2000/1
No.67
1. 耳 順 2. 新世紀に向けて 3. 西暦2000年の年頭にあたって

4. 排水性舗装面の音響特性について

5. 桿秤・天秤・分銅

6. 第6回ピエゾサロンの紹介 7. 超音波眼軸長測定装置 UX-30
       <技術報告>
 超音波眼軸長測定装置 UX-30

リオン株式会社 研究開発部 堀 江 誠 一

1.はじめに
 白内障の手術に眼内レンズ(以降IOL)が使われている。IOLの度数を算出するのには、眼軸長(角膜頂点から眼底までの距離)の値が必要である。超音波眼軸長測定装置UX-30は、眼軸長計測とIOL度数計算の機能を一台にまとめた装置である。また、タッチパネルと見やすいGUIによりユーザビリティーの向上を図る事で、診察時間を短縮し、患者へかかる負担の軽減を目指したものである。

図1 UX-30全体図

2.構成
 本装置は、プローブ部、超音波送受信・信号処理部、PC部、プリンタ部、電源部からなっている。プローブ以外は一体化されており、コンパクトな作りになっている。PCは、タッチパネル付きのパネルPCを採用している。

 全体を図1、プローブを図2、画面を図3、ブロックダイアグラムを図4に示す。

図2 プローブ

図3 画 面

図4 ブロックダイアグラム

3.プローブ
 眼軸長測定用のプローブは、直接眼球に当てて使用する。先端のトランスデューサには、10MHzのセラミックが使用されている。トランスデューサの中央に穴が空いており、そこから赤色LEDの光が出ている。患者にその光を見せることで眼球の動きを低減させ、測定精度の向上を図っている。

4.眼軸長計測
 送信パルスを打ち、眼底からのエコーが返ってくるまでの時間を測定して、眼球の平均音速から距離に換算し、眼軸長の値としている。同時に、角膜から水晶体までの距離、水晶体の厚さも得る事ができる。

 本装置は、操作性の向上及び測定者によるバラツキを抑えるために自動測定機能を持っている。返ってくるエコーの内、水晶体と眼底の位置があらかじめ設定されている範囲の中に収まっているデータ10個を、自動的に取り込む。取り込んだ10個のデータの平均値に最も近いデータを眼軸長として採用している。取り込んだ10個のデータに対して、平均値からの誤差とともに表示されるので、あまりにかけ離れたデータに関しては、再測定する事ができる。

 また、ブザー音によるガイド機能で眼軸を探り当てやすくなっており、診断時間の短縮を図っている。

5.IOL選出
 必要なパラメータが入力してあれば、本装置は眼軸長獲得と同時にIOL度数を算出する。さらにあらかじめデータベースに登録してあるIOLから、最適レンズのリストを表示する。

 IOLの計算式は数々あるが、本装置はSRK/T、SRKU、HOFFER-Q、HOLLADAYの4式を採用している。

 興味深いのは、入力しなければならないパラメータの一つに、Desired Refractionというものがある。これは、眼軸長や角膜曲率等から算出される正規の度数から、どの位ずらすかと言う値である。いままで目が悪かった人が白内障になり、IOL挿入手術後いきなり良く見えてしまうと恐怖感を覚えてしまうらしく、それゆえわざと見えにくく度数を設定するのである。眼鏡の度数をパラメータとして入力する式もある。

6.逆計算
 本装置の持っている機能の一つに、逆計算機能がある。上述の計算式を応用して、IOLなどの値から逆計算をするものである。

7.おわりに
 本装置は、競合製品との差別化のねらいとして操作性に重点を置いて設計を行なった。

 競合製品が多々ある中、市場にどのように受け入れられるか。ユーザーからの御意見、御指導を承りつつ、今後とも製品品質向上に努めていきたいと思う。

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