2003/1
No.79
1. 謹んで新年のお慶びを申し上げます 2. 表面インテンシティ計測を応用した押し当て式機器異常音検出センサ 3. 青銅噴水震盆 4. Low Frequency 2002 in York 5. FORUM ACOUSTICAUM SEVILLA 2002

6. WAVE 2002

7. 第11回国際エレクトレットシンポジウム 8. 新型騒音計NL-22/32
      <会議報告>International Workshop
 
WAVE2002

土 肥 哲 也、山 本 貢 平

 国際会議といえば数百件の発表件数で参加者も千人程度、というのが過去1回だけ国際会議(Inter-noise)に参加したことがある私の認識であったが、今回山本所長と土肥が参加したWAVE2002は発表件数36件、総参加者数60人と小規模でいささか雰囲気が異なっていた。   

 WAVE2002は高速鉄道や自動車から発生する波動の伝搬に関する国際ワークショップ(3回目)で、平成14年9月18日〜20日の3日間、岡山大学で行われた。講演発表は全て1つの会場で行われ、初日午前の受付、オープニング・セッションや最終日午後のクローズト・セッションなどを除くと実質2日間の講演発表がアットホームな雰囲気の中で行われた。会議が日本で開催された為に会場には日本人が多く見られたが、主催者の中にドイツのRuhr大学の方がいたこともあってヨーロッパ(特にドイツやベルギー)の参加者も多く、また今後高速鉄道が利用されると思われる台湾や韓国からの参加者が見受けられたことが印象的であった。

 講演内容はほとんどが振動に関するものであったが、私の発表内容は数少ない音についての報告で、高速鉄道の列車周りに発生する圧力場についての数値解析結果を発表した。発表自体については発表内容を概ね暗記していたことや、会場の雰囲気が良かったこともあり、さほど緊張せずに進めることができたが、やはり質疑応答では質問の意味がわからず何回か聞き返してしまった。

 発表後ロビーで落胆していた私に、主催者の1人であるChouw教授が良い発表だったと励ましのお言葉を下さった。それで少し自信を取り戻し、発表を終えた解放感を味わったのもつかの間、帰京中の新幹線で山本所長から今回エントリーした論文には査読があり、論文集を作成する際にリジェクトもあり得ることを知らされ、再び緊張することになった。結局、1ヶ月後に条件付きの採録通知が届き、現在は今回のような小さな国際会議も貴重な経験ができて悪くなかったと思いつつ論文の修正作業を進めている。 (騒音振動第三研究室 土肥哲也)

 WAVE2002はCivil Engineering(土木工学)の研究者たちが環境問題を考え始めた会議として注目すべきものであった。共通のテーマとして取りあげているのはMoving Loadから発生する波動とその伝搬である。Moving Loadとは媒質に負荷をかけながら移動する物体と考えればよく、具体的には鉄道車両や自動車である。主要なトピックは振動発生源である列車と軌道のモデリング、媒質である地質のモデリング、地盤振動から建物等の構造物への振動伝搬のモデリング、そして、振動制御のための技術であった。今回の会議にはなかったが、振動感覚などクライテリアに関する研究も含まれれば、環境デザインを考える会議としては総合的なものとなったと思われる。しかし、このような研究グループが内外に存在することは我々も知っておくべきと思われた。

 講演内容に少し触れると、実験よりもむしろ数値波動シミュレーションを使った研究例が多く、境界要素法(BEM)、有限要素法(FEM)、またその結合や拡張による手法が駆使されていた。また、地盤振動問題は波動の分散(非線形)を含むのでかなり複雑であった。しかし、振動は数値よりも視覚で検討すると分かりやすい。数人の発表者は時間領域での解を求めて、波動の様子を動画(アニメーション)で見せてくれたので、感覚的には分かりやすかった。但しその妥当性は分らない。

 今回、私はMoving Loadから発生する音波に関してのオーガナイザを頼まれた。新幹線トンネル内で発生する衝撃波(大阪大 杉本教授)、新幹線騒音の予測モデル(JR総研 長倉氏)、前述の車両周りの圧力場(土肥)とASJ Model(山本)の発表を行った。彼等の知らない分野でもあり興味をもたれたことを付記しておく。 (所長/常務理事 山本貢平)

アットホームな雰囲気の発表会場

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