1999/1
No.63
1. 謹んで新年のお慶びを申し上げます 2. 自然の静けさ(Natural Quiet) 3. インターノイズ98に参加して 4. 航空力学教育用「卓上煙風洞」 5. 第2回ピエゾサロンの紹介 6. 振動分析計VA-11/データレコーダVA-11C
       <技術報告>
 振動分析計 VA-11/データコレクタ VA-11C

リオン株式会社 音測技術部1G 芝 田 和 雄

1.はじめに
 機械振動や設備診断分野において、高度な解析機能を持った測定器は、大型で操作も複雑になりがちです。今回、携帯型にもかかわらず据え置き型に匹敵する機能、性能を持ち、しかも操作性が良い振動分析計VA-11、及びデータコレクタVA-11Cを開発しましたので紹介いたします。

2.使いやすさの追求
 今までの測定器は1機種にいろいろな機能を盛り込んでいたため、使わない機能も多く、また機能が多い事により操作も複雑になっていました。この点を解消するため、使用目的を明確にし無駄な機能を省くことを目標に開発しました。また、一般的に測定器は、形状や持ちやすさなど性能以外の部分についての検討があまりなされていません。今回はこの点についても深い検討を加えました。この結果として2種類の測定器、VA-11とVA-11Cが開発されました。

 振動分析計VA-11は汎用の機械振動用測定器で、振動計とFFTアナライザーを含んでいます。基本的な機能のみを選択して組み込んであり、振動レベル計測、時間波形解析、周波数分析を行い振動現象の詳細な解析を行う事ができます。

 VA-11Cは設備診断用の測定器で、VA-11にデータコレクタ機能を加えてあります。この機能は、各診断点を路順表に従って巡回測定し、データ収集を行うことができる機能です。機械設備を定期的に測定し、傾向管理手法により設備保全を行う場合に使用します。

3.VA-11の概要
(1)使いやすい構造
 図1はVA-11の写真です。ハンドストラップをつけたので落下事故を防ぐ事ができます。また、手で握る左側は、握りやすいように丸みを帯びてやや太めになっています。重心も左側にあります。両手を空けて作業したい場合は肩掛けバンドが用意されています。重量は電池込みで770gと非常に軽量のため、どこにでも持って行く事ができます。電源は、AC、DCどちらでも使用できます。アルカリ単2乾電池4本で22時間の測定が可能です。測定結果は192×128ドットの液晶画面に表示されます。ELバックライトがついているため画面全体が明るく、夜や暗い所で威力を発揮します。

図1 VA-11の外観

 操作は10個のスイッチで行います。よく使う測定条件はメニューを開くことなく、測定画面を見ながら変更することができます。また、ピックアップに付いている測定スタートスイッチと、持った時の左手親指付近にあるストアボタンを使って、簡単にデータ収集を行う事ができます。

(2)高度な基本性能
 DSPとマイクロコンピュータを組み合わせた最新技術により、振動計測の大部分をディジタル演算処理しています。ピックアップで検出された加速度信号は、アッテネータ通過後、直ちに16ビットA/D変換され、DSPに渡されます。DSPは、ハイパスフィルターやローパスフィルター、速度や変位に変換するための積分や2重積分、振動計機能におけるピーク値や実効値の算出、FFT機能におけるアンチエリアジングフィルターなどを、全て同時に演算します。マイクロコンピュータは、これらのデータ制御やFFT演算等を行い、液晶画面に表示します。

 振動計機能においては、この同時演算のおかげで、加速度実効値、ピーク値、クレストファクター、速度、変位の5種類の値を同時に表示することができます。このため、振動量に合わせて設定条件を変更する必要がありません。図2が振動計表示画面例です。 FFTアナライザー機能においては、携帯型であるにもかかわらず、80dBのダイナミックレンジ、800ライン分解能等、据え置き型に匹敵する性能を持っています。演算時間も非常に速く、100ライン演算では1秒間に20回のFFT演算を行うことができます。このため、2kHz以下の信号に対してリアルタイム分析を行うことが可能です。また、128000点の時間波形を連続記録し、任意の場所を再分析することができます。

 
図2 振動計表示画面
 
図3 FFT分析画面

4.VA-11Cの概要
 VA-11Cはデータを収集する本体とデータ管理を行う路順管理ソフトとで構成されます。本体と路順管理ソフトは、コンパクトフラッシュカードを介してデータの受け渡しを行います。図4はシステム構成図です。コンパクトフラッシュカードはディジタルカメラなどに広く使われているカードです。読み込むための特別なソフトや、シリアル通信のような長い転送時間も必要ありません。

図4 VA-11Cシステム構成

 路順管理ソフトは、Windows95またはWindows NT4.0上で動作します。管理設備のデータベース作成(図5)、各測定地点における測定条件の設定、測定予定表の作成、測定順番を書き込んだ路順表の作成等を行い、路順表をコンパクトフラッシュカードに書き込みます。また、VA-11C本体で収集された測定結果をコンパクトフラッシュカードから読み込み、トレンドグラフの表示や保全情報の記録を行います。

図5 データベース作成

 VA-11C本体は、路順表をコンパクトフラッシュカードから読みながら測定を行います。測定地点を指定すると自動的に指定された設定条件になり、スタートスイッチで測定開始、ストアスイッチで測定結果がコンパクトフラッシュカードに記録されます。

5.おわりに
 ディジタル技術の進歩により、測定器の高性能化は自然に進んで行きますが、使いやすさに関しては設計側で努力しないと進んで行きません。今後も性能と共に使いやすさを目指した設計を進めて行きたいと考えています。

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