2002/10
No.78
1. 異常診断 -音の達人たち- 2. inter・noise 2002 3. 圧電材料を応用した遮音構造および防振構造 4. 補聴器コレクション 5. 第17,18回ピエゾサロン 6. 軌跡振動計 VM-90
       <会議報告>
 inter・noise 2002

騒音振動第三研究室室長 加 来 治 郎

 inter・noise 2002は8月19日〜21日の3日間、米国ミシガン州のデトロイト近郊のDearbornにおいて開催され、当研究所から杉江、平尾、吉村、加来の4人が研究発表のために参加した。会場となったホテルは、空港とデトロイト市街からそれぞれ車で20〜30分の距離のところにあるが、いわゆる大平原の中にぽつんと立っているようで、大きなショッピングセンターとレストランが近くにあるだけであった。ホテルには自動販売機や室の冷蔵庫もなく、いささか勝手の違いを感じたが、これも会議に専念させようという主催者側の配慮と納得する。

 今回の会議における発表件数は425件、参加者は600名余りで、その内の半数以上が米国からの参加者であった。日本からの参加者は60人ほどで例年に比べればかなり少なかったが、それでも米国に次いで2番目を占めた。ヨーロッパからの参加者が少なかったのは、同時多発テロの影響というよりはこの後9月にスペインのセビリアで第3回のヨーロッパ音響連合の国際会議が予定されており、そちらに参加者が流れたためといえる。規模的には昨年、一昨年の6〜7割といったところである。

 研究発表は、8:15〜9:00の基調講演の後、9:30から17:30まで10の会場に分かれて行われた。会議の統一テーマは「交通騒音」で、Dearbornがフォード社発祥の地ということもあってやはり自動車騒音に関わる発表が多く、タイヤ、ブレーキ、マフラー・サイレンサー、ギア・ドライブライン、タイヤ/道路、などからの騒音についての特別セッションが組まれていた。この方面の研究者にとっては充実した3日間であったと思われるが、時間的な制約からどうしてもセッションがパラレルに行われるため、会場から会場へ駆け足で移動したり、場合によっては見送らざるを得ない発表も出てきたようである。なお、今回の会議で特に目立った点は、Noise Policy(騒音に関する施策、政策)に関するセッションが多く組まれていたことで、各国の環境政策を国際的な観点から議論しようとするアメリカの意図が強く感じられた。それはともかく、このセッションの仕掛け人であるFinegold・荘美智子夫妻の多忙ぶりは驚異的で、氏は自らの発表とセッションの司会をそれぞれ4件ずつ持っているとのことであった。ただし、ここでもパラレルにセッションが行われており、このあたりは水量の調節ができない室のシャワーではないが、会議の運営にいささか大まかな印象を受けた。2日目夜のヘンリーフォード博物館で催されたバンケットも同様で、バスで連れて行かれて館内を見学した後、何の挨拶もないままに代わり映えのしないバイキング料理をかなりの時間並んだ後に有料のビールやワインとともに食するという形式であった。

 さて、当所から参加した4人については特別なトラブルもなく無事発表を終えることができた。これについては各自の報告に任せるとして、ここで少しばかり私事をお話しさせていただく。連名者の発表が初日、自分の発表が2日目のそれぞれ午前にあり、毎度のことながら基調講演を欠席して発表の準備に専念した。発表以外では、主にCommunity NoiseやEnvironmental Noiseのセッションに顔を出すとともに、TSG#3 (各国の騒音に関わる基準や施策の現状調査を目的とする委員会)や今回から新しく設けられたTS (Technical Section)の会合(いずれも橘先生の座長)に出席した。これらについては機会があれば別途報告したいが、何はともあれ外国人同士が討論を早口で始めたとたんに会話が頭の上を行き来するという悲哀を今回もしっかりと味わってしまった。その他では、OHPに代わってパワーポイントがすっかり主流になったこと、環境省の上河原室長が精力的にいろいろなセッションに参加されていたことが印象に残った。

 私自身米国本土は初めての訪問であり、摩天楼のようなビルの立ち並ぶ大都会を想像したが、見渡す限りの大平原と気持ちよく太った大勢の人たち、それにカリカリベーコンの固さを思い出にして米国を後にした。  なお、来年以降の会議は、韓国、チェコ、ブラジル、ホノルルの順で開催されることが決まっている。

会場となったHyatt Regency Hotel

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