1986/10
No.14
1. Presentations from JAPAN are hight grade and superior! 2. 障壁上端部付近の熱が回折減衰に与える影響 3. INTER NOISE '86と12th ICA 4. 航空機騒音(インターノイズ'86)

5. 屋外における騒音伝搬

6. 振動に対する生体反応(ICA)

7. ICAのTechnical Tour 8. MITにおける音響研究 9. 聴覚育成と聴能訓練器
       <会議報告>
 ICAのTechnical Tour

 ICA(国際音響学会議)は、昭和61年7月24日から7月31日までカナダのトロント市で行われたが、会期中にトロント大学航空宇宙研究所とトロント空港の見学が計画されこれに参加する機会があった。

トロント大学航空宇宙研究所
 この研究所はトロント市の北西約20kmの閑静な所にあり広大な地域を占めている。見学の参加者は10名、大学ではRibner教授(航空学)が説明にあたった。
(1)フライトシミュレーション:航空機のコックピット(操縦席)の実物模型が加振台に乗せられてあって、操縦者が振動を受けた場合の人間工学的な研究、実験は現在進行中;この装置は6次元の自由度をもち、ジェット機の操縦席はじめ各種の地上及び飛行中の乗り物のシミュレーションが可能である。
(2)空気浮上車両の研究:レール上を重量物を移動させるに当たって、レールに1mm程度の細孔をほぼ等間隔(15〜20mm)に設置し、20ppsの空気を噴出させることにより、約150kgの重量物を10分の1の力で移動させることができる。重量物とレールの間にはプラスチックシートで楕円形に包んだ緩衝物(軟らかいプラスチックの紙)が挿入されている。この基礎研究をもとに直径45mのテストトラックが建設され、空気浮上車両のテストが行なわれている。車両のデータはスリップリングを通じ計算機にインプットされ車両の運動が記録される。
(3)ショックチューブ:この装置は超高速飛行の際に生ずる解離イオン化したガス流の研究のために計画された。直径15cmの管の中に高圧のガスを発生させ、一方の端(圧力に応じ1〜3mmの金属板)を瞬間的に熱したタングステン線で破ることによって衝撃波を発生させる実験装置、現在は衝撃波と帯電した空気(雷雲)の相互干渉の実験中であった。最大流速マッハ10。
(4)人工衛星の姿勢制御:小型の衛星模型を用いて3次元の姿勢制御の実験
(5)亜音速における風洞実験:テストセクションは無響室の中にあって、写真のように長さの異なる吸音板が縦横に層状になった極めて簡単な構造になっている。
(6)ソニックブームシミュレーション:大型のタンクに高圧空気を貯蔵しこれを噴出させてソニックブームを発生させる。最近ソニックブームを受けた室のレスポンスの研究を行ったが現在は中止している。

トロント大学風洞実験室

トロント空港
 トロント空港においては、主として航空機騒音のモニターについて説明をうけた。現在滑走路は平行に2本と横風用1本で空港周辺に12のモニター点を設置している。データは電話線により中央で集中管理している。各地点におけるLAeqT, LceqT, L1, L5, L10, L50, L90等を測定することができる。航空機の識別は基準点との相関の時間差を用いる方法をとっている。データは付近住民への説明資料としている。さらにモニター点の1ヶ所を見学した。マイクロホンは約10mのポール上に金属の開孔板を円筒形にした"ウィンドスクリーン"の中に設置されている。ポールは半分の長さで折れ曲るようになっていてマイクロホンの点検等が可能である。騒音コンターはFAAのINM(Integrating Noise Model)によって作成している。夜間は12時より朝7時迄の飛行は制限しているが、天候等の事情による延着については許可が与えられる。

(五十嵐寿一)

トロント空港モニターマイクロホン

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