2000/4
No.68
1. 圧電研究室の新たな出発 2. I-INCE総会とINTER-NOISE 99に参加して 3. ISO/TC43/SC2 フロリダ会議報告

4. フロリダ旅日記

5. AuralizationセミナーとInter-Noise 99に参加して

6. 第7回ピエゾサロンの紹介 7. PODS(ポータブルオイル診断システム)(リオン型式KR-60)
       <会議報告> INTER-NOISE 99会議報告
 AuralizationセミナーとInter-Noise 99に参加して

騒音振動第三研究室 大 島 俊 也

 Atlanta空港から乗り継いでフロリダの南東にあるFort Lauderdaleへ向かうdomesticの機内に座り、周りを見回すと日本人らしき人物は自分以外誰もいなくなっていた。飛行機に乗り込む通路にお一人様一つずつご自由にと無造作に置いてあった紙袋の中身はハンバーガーとミネラルウォータだった。機内で配る手間を省くところがいかにもアメリカ的だなと思った。昨年の12月6日(月) から3日間開催されたInter-Noise99とそれに先立って行われたINCEセミナーに参加するため、山田常務理事、吉村室長補佐、落合主任より一足先に一人Fort Lauderdale入りしたのが12月2日(木)夜だった。

 Fort Lauderdaleは縦横に流れる運河を中心とした町で"アメリカのベニス"とも呼ばれるらしい。お金持ちの冬の別荘地で、豪華な家々の前にはヨットや大型クルーザーが係留されている。Inter-Noise99の会場となったMarina Marriottホテルは大西洋からの入り口に程近い運河に面したリゾートホテルで、ホテル前のハーバーには電話で予約すれば30分ほどでウォータータクシーが乗り付けてくれ、運河に面するダウンタウンなど $7.5で何処へでも連れていってくれる。

 到着の翌日、Auralization(可聴化技術)に関する1日コースのセミナーを受講した。会場はMarina Marriottホテル内にあるセクションIIと呼ばれる30人も入ればいっぱいというこぢんまりとした部屋だった。実際にセミナーを受けた人数は19名で、内訳はアメリカ15名、韓国2名、ベルギー1名、日本1名だった。中国系の人が1名、インド系に見える人が1名いたが名簿を見るとアメリカの人だった。セミナーが始まる前にデジタルビデオのセットをしていると、白人の紳士が近づいてきて盛んにビデオのことを聞いた。セミナーが始まるとその人が講師のMendel Kleiner教授(Chalmers University of Technology、応用音響部門、スウェーデン)であることを知った。各机にゼーンハイザーのオープンエアー型のヘッドホンが置いてあり、デモンストレーションの音を随所で聞かせてくれた。また、講義に用いたOHPがすべてテキストとしてバインダーになっており、デモンストレーションの音もCDとして配付された。セミナーの内容はAuralization技術に関する全般的な講義で、歴史的な背景に始まり、ヘッドフォンなどの再生機器の特性を考慮したバイノーラル再生技術、室内のインパルス応答の計測方法、1次反射以降の残響音の取り扱いなど1日でこなすには少し盛り沢山の内容だったが、一つの話題を説明した後、その内容に関連した実際の合成音を聞かせてくれたのでテンポが良くわかりやすかった。小林理研での講習会でも見習う点があるなと感じた。私は道路などの模型実験のデータを元に移動音源に対する合成音を作成して防音壁などの騒音対策効果を耳で確認できるシステムの構築を考えているが、教授は講義の中で模型実験についてはお金が掛かるので主に日本で行われていると、ちょっと皮肉っぽいジョークで皆を笑わせていた。講義の大半は反射面表面での散乱の影響やエッジでの回折などインパルス応答の予測計算での取り扱いの説明で占められていた。

 Inter-Noise99の二日目に自分の発表するのセッションがあった。チェアマンはDr.Bruelだった。セッション名はMeasurement Techniques Iで、測定技術に関連した5件の発表があった(内容的には統一性がなかったが)。私の他には自動車の音源同定を目的とした音響ホログラムについて発表した中国人、日本の自動車メーカーと関係があり日本語を勉強中だという歯車の振動に関する発表をしたインド系アメリカ人、伝達関数の測定精度に及ぼす音源信号の影響を論じたオーストリア人、住宅内の低周波音の測定例を紹介したオランダ人と人種のるつぼの様なセッションであった。中国の人の発表時間が15分以上に長引くと盛んにチェアマンに注意された。発表時間についての情報が事前になかったと思ったが予想に反して時間に厳しいのだと知った。私の発表は環境騒音の短時間LAeqと音の到来方向の測定データから騒音イベントを抽出するという内容であったが、偶然にも時間ぴったりに終わってチェアマンから開口一番誉められた。セッションが終わった直後にイタリアの環境庁に務めるDr. G. Licitraという人にノイズフロアーの同定方法について自分が発表する内容が役に立つはずだと力説されたので翌日の発表を聞きに行った。道路交通騒音のモンテカルロ法を基本にした予測の話で残念ながら今一つ関係が薄かった。

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