1986/10
No.14
1. Presentations from JAPAN are hight grade and superior! 2. 障壁上端部付近の熱が回折減衰に与える影響 3. INTER NOISE '86と12th ICA 4. 航空機騒音(インターノイズ'86)

5. 屋外における騒音伝搬

6. 振動に対する生体反応(ICA)

7. ICAのTechnical Tour 8. MITにおける音響研究 9. 聴覚育成と聴能訓練器
       <会議報告>
 MITにおける音響研究

 INTER NOISE '86の会期中に実行委員長であるLyon教授のはからいで、研究室の一部を見学することが出来た。その時に、MITにおける音響学の教育カリキュラムや研究の概要を説明した資料を頂いたので、見学をした設備の一部と、案内にある研究の概要を紹介する。  
 MITは多くの学科を持つ工科大学であるから、音響の知識を必要とする学科は数多くある。大体のカリキュラムを見ると次の各学科が音響学の講義を持っている。
 機械工学、海洋工学、電子工学、コンピューター科学、航空宇宙学科、建築学科。
 講義の内容は大きく分けて三段階で、undergraduate, graduate,とresearchに必要な応用、専門の過程になっておりNoise Control, Architectural Acousticsなどは専門過程に入っているようである。
 案内にのっていた研究課題は音響振動研究室と機械力学研究室に関するもので、それぞれが大学院の学生の研究課題であるらしい。次にその概略を示す。
○ response and Distribution in Broad-band Vibration
 多くの共振のある系について広帯域の励振があった場合の実験と理論解析で、特にレスポンスの集中する場所と、実質的に一様な平均レスポンスの範囲の設定について検討をしている。
○ Backward Whirling of Aircraft Propellor Engine Systems
 航空機のプロペラの逆回転に関する研究のようで、回転翼の共振のパターンを引き出すようにシリンダーの点火をコントロールして適正なエンジンスピードを求める実験である
○ Flow-Induced Vibration
 垂直壁にそって一様に流体が流れる場合に、構造の運動によって渦が剥離する時の力の時―空間相関の測定についての研究。
○ The Influence of Sound upon Boundary Layer Transition
 薄層の空気の流れと音との関わり合いの研究で、低騒音低乱れの風洞を使って行っている。この装置は見学をしたが意外に小型のもので、目的と手法があまりよく判らなかった。
○ Acoustic Radiation from Bodies in Unsteady Flow
 パイプやダクトのような流体が流れている所への音響放射の実験で、流体の乱れの音響放射に対する影響を調べている。
○ Machine Dynamic Program
 機械の設計を色々な観点から、より軽く、より速く少ないエネルギーで、経済的になどの目的に対応する設計法を作り上げる研究で、コンピューターシステムの開発。
○ Design of Machines for Reduced Noise and Vibration
 この研究は、機械の最近の設計思想にかなうもので実際の機械に対応させた研究のようである。
○ Vibration Trans mission in Data Processing Equipment
 データプロセッシングの機械の冷却は非常に重要な課題になってきており、如何に混み合った所を効率良く、騒音を少なく冷却出来るかが問題で冷却装置の支持構造を研究している。
○ Statistical Propaties of Stractural Transfer Function
 伝達関数の基本的な研究で、伝達関数の有用性を確立するとともに機械の欠陥診断装置の設計に応用しようとしている実用研究。
○ Design of Robust Inverse Filters for Machine Signature Analysis
 設備診断の時に欠陥に伴うシグナルを見つけだすのに必要な装置と考え方の研究。
○ Daiagonostics of Cooling Fan Faults in Data Processing Equipment
三つ前に示してある研究と対になっており、多分一緒に研究をしているものと思う。
○ Nonlinear Analysis of Beams, Plate and Shells
全く基本的なことで、多分Graduate courseの研究課題であろう。
○ Computational Techniques for Fluid-Structure Wave Propagation Problems これも前の課題と同じように基本を覚えるための研究課題と考えられる。
以上のような内容であったが、実際に則した研究が行われているようで、また流体との結合における騒音問題を丁寧に扱っている印象が強かった。
 MITに於ける研究の研究費がどのようにして入ってくるのかは、我々にははっきり分かるものではないが、国防省の関係以外の委託研究の一覧を見せて頂いた。それによると、Research Topicsとして回転体の力学、機械力学、操縦装置の開発、騒音のデータ解析、機械力学の解析手法、エンジンの衝撃及び伝達関数の研究など興味のある課題がNASAやIBM、GEなど大きな組織からの委託研究とNational Science Foundationのような科学振興財団から邦価換算で年間約8000万円来ているようである。この他に国防省の研究費は莫大なものであろうし日本の大学とは大きな違いがあるのではなかろうか。 

(時田保夫)

風洞内無響実験室

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