1986/10
No.14
1. Presentations from JAPAN are hight grade and superior! 2. 障壁上端部付近の熱が回折減衰に与える影響 3. INTER NOISE '86と12th ICA 4. 航空機騒音(インターノイズ'86)

5. 屋外における騒音伝搬

6. 振動に対する生体反応(ICA)

7. ICAのTechnical Tour 8. MITにおける音響研究 9. 聴覚育成と聴能訓練器
       
 Presentations from JAPAN are high grade and superior!

所 長 山 下 充 康

 ボストンで開催されたINTER-NOISE 86とこれに続くトロントでの12th ICAには日本からも多数の論文が寄せられました。小林理学研究所からも五十嵐理事長の航空機騒音に関するレポートを始め、3件の講演を準備して参加しました。これらの会議内容についての詳しい報告はこのニュースの中にも記事として記載しました。

 国際会議に出席して諸外国における研究の動向を生々しく知ることが出来ることは我々の研究推進に大変参考になるのは勿論のことですが、こちらからの研究成果の報告に対して寄せられる国内とは違った角度からの意見や感想は、それまで見過ごしていた部分に新たな観点からの研究ヒントを与えてくれるきっかけとなる場合があります。講演会場では残念ながら、時間的制限と語学力の貧しさ、気恥ずかしさなどのために思うようなディスカッションをすることは中々に勇気の要ることで、むしろ会場の外での小人数での質疑応答の方が、肩の凝りもなく、それなりの意見交換ができるように思います。懇親会のレセプションやバンケットなどの会場でも共通のテーマとして音響に関係する話題が比較的好まれるようです。勿論、同国人の間ではそんなに真面目な話題が交わされているとは思えませんが、欧米語で世間話しの出来るような語学力の持ち合わせのない私のような者には自分の研究分野で接する機会の多い用語や文節を使った会話の方がやりとりしやすく、自然に真面目な内容になってしまうのかもしれません。

 トロントのホテルで開かれたICA晩餐会に出席したおりのことです。晩餐会場の大広間でたまたま隣合ったのがRobert W. Young博士でした。サンディエゴの米軍海洋研究所におられた方で、多数の音響関係の研究成果を論文で拝見している高名な研究者です。これまでにも国際会議で何度もお目に掛かっていながら、大御所すぎて、直接お話をする機会など一度もない方でした。五十嵐先生とは親交が厚く、度々航空便での様々なディスカッションが交わされ、分厚い手紙を横から拝見しては厳密な議論の内容に敬服させられておりました。今回のICAでもお二人が話し合っておられる光景をしばしば目にし、「名前はヤングでも御老人」、「こわそうな爺さま」、「クマの縫いぐるみ」などとひやかし気分で近寄り難く遠目に拝見していたのですが、その御本人が隣におられたので、とんでもない席を選んだことに後悔しました。幸なことに、この時も五十嵐先生が近くにおられたので、御紹介いただけたのは良いのですが、緊張して食事どころではありません。ヤング先生は小声だけれどもゆっくりとした物の言い方で、とても真面目に話をされました。小柄な、少し前こごみの体形からクマの縫いぐるみを連想したのですが、話し方もディズニー漫画のクマのようです。私の研究課題に関係して、騒音伝搬に与える地表の影響、模型実験による騒音予測の方法、道路交通騒音低減対策手法などについていくつかの意見を述べられた後で、今回の会議で特に感じたことだがと前おきされ、 "Presentations from JAPAN are high grade and superior!"大変嬉しく承った次第です。

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