1987/7
No.17
1. 小林理学研究所における音響、振動関係の研究室紹介 2. 騒音振動第1研究室 3. 騒音振動第2研究室

4. 騒音振動第3研究室

5. 建築音響研究室

6. 作業環境騒音に関するISOの最近の動向 7. クリーンエアの周辺
      小林理学研究所における音響、振動関係の研究室紹介
 騒音振動第2研究室

横 田 明 則

 騒音振動第2研究室は総勢5名のメンバー(横田、山本、畑中、松本、山本(牧))によっ て構成されております。研究業務に携わる前4名のメンバーは1つあるいは複数の研究テ ーマに対して、各人でまた研究室全体で研究目的を達成すべく、山本牧嬢にアシストして もらいながら取組んでいます。研究内容は第1、第3研究室と共通するものも多く、研究室間で協力し合って業務を推進することも多くありますが、第2研究室に共通する特徴は伝搬という言葉で表わすことができます。この伝搬の中には騒音の伝搬、低周波音の伝搬および振動の伝搬が含まれています。

 騒音は伝搬する過程で地表面の性質(硬さ等)、空気中の温度、湿度および風などによって影響を受けますが、これらの要因を考慮しながら騒音伝搬の実験、調査を行い環境影響評価と環境保全のための研究に取組んでいます。音が単純な地形上を伝搬する場合、伝搬特性は理論的に大略把握されておりますが、複雑な地形となりますと理論の適用にも限界が生じてまいります。このようなケースでは地形の縮尺模型を製作しまして、音の伝搬特性の把握を行っております。この縮尺模型による実験は伝搬特性の把握ばかりではなく、騒音防止のために種々の対策を講じる上で重要な役割を果しております。特に建設計画にある各種施設によって将来もたらされるであろう騒音環境の変化の予測、およびそれに対する対策の立案には欠かせない実験方法となっております。

 さらに、音の中には騒音レベル(A特性)では評価できない低周波音と呼ばれるものもあります。この低周波音の伝搬特性、特に高架構造物から放射される低周波音の特性を把握するための研究も行っております。また、低周波音の対策につきましても伝搬径路上での可聴周波数帯域における騒音対策と同種の防止対策の可能性について検討しています。伝 搬径路での音の対策効果は対策に使用する音響材料の特性に左右されます。周波数が低く なるに従って音響材料の吸音効果、遮音効果は低下する傾向にあり、可聴音領域における音響材料の多くが、低周波数領域においては防止材料としての効果に期待が持てなくなって来ます。また、低周波数領域では音響特性を調べる方法も確立されていません。そこで既存の音響材料を含め種々防止材の開発を目的として、140Hz以下の低周波数領域での音響特性(吸音率、透過損失)を把握する方法についての研究も進めています。

 振動の分野におきましても、振動源から人間が居住している建物内部に到るまでの公害振動の伝搬特性を把握して人体に与える影響を知り、振動を評価するための研究も行っています。振動源から建屋内部までの振動伝搬は地面中を伝わる振動、地面から建物への伝搬と分けて考えることができ、それぞれに複雑な要因がありますが、これらのことについて公害振動の防止という観点から問題に取組んでいます。

 騒音にしろ振動にしろ、その伝搬特性を詳細に把握することはすなわち環境保全のための対策をその特性の中に見い出すことであるという信念の下に研究を行っています。例えば市街地における高速道路の両側にはよく防音壁を見かけますが、これは音が伝搬径路の途中に存在する障害物によって回折現象を起こし、結果として音が減衰するという伝搬の性質を利用した対策の一つです。

 近年、作業環境の安全性管理、製品の品質管理等の面にも振動計測が利用されるように なってきております。本研究室では振動を測定するピックアップの校正手法に関しての研 究も行っており、レーザー干渉法による高精度の校正装置も完成させました。この装置で校正されるピックアップは標準ピックアップと呼ばれるもので、一般に使用されています。ピックアップは標準ピックアップを用いて二次的に校正されるものですが、現在では二次的な振動ピックアップの校正(相対校正)についても研究を進めています。

 騒音振動第2研究室では概ね以上説明しましたような内容で研究を進めておりますが、前にも述べましたように研究課題によっては他の研究室と密に連絡を保ち、環境保全という観点で研究を行っています。

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