2003/1
No.79
1. 謹んで新年のお慶びを申し上げます 2. 表面インテンシティ計測を応用した押し当て式機器異常音検出センサ 3. 青銅噴水震盆 4. Low Frequency 2002 in York 5. FORUM ACOUSTICAUM SEVILLA 2002

6. WAVE 2002

7. 第11回国際エレクトレットシンポジウム 8. 新型騒音計NL-22/32
      <会議報告>International Workshop
 
Low Frequency 2002 in York

理 事 騒音振動第三研究室室長 加 来 治 郎

ヨーク大聖堂(York Minster)

 Low Frequency 2002(低周波音・振動およびその制御に関する国際会議)が、2002年9月11〜13日の3日間、イギリスのYorkで開催された。この会議は、環境問題として認知されるようになった低周波音を対象に1973年にパリでスタートしたもので、10回目となる今回の会議に参加する機会を得たのでその概要を報告する。

 この会議では研究の対象が低周波音と振動に限られているため、当初より参加者は100人未満の小規模な国際会議といえる。今回は内容的に重複する会議が続いたこともあり、参加者数は50名余りといささかさびしい集まりであったが、それでも32編(内、日本からは9編)と前回を上回る論文が寄せられた。

 3日間にわたる研究発表は関連する分野ごとにまとめられ、初日は低周波音の知覚、閾値、環境問題など、二日目は振動に関する伝搬や人体影響など、三日目は主に低周波音に関する計測、分析、対策方法などに関する発表が行われた。会期中はほとんどの参加者が一つのホテルに寝泊りし、しかも会場がホテル内の会議室1室だけということもあってどの発表もほぼ全員参加の状況であった。なお、二日目の午後には、有名なハワード城のバス見学という行事がしっかり組み込まれていたことを付け加えておく。会議の全体的な雰囲気は以下のとおりである。

・1件の持ち時間が25分ということもあってたっぷりと時間をかけた発表と質疑応答が行われた。ただし、対策方法について自社の製品を中心に一人で40分以上も占有したツワモノには誰もがうんざりしていた。

・日本からの発表は低周波音、振動のいずれについても知覚、閾値に関連した基礎的な研究が多く、社会調査やアンケート調査に基づくヨーロッパの実際的な研究とは対照的な印象を受けた。

・これも今回の会議に限られることかもしれないが、欧米の研究者が環境問題としてとり上げた低周波音の多くは、クーリングファンの音、高域成分の減衰した屋内騒音、防音壁背後の鉄道騒音などの低域成分の卓越した騒音であった。これについては最終日の総括会議で1960年代に発表されたWillson Reportに始まるdBAでの騒音評価を問題とする指摘がなされた。

・いわゆる超低周波音に関する事例はごくわずかで、発表を聞いた限りではG特性に関する報告はなかった。

・自分の発表は、従来のスピーカを油圧サーボに替えた低周波音の実験装置に関するものであったが、この町のどの家にも使用されているどっしりと重たい鉄製のサッシに発表の拙さが相まって、建具のがたつきという現象がどこまで理解されたのか心配である。

・長年にわたってこの国際会議を引っ張ってきたBill Tempest、Geoff Leventhallのお二人がかなりの高齢で、この先どのような方向にこの会議が進んでいくのかこちらも心配になった。なお、次回の開催は2〜3年後に日本でという声もあがっていた。

 最後に会議の開催されたヨークの町を簡単に紹介する。Yorkはイングランド北部の古都で、ロンドンから高速鉄道で2時間余り、ヨーク大聖堂で有名な都市というよりも米国のNew Yorkの名前の由来となった町という方がとおりがよいかもしれない。駅の周辺には近代的なビルも見られるが、駅から10分も歩けばそこは石畳の舗道にレンガ造りの建物ばかりで、通りを走る自動車を除けばこの風景はおそらく数百年前から何も変わっていないように思われる。

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