2000/1
No.67
1. 耳 順 2. 新世紀に向けて 3. 西暦2000年の年頭にあたって

4. 排水性舗装面の音響特性について

5. 桿秤・天秤・分銅

6. 第6回ピエゾサロンの紹介 7. 超音波眼軸長測定装置 UX-30
 
 第6回ピエゾサロンの紹介

理 事 深 田 栄 一

河西千広:超音波診断装置の最近の進歩
 平成11年8月25日に小林理学研究所で第6回ピエゾサロンを開催した。始めに、アロカ研究所の河西千広博士“超音波診断装置の最近の進歩”について講演された。まずビデオによって超音波の送受信の原理の説明があり、現在診断の対象になっている種々の臓器の実際の映像を示された。脳、眼、甲状腺、心臓、肝臓、膵臓、前立腺、膀胱、産婦人科器官など、体表面からだけでなく食道や直腸など体内に挿入するプローブも用いてがんや腫瘍などの観測が精度良く行われる。とくに三次元映像では、胎児の性別が目で見て分かるのは驚異であった。

 カラードップラー装置では血流をリアルタイムで見ることが出来る。プローブに近づく流れが赤、遠ざかる流れが青になっているので、心臓の弁の開閉、血液の漏れや逆流の様子などを鮮明に見ることが出来る。原理を易しく解説した別刷、河西千広、松中敏行著、超音波診断装置、日本ME学会BME、Vol.3, No.2, p.20-27,1989が配布された。

 明快な興味深い講演であったのでたくさんの質問や議論があった。将来の発展については、組織の非線型による高調波の反射を用いて尖鋭な画像を得る方法や造影剤と組み合わせる方法などが、海外で進んでいることが指摘された。血管内に挿入するカテーテルの先端にPZT圧電素子を付け、血管内部の構造を観測する方法も開発されている。

梅村晋一郎:超音波によるガン治療
 次の講演は日立製作所中央研究所の梅村晋一郎博士による“超音波によるガン治療”であった。いるかは頭部にある油脂のレンズによって強力超音波を収束させて獲物の魚をとる。超音波による加熱凝固療法は患部を蛋白の凝固点以上の高温に加熱して壊死させる。ビームの焦点領域を拡大することで治療時間を短縮することが出来る。この方法は前立腺肥大の治療などに臨床で用いられている。

 超音波と薬物の相乗効果を利用する療法は、超音波と微小気泡の相互作用を利用するものである。気泡が超音波に共振する寸法になると、気泡の呼吸振動の振幅が大きくなり気泡が圧壊する。そのとき気泡内部の気体は圧縮されて数千度に達し化学反応を起こす。例えば、ポルフィリンを超音波照射により音響化学的に活性化すると抗腫瘍効果が現れる。また基本波(1MHz)に第二高調波(2MHz)を重畳させると、音響化学キャビテーションが著しく加速されることが見出された。ガンを移植したラットに高周波重畳超音波を照射すると、ガン細胞が著しく減少することが観測された。超音波とともに患部に与える薬品についても種々の研究が進んでいる。文献として、梅村晋一郎著、超音波の治療への応用、IVR、Vol.14, p.329-333,1999 が配布された。多数の質問や討論があり、この分野の研究が将来大きく発展することが期待された。

講演されるアロカ研究所 河西 千広博士
 
講演される日立製作研究所 梅村晋一郎博士
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