1987/7
No.17
1. 小林理学研究所における音響、振動関係の研究室紹介 2. 騒音振動第1研究室 3. 騒音振動第2研究室

4. 騒音振動第3研究室

5. 建築音響研究室

6. 作業環境騒音に関するISOの最近の動向 7. クリーンエアの周辺
      小林理学研究所における音響、振動関係の研究室紹介
 騒音振動第3研究室

加 来 治 郎

 勤続年数が12〜15年の加来、木村、田矢の3人に、新人の佐伯君と柄沢嬢を加えた5 名が当研究室のメンバーです。新人とは言え、佐伯君は人より3年も余計に大学で勉強していますし、柄沢嬢も華麗な職歴を誇るというように二人とも貴重な即戦力となっています。それから、忘れてはならないのが当研究室専属のユニークなアルバイトの面々です。元職員で現在は鍼灸一筋のY氏、大学院で英文学を学ぶH君、元外資系銀行員で仏語に堪能なH女史の3人が定期的に応援に来てくれています。過酷な労働にも堪え、しかも外国の文献に一早く精通できる理由がこの辺りにありそうです。

 第3研究室で取り扱う業務は、超音波から低周波、公害振動までの幅広い分野にわたっています。室としての特色を探すのには苦労しますが、強いてあげるとすれば、3人の古参職員がいずれも聴感実験や社会調査を行った経験を有することでしょう。これらの研究は、人間(時には動物も)に与える騒音や低周波音の影響を調査し、適切な評価方法等を決定するために行われます。調査の進め方や結果の解析方法などについては未だ検討すべき点が多いことから、今後とも一致協力してこの問題に取組んでいく所存です。余談になりますが、聴感実験や社会調査では、こちらの予期した回答が仲々得られず苛々させられることが度々あります。お陰で3人とも我慢強くなり、人間的にも丸くなったと云われています。

 それでは、当研究室が中心となってすすめています調査研究のいくつかを紹介しましょ う。

1. 騒音の評価方法に関する研究
 漠然としたテーマですが、具体的には等価騒音レベルLeqを種々の騒音に適用する際の問題点を検討するものです。現在、各種の交通騒音や工場・作業騒音にはそれぞれ独自の騒音評価量が用いられています。そのため、基準値を互に比較することや、2種類以上の騒音が複合する場合の騒音予測等を行うことは難しい状況です。Leqを用いることにより、少くとも上のような問題は解消される分ですが、その際、既存の評価量とLeqとの関係が明確であることが必要となります。現場測定の機会を肥えては両者の関係を求めるとともに、Leqの測定上の要件等についても検討を加えています。

2. 低周波音の影響評価に関する研究
 耳には聞こえぬ低周波音ですが、多くの場合、通常の騒音を伴うことや建具等をがたつかせることでその存在が認められます。このことは、逆に低周波音の評価に当っては可聴音の影響が無視できないことを意味します。従来より、低周波音の評価に関しては多くの調査を実施してきましたが、今年度はとくに低周波音と他の可聴音が複合する条件下での評価方法について検討を加える予定です。

3. 残響室法吸音率の測定に係る研究
 牧田理事の指導の下、建築音響研究室と共同で行う研究です。先般、残響室法吸音率の測定方法を定めた国際規格ISO-354が改訂されましたが、当所の第1残響室については測定試料面積を増大(16m2以上)しなければなりません。この場合、残響室内の音場の拡散性や周辺効果の寄与度等の変化により、従来の測定値とは違った吸音率になるものと予想されます。試料面積による吸音率の違いを種々の吸音材料について調査するとともに、拡散音場の確保並びに吸音率の表示方法等に関する調査検討を行うことになっています。場合によっては、吸音率の測定業務を1年間程お休みすることになるかもしれません。

 以上、第3研究室で実施あるいは予定しています研究を紹介しました。他室も含めて、私達の研究が社会のニーズに合致しているかどうか心配な点もあります。アンテナが低く、錆び付いているために電波をキャッチできないのかもしれません。読者の皆様の御指摘をお願いします。

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