を主催された。

 圧電応用研究室の遮音防振プロジェクトの深田、山本、伊達、木村、大久保、児玉、Mokryを代表して、深田が"Sound Isolation by Piezoelectric Polymer Films Connected with Negative Capacitance Circuits"の研究発表を行い、つづいてチェコ共和国からの日本政府留学生のDr. Pavel Mokryが"Attenuation of the Sound Transmitted Through the Piezoelectric Curved Membrane: The Effect of the Electrically Controlled Elasticity"の研究発表を行った。

 講演の内容は、圧電高分子ポリビニリデンフロライド(PVDF)のフィルムを湾曲させて負性容量回路を接続すると、音の伝達を任意に制御できるという研究である。単一周波数では任意に透過損失を増加または減少させることができる。遮音壁などの応用で広い周波数範囲で一様に減衰させるためには、特別な回路の設計が必要である。100Hzから2kHzの範囲で5〜10dBの透過損失増加を示す実験結果を例として示した。 講演後の第一の質問は、Active Noise Controlによる遮音方法との比較であったが、この方法では、圧電フィルムがsensorとactuatorを兼ねておりfeedbackの増幅器のみでよい点が優れていると答えた。第二の質問は、平面波でなく拡散波ではどうかであったが、広い面積の二次元アレイ状のパネルで実験を進めていると答えた。

 Dr. Mokryの講演は、湾曲したフィルムに音を放射した時の歪の式を解き、その音響インピーダンスを求め、それから音響透過損失の理論式を導いた。低周波領域での透過損失の計算値は、フィルムの曲率半径が小さいほど、厚さが厚いほど、ヤング弾性率が大きいほど、大きくなり、100Hzで約50dBにも達する。負性容量回路を接続したときの透過損失増加の実験曲線が、妥当な数値を代入した理論曲線とよく一致することを示した。 旧友のDr. P. V. Murphyはエレクトレットの研究者であるが、現在はシンガポールにあるLectretという会社の社長になり、エレクトレットマイクロフォンの生産をしている。近くアメリカで最近の遮音技術の講演をするので、研究発表のCDを貸してくれないかと頼まれた。

 最近の携帯電話の普及で、エレクトレットマイクロフォンの需要は飛躍的に拡大している。1920年頃、江口元太郎はカルナウバ蝋を用いて初めてエレクトレットを作った。1966年、BellのSesslerとWestがテフロンのエレクトレットマイクロフォンを発表しこれが現在まで続いている。しかし最近の研究では、繊維状ポリプロピレン膜のエレクトレットや空孔性テフロン膜のエレクトレットに関心が集まり、見かけの圧電率がd33=300pC/Nに達している。 エレクトレットの研究はブラジルで盛んに行われてきた。この国際シンポジウムは3年毎に開かれるが、次回2005年にはブラジルのイグアス(滝で有名)で開かれることが決まった。その次の2008年には日本で東京理科大学の古川猛夫教授が主催することも決まった。

過去および将来のシンポジウムの主催者
後列左から:
深田(日)、Lewiner(佛)、Konsta(ギリシャ)、
Fleming(豪)、Sessler(独)、Xia(中国)
前列左から:
古川(日)、Faria(ブラジル)、Gerhard-
Multhaupt(独)、Giacometti(ブラジル)

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