2000/1
No.67
1. 耳 順 2. 新世紀に向けて 3. 西暦2000年の年頭にあたって

4. 排水性舗装面の音響特性について

5. 桿秤・天秤・分銅

6. 第6回ピエゾサロンの紹介 7. 超音波眼軸長測定装置 UX-30
  
 新世紀に向けて

常務理事 山 田 一 郎

新年あけましておめでとうございます
皆様にはめでたく新春をお迎えのこととお喜び申し上げます
おかげさまで小林理学研究所は本年八月に設立六十周年を迎えます
これもひとえに皆様のご厚情の賜物と
感謝いたしますとともに
二十世紀最後の年を迎え、所員一同、新たな気持で
一層の社会貢献を心がけてまいりますので
本年もお引き立てくださいますよう
よろしくお願い申し上げます

 ほんの百年前コンピュータはまさに計算する人という意味でした。天文学者や物理学者は解くべき式を考えるだけで実際の計算は下請けに出し、何十人もの女性達がコンピュータ代りに足したり引いたり黙々と仕事をしていたそうです。今から考えると想像できない光景です。二十世紀後半はまさにコンピュータの時代でした。その終幕の年は2000年問題で始まります。このご挨拶を書いている1999年末の時点ではつつがなく始まることを願うばかりですが、新世紀はどんな時代へと発展していくのでしょうか。

 さて、平成6年秋に山下充康が当所理事長に就任し、研究所の運営の方針として次の二つのビジョンと三つの理念を掲げました(小林理研ニュースNo.47参照)。

小林理学研究所は、
  
1. 風格と活力を感じさせる研究所を目指す
  1. 尊敬と信頼を得るに足る体質の研究所を目指す  
小林理学研究所にあっては、
  1.優れた内容の研究成果を社会に提供する
  1.良識を備えた研究者を育成し、 社会に対して人材的な貢献をする
  1.職員にとって魅力ある研究環境と労働条件を整備する

 爾来五年間経ちましたが、毎年100件近くの基礎研究と受託業務を実施し、音響材料の遮音吸音性能等の試験をして参りました。基礎研究の成果は国内外で開催された関係学会の研究発表会や学会誌等への投稿論文、小林理学研究所レポート、小林理研ニュース等を通じて公表しています。研究を通じて4名の職員が学位を取得しました。受託業務は官公庁からのものも多くわが国における音環境問題の状況改善に寄与してきたことと確信しております。さらに外部から多数の研究生や研修生、実習生を受け入れ、研修講座も開催して音響学の基礎知識や応用技術の普及、教育にも努めて参りました。平成9年度末には壁構造の遮音性能試験(評定用試験を除く)について ISO 9002の認証を受けました。これにより業務品質の一層の向上を目指しています。評定用試験の試験機関としても再指定されました。圧電材料の研究についても今後のあり方を検討して参りましたが、平成10年春からはピエゾサロンを継続的に開催し、圧電気とその関連分野で共通の興味をもつ研究者が集い、ピエゾ電気についての新しい知識を交換し、交流と親睦をはかる場を提供しております。

 研究環境と労働条件等についても、高度化する情報化社会に迅速に対応できるよう所内ネットワークの拡充を図って参りましたし、計測機器および測定設備の全般についても測定・実験・試験の一層の精度向上を目指して整備を続けております。その一環として平成8年度から9年度に掛けて斜入射吸音率測定設備を構築しました。また、昨年秋には前号のニュースでもご報告したように音の資料室や大会議室等を備えた東館を新築しました。皆様にもおおいにご活用いただきたいと願っております。

 新年を迎えるにあたってわが国を取り巻く環境を顧みますと騒音振動のみならず様々な問題が山積しています。地球温暖化や酸性雨、オゾン層破壊など容易に解決できない全地球的な課題も立ちはだかっています。私達小林理学研究所所員一同は一丸となって、先に挙げた二つのビジョンと三つの理念に基づいて、音響学を中心とする物理学と工学の基礎および応用について基礎研究と受託事業に専心し、その成果をもって社会に貢献すべく邁進して参りたいと決意を新たにしております。

 皆様にとって本年が良い年となり、またその後迎える新世紀がそして新千年紀が人類や地球生物全体にとって良い時代となりますことを願いつつ新年のご挨拶に代えさせていただきます。

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