1986/10
No.14
1. Presentations from JAPAN are hight grade and superior! 2. 障壁上端部付近の熱が回折減衰に与える影響 3. INTER NOISE '86と12th ICA 4. 航空機騒音(インターノイズ'86)

5. 屋外における騒音伝搬

6. 振動に対する生体反応(ICA)

7. ICAのTechnical Tour 8. MITにおける音響研究 9. 聴覚育成と聴能訓練器
       <会議報告>
 振動に対する生体反応(ICA)

 "Bio-response to vibration"(振動に対する生体反応)に関する報告が7月31日(火)にSession F2で行なわれました。このSessionの議長はこの前日にPlenary Sessionで"Human response to vibration"について講演されたサザンプトン大学のM.J.Griffinが勤められました。
 この講演の内容は現在までに得られている人体に対する振動の影響について、不快感、アノイアンス、行動防害、および健康影響等についての評価方法、振動の周波数重み付け、振動の軸等に関する総合的なもので"Long term revision of ISO 2631"に取上げられている内容も 多く含んでいたように思います。
 さて、Session F2に戻りますと、発表内容は手持ち工具に関するものが6件(カナダ3件、フィンランド1件、スウェーデン1件、イギリス1件)、および全身振動に関するもの1件(カナダ)となっておりました。
 手持ち工具の振動が手腕系に与える影響についての報告は白ろう病(VWF:vibration induced white finger)と関連付けられた内容のものが主でした。
 フィンランドのPikköは"Clinical Aspect of Vibration Syndrom"の報告の中で手持ち工具を用いる作業者への振動影響について現在までに得られている知識、およびフィンランドでの森林労働者に対して行なわれた調査結果をもとに、振動障害の重大性について述べていました。カナダのNRC(National Research Council of Canada)を中心とした研究者グループの3件の報告はVWFを定量的に把握し、臨床学的方面での活用を図るために、振動に対する指先の触覚感覚閾値、および従来の不備な点を改良して新たに開発された触覚測定器(esthesiometer)を用いたステップ高さ判断の閾値と2点間のギャップの判断閾値を正確に測定しようというものでした。測定されたこれらの感覚閾値は正常者のグループ(振動工具を用いない者)とVWFのTayler-Pel-mear Stage2〜3(白ろう病の程度の指標を表わすものでStage1〜Stage3までに分類されている。)を患っている者のグループとの間で比較され、両グループの触覚感覚閾値には明白に差が生じていることを指摘していました。以上の報告では臨床学的色彩の濃さを感じました。
 実際の作業現場で作業者が振動工具による振動暴露をどの程度被っているかを調査したものとしては、イギリスのPriceがfettling作業者、および石工職人について調査したものがありました。この調査では、振動工具の振動を測定すると共に作業状態をビデオカメラによって記録して、この記録をもとに1日の振動暴露時間を求めるという方法がとられていました。この調査結果ではISO 5349に定めてある1日の暴露時間の基本である4時間よりももっと長い暴露時間であったことが報告されており、騒音との整合性等を考えて、イギリスの規格で規定されているように1日の暴露時間の基本を8時間にすべきだと主張していました。また、ISO規格、イギリス規格共に測定した振動量と合わせでそれらのX,Y,Z軸を報告するように勧告されていますが、作業者の手は作業中常にその方向を変えるために軸の特定は困難であるとしていました。
 全身振動に与える振動の影響に関するものとしましてはカナダのBoileanがケベック森林区でのskidderに乗車してlogging(原木切出し)作業に従事する者への振動影響を調べたものがありました。この調査では、テレメトリーシステムを用いた無線によるskidderのフレーム、および座席の振動測定が行なわれていました。振動測定結果はISO 2631の2通りの分析手法([1]:1/3オクターブバンド分析、[2]:等価オーバーオール周波数重み付け加速度レベルを求める分析)で整理していましたが、両者の方法による評価量には有意の差があり、[2]の方法は[1]の方法に比べて過大評価になるとしていました。また、これらの評価方法ではクレストファクタ(ピーク値/実効値)が6以上になると疲労能率減退限界を過小評価するとも指摘していました。

(横田明則)

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