2000/4
No.68
1. 圧電研究室の新たな出発 2. I-INCE総会とINTER-NOISE 99に参加して 3. ISO/TC43/SC2 フロリダ会議報告

4. フロリダ旅日記

5. AuralizationセミナーとInter-Noise 99に参加して

6. 第7回ピエゾサロンの紹介 7. PODS(ポータブルオイル診断システム)(リオン型式KR-60)
 
 圧電研究室の新たな出発

所 長 山 本 貢 平

 この4月より従来の圧電材料研究室は、圧電応用研究室と改名して再出発することになりました。その経緯と新たな研究室の狙いとするところを紹介いたします。

 昨年12月末に圧電材料研究室の落合勉研究員が病気のため他界致しました。落合さんは丸竹正一先生、いやもっと遡れば、河合平司先生以来輝かしい歴史と実績を持つ圧電研究室の最後の研究者でした。このため小林理研の圧電研究はこれで消えるという風潮がしばらく流れました。そのような中、小林理研のOBや関係の方々から圧電研究の火を消すべきではないとの強いご意見をいただくにおよびました。特に圧電研究室の再建に情熱をもって取り組まれたのは深田栄一先生(当所理事)です。深田先生は「圧電研究室の再建のキーは、良い研究テーマを挙げることも重要であるが、それにも増して若い優秀な人材の獲得と養成に尽きる」と考えておられました。それは今すぐということではなく、3年とか5年とか中長期的展望の中でのことです。

 その後、山下理事長、山田常務理事と今後の対応について協議し、「圧電研究室を新たに出発させる」との結論に至りました。早速具体的作業に入り、その第一は圧電研究室を再建するための基本コンセプトを確立することでした。ここで98年より当所で開催しているピエゾサロンの成果がヒントとなり、3つの柱を考えました。

 第一は「音響・振動分野と圧電分野の相互協力により、新たな応用研究の展開を図る」ということです。奇しくも理化学研究所の研究者で現在はリオン(株)の顧問もされている伊達宗宏先生が、負性容量回路を圧電材料に結合すると防音・防振に応用できる特殊な性質を示すことを発見され、本年1月のJournal of Applied Physicsに発表されました。そして、それを具体的な応用技術として実現するための研究がリオンと小林理研の共同で始まったところです。すなわち騒音・振動分野と圧電分野の共同研究であり、圧電素子を生活環境保全に役立てるための応用研究を図ることです。

 第二は「小林理研創設時から培われた圧電研究を継続し、応用物理学への貢献を図る」ということです。落合さんが果たしてきた応用物理学会や関連学会へのコントリビューションを、今後も小林理研は続けて行くとの決意です。小林理研OBの横須賀 勝教授(いわき明星大学)に応援をお願いしています。

 第三は「新たな圧電素子を開拓しその応用研究を通じて、いっそうの社会的貢献を図る」です。応用研究とは医療用超音波方面だけでなく、環境・衛生の評価・計測、さらに交通・日常生活の安全性確保のための診断や検査を指します。このような分野を得意とする圧電素子を開発して、社会貢献に努めたいと考えました。

 以上のような基本コンセプトに立脚した応用研究を推進するために、深田先生を中心として研究室の体制を整える所存です。この事業は一朝一夕になし得るものとは考えていませんが、長い歴史を持った公益法人としての大きなつとめと考える次第です。

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