2003/4
No.80
1. ニュース刊行20年に際して 2. 間伐材を用いた吸音性遮音壁の開発 3. 音 叉 4. 新型振動レベル計 VM-53/53A
      
 ニュース刊行20年に際して

名誉顧問 五 十 嵐 寿 一

 小林理学研究所が発行している「小林理研ニュース」は創刊が1983年の6月で、今年をもって満20年を迎えることになる。

 研究所は基礎物理の研究を目標に1940年に設立されたが、1970年頃からは音響を中心とすることになり、基礎研究の他に外部からの委託が主要な業務になっていた。従来研究所に寄贈されてくる資料には、内外の各研究機関の発行する論文集・年次報告等があり、その中にそれぞれの機関における業務内容を紹介する写真入りの小冊子があった。このような資料は音響に関係のある外部の方々に研究所の活動内容を知って頂くのに適当であると考えて、当所でも肩の凝らないニュースを発行することにした。

 研究所では音響研究の一環として、所内で廃棄寸前にあったカーボンマイクロホンや、以前音の強さの絶対測定に用いられたレーリーディスク、輸入されたヘルムホルツ及びケーニッヒの共鳴器、バルクハウゼン聴感式騒音計をはじめ、所外の方々のご厚意で寄贈された電磁オッシログラフや初期の録音機など各種の測定器や実験器具を収集していた。その他、永く図書室に埋もれていた1862年刊行のHermann von. Helmholtz の Tonempindungen という革表紙の原著等もある。また、山下現理事長の並々ならぬ努力により収集されたエジソンの蝋管蓄音機をはじめ各種の珍しい発音装置なども加わり、現在は音響科学博物館として所内に展示されている。ニュースにはそれらの資料についても理事長の解説付きで、骨董品シリーズとして発刊以来ほとんど毎号に掲載されている。この記事を懐かしい読み物としてご愛読頂いている読者の方も多くおられるものと思われる。当初はこのようなニュースがいつまで続けられるかという不安もあったが、編集担当者の努力もあって20年間各号とも順調に発行されてきた。

 最近では当所の基礎研究や施設及び ISO等の外国文献の紹介の他、職員が外国の学会に出席した際の報告や音響に関する研究施設の見学記等、記事の内容も多岐にわたってきている。また近代音響学の大先輩である英国のR.W.B. Stephens 教授、騒音評価の指標を提案した米国BBN のT.Schultz 氏をはじめ、訪日の際に来所された著名な研究者の紹介や写真も、研究所の歴史の一こまとして掲載されている。  

 20年前の創刊号には音響学会で当所の職員が発表した3件の論文が掲載されているが、昨年の春の学会では、音響学会が7件、その他毎号に国際会議や騒音制御工学会における発表論文が数件ずつ掲載されていて、研究所の活動の経過もこのニュースから伺うことができる。

 最後に永年このニュースを購読頂いている各位に感謝申しあげるとともに、今後のご支援ご鞭撻を切にお願いする次第である。

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