2000/4
No.68
1. 圧電研究室の新たな出発 2. I-INCE総会とINTER-NOISE 99に参加して 3. ISO/TC43/SC2 フロリダ会議報告

4. フロリダ旅日記

5. AuralizationセミナーとInter-Noise 99に参加して

6. 第7回ピエゾサロンの紹介 7. PODS(ポータブルオイル診断システム)(リオン型式KR-60)
       <会議報告> INTER-NOISE 99会議報告
 I-INCE総会とINTER-NOISE 99に参加して

常務理事 山 田 一 郎

 昨年暮れ米国フロリダ州のFort Lauderdaleを訪れ、INTER-NOISE 99とI-INCE(国際騒音制御工学会)総会に出席した。ここはフロリダ半島の南東、大西洋に面した豪華なリゾートで野生ペリカンの生息地としても有名なところである。

 I-INCE総会は12月5日に開かれた。総会権限を強化して加盟団体の意見を重視するようにしてから初めての総会で19ケ国の代表と理事が出席した。Lang会長から2000年1月より執行部が交代する旨の報告があった。(新会長はスェーデンT. Kihlman)子安 勝先生がアジア・オセアニア地域担当の副会長になられた。その他の議題として、新規加盟の審議、定款の変更、INTER-NOISEの選定委員会(CSC)委員の選定、技術委員会の設置等の審議があった。新規加盟についてはギリシャの音響学会は認められたが、INCE-EuropeはEAAとの関係等をさらに検討することになった。新たに設置された技術委員会は(1)屋外レクリエーション活動の騒音、(2)騒音ラベリング、(3)騒音政策と規制、(4)教育施設の騒音制御の4つである。 もう一つ、地球的政策課題として騒音を考える技術委員会の提案もあったが、成立するには至らなかった。翌日、CSCの初会合が持たれ、今後のINTER-NOISE開催予定について次の通り確認された。今年はフランスのニース、2001年はオランダのデンハーグ、2002年は米国のミシガンである。2003年はアジア・太平洋地域で開く予定であり、韓国、シンガポール、オーストラリアが立候補している。

 INTER-NOISE 99は、翌12月6日から三日間、同じ会場で開かれた。開会式での会長挨拶によれば40ケ国、600人以上の参加と400件以上の発表があった。会議の規模が大きくなり、益々ネットワーク化が重要になっていると会長が語り、参加者には予稿集の印刷物とCDROMが提供されていよいよ本格的な電子化の時代が到来したことを実感する。

 特別講演は2件あった。初日はINTER-NOISE 98の組織委員長であったH. Marshallが「21世紀における設計と騒音制御−建築音響の展望」の題で、ニュージーランドにおける建築音響における騒音制御の歴史を回顧し、今後の展望を述べた。音響設計技術が進歩して道路脇にスタジオを建てられるほどになった。しかし、音環境に対する要求は年々厳しくなって、今や0dBに近づき限界に近いが、静穏な環境は守るに価するものと美しい風景写真を見つつ話を締めくくった。懇親会の折りカナダのEmbletonから聞いた話によると、Marshallは大きな農地を持っており、バラや野菜を作り羊を飼っている。写真はその風景を撮ったものということだった。

 2日目は、米国Wyle研究所のB. Sharpが「騒音制御技術の展望と実現性」という題目で話し、ホテルの空調装置のうるささをユーモラスに語ることから始め、騒音制御の課題として挙げられるものは40年前も今も同じだと述べつつ最新の騒音制御技術に言及し、発生源への現実的で効果ある騒音対策技術の開発とその適用を促す規制等の整備の重要性を述べた。

 個別セッションの詳しい紹介は同行した吉村・落合・大島の報告に譲り、ここでは「地球的課題としての騒音政策」という特別セッションに言及して筆を置くことにする。これはEUが成立し、国境を越えて騒音を規制する必要が生じたことに端を発する議論が底流となったものだが、地球温暖化等の地球環境問題がクローズアップされていることとも無関係でないと思われる。関連する発表が2日間で20件あった。Langは騒音にも地域的な課題/localとして取り扱うべきものから地球的規模で取り扱うべき課題/globalまで5種類に区分できること、米国では環境基本法(NEPA)により地域毎に対処し、連邦がその推進に協力することとなっているが、前半のみ強調され、全国的取組みが疎かになっていると指摘したのが印象に残る。自然の静謐はlocal、ジェットスキー等のレクレーション活動に伴う騒音は準local、工場騒音はlocalとnationalが半々、地上交通と国内航空の騒音はnational、国際航空の騒音はglobalと分けた。また、RossはEUのglobalな対策の作業方針を紹介した。まず、評価方法を統一し、Noise Mapを作る、それをデータベース化し、最後にEU全域で環境目標を統一すると説明した。

 なお、インターノイズの登録受付等でボランタリーに活動して来られたG. Maling夫人が今会議を最後に引退されることになり、長年の貢献に感謝する表彰を受けられた。

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