2003/1
No.79
1. 謹んで新年のお慶びを申し上げます 2. 表面インテンシティ計測を応用した押し当て式機器異常音検出センサ 3. 青銅噴水震盆 4. Low Frequency 2002 in York 5. FORUM ACOUSTICAUM SEVILLA 2002

6. WAVE 2002

7. 第11回国際エレクトレットシンポジウム 8. 新型騒音計NL-22/32
      <技術報告>
 
新型騒音計 NL-22,32

リオン株式会社 音測技術部 堀 田  聡

1.はじめに
 今回開発した普通騒音計NL-22と精密騒音計NL-32は録音機能を装備する事のできる騒音計としてNL-20/21/31に続く新シリーズ最後の機種として開発されました。
 また、このNL-22とNL-32は実音モニター装置として、第10回音響学会技術開発賞を本年受賞いたしました。NL-22とNL-32(以下NL-22/32)は普通級か精密級の違いのみで機能は同一です。

NL-22,NL-32

2.NL-22/32とは
 NL-20/21/31の新シリーズは騒音計の新しい国際規格IEC-61672-1への適合、新技術の採用、騒音計シリーズの整理統合を目的として開発されました。新しい国際規格IEC-61672-1では環境に対する安定性に新たな規定があります。1つは電磁環境に対する性能(EMC)であり、これは騒音計から出される不要電磁波の制限、外部から到来する電磁波、静電気への耐性能などが規定されています。そして、これまでなかった気圧変動についても規定されました。また、校正に際して音響校正器の型式を指定しなければならなくなりました。
 NL-22/32はNL-21/31の機能を踏襲した上で新たにUSBインターフェースを搭載し、コンパクトフラッシュカードによるプログラムの差し替えで異なる機能を備えた騒音計や分析器として動作します。 またNL-21/31と同様、省電力動作、レンジ切替を要しない100dBのワイドレンジ動作、等価騒音レベル(LAeq)、時間率騒音レベル、最大値等を同時測定可能であり、自動測定による測定結果はコンパクトフラッシュカードに直接記録される為、大容量のメモリーを必要とする長時間の測定にも幅広く対応し、パソコンへのデータ転送処理も簡単に行えます。

3.録音機能付き騒音計
 本稿においては、NL-22/32が備えることができる代表的なプログラムカードとして、録音機能を備えた実音モニターカードNX-22J(別売)について紹介します。
 録音機能は主に環境騒音測定での用途を想定しています。日本の環境基準や騒音規制法では騒音を評価する際に、評価すべきでない音は除外して評価値を算出する事を求めています。これまでは騒音評価のための音の識別を測定者が長時間現場にて除外音の判別を行わなくてはならなかった。しかしこのように測定者が現場で行うにはかなりの労力が必要でした。
 そこでリオンでも自動測定システムの1つとして以前MDレコーダを利用し、ある一定以上の音を録音する機能を備えた実音記録装置XT-10Sを開発しました。このXT-10Sは全体がA3判のトランクケースの大きさであり、大掛かりなシステムでした。この機能をハンディータイプの騒音計だけで実現できるようにしたのが、今回開発したNL-22/32です。
 実音モニターカードNX-22Jを搭載した騒音計には除外すべき音を容易に判別する為に目的別にイベント録音、インターバル録音という2種類の録音モードが備わります。

イベント録音
インターバル録音

 イベント録音とは突発的な大きな音を判別する為に、あらかじめレベルを設定し、その設定レベルを超える1秒前から録音を開始し、設定レベルを下回ってから5秒後に録音を停止する録音機能です。設定レベルは1dBステップで設定することが可能です。
 インターバル録音とは自然音等の環境音の把握の為に、15分、30分、1時間と設定した一定時間毎に15秒間の録音を行う機能です。この録音により測定現場の音環境を把握する事ができ、イベント録音で検出できなかったような除外すべき音(虫の鳴声等)の手がかりを得る事が可能となります。
 録音方式に関しては独自の圧縮形式を用いて、録音ファイルを約1/4に圧縮しコンパクトフラッシュカードへ保存していきます。録音ファイルはサンプリング周波数12kHz、16bit長であり、この録音ファイルは発生音の種類を耳で聞いて判定するためのものであり細部の周波数成分が失われているために周波数分析等には適応できません。またこれは解凍時に原音に復元することができない事を意味します。
 録音時間に関しては64MBのコンパクトフラッシュカードに最大約130分の音を記録する事が可能です。
 またNL-22/32の開発と同時に測定データと録音ファイルを一括して処理する事のできるデータ管理ソフトNL-22PA1もあわせて開発しました。これはNL-22/32で録音された音をパソコンで聴いて不要なデータを削除し、環境基準や騒音規制法で求められる評価値の算出作業を容易にかつ迅速に行う事のできるソフトウェアです。

NL-22PA1(図をクリックすると拡大図が出ます)

4.プログラムオプションカード
 
録音機能以外のオプションプログラムカードとして、1/1、1/3オクターブ分析カードNX-21SA、ユニバーサルフィルタカードNX-21VA、1/1、1/3オクターブ実時間分析カードNX-22RT、FFT分析カードNX-22FTと多数用意しています。これらはプログラムカードを挿入してNL-22/32を立ち上げるだけで起動します。 本稿では最近発売されたNX-22RTとNX-22FTを紹介します。 NX-22RTは騒音(音圧)レベル、等価騒音(音圧)レベル、単発騒音(音圧)暴露レベル、騒音(音圧)レベルの最大値について1/1、1/3オクターブバンド分析による測定が可能です。また測定データはCSV形式で保存されるためパソコン用の汎用ソフトにてデータ処理を行えます。 NX-22FTはAP(A)、APおよび400点のFFTデータを演算し、画面に表示します。また瞬時スペクトル、平均スペクトル、最大スペクトルについてFFT分析による測定を行う事が可能です。ストアされたデータはCSV形式で保存されますが、ユーザーの便宜を図るため、エクセルマクロも添付しており、収集したデータを簡単に表計算ソフトのエクセルで取り扱うことができるようになっております。

NX-22RT画面
NX-22FT画面
システム構成図

5.NL-22/32の姿
 NL-22/32は実音モニターを備えることで、環境騒音の自動測定に対応した計測器となるばかりでなく、様々なプログラムカードを使用して、機能を入れ替えることにより、環境騒音測定以外の幅広い分野における騒音測定にも対応することができます。
 本器が環境騒音測定はもちろんのこと、音響計測分野の測定に幅広く使用され、活躍することを祈念いたします。

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