2001/7
No.73
1. 航空環境保全委員会(ICO/CAEP)第5回本会議 2. 第12回ピエゾサロンの紹介 3. 鉱石ラジオ 4. 閉塞的な構造を持つ道路における排水性舗装の騒音低減効果について 5. 新しい騒音計シリーズNL-20/NL-21/NL-31
       <技術報告>
 新しい騒音計シリーズ NL-20/NL-21/NL-31

リオン株式会社 音測技術部 若 林 友 晴

1.はじめに
 1999年4月1日に改正された騒音に係る環境基準,および2000年4月1日に改正された騒音規正法に基づく自動車騒音の要請限度では騒音の評価量が中央値LA50から等価騒音レベルLAeqに変わった。LAeqは突発的あるいは間欠的に発生するレベルの高い音に対して敏感であるためその場を代表する値を得るためには24時間など長い時間での測定を行う必要がある。昨今では長時間の騒音測定に対し予算と人員の問題からこれを自動で行う機会が増えている。また取得された膨大な測定データについてはパソコンによりデータ整理することが一般的になってきている。このような最近の騒音測定に対して強力な機能を発揮するのがここに紹介する新しい騒音計シリーズNL-20/NL-21/NL-31である。
 この3型式は同一の形状をしているが,操作パネルの色が異なる。NL-20は自動測定を要しない用途ではほとんどの騒音測定に対応できる普通騒音計である。NL-21/NL-31はNL-20の機能に加えてメモリーカードを利用した自動測定やオプションとして1/3オクターブフィルタ機能などを備える。ここでNL-21は普通騒音計であり,NL-31は精密騒音計である。
 近々騒音計の国際規格が大幅に改正されるが,NL-20/NL-21/NL-31はその新しい国際規格に適合する性能を備えている。ここではその規格の紹介から行う。

図1 普通騒音計NL-21

2.騒音計の新しい国際規格
 騒音計の新しい国際規格IEC61672を発行するための作業がIEC技術委員会において進行中である。この規格はこれまでの騒音計規格IEC60651:1979および積分形騒音計規格IEC60804:1985の両者を統合したものとして発行され,新規格発行後は従来の規格は失効する。
 IEC61672には技術的な仕様を規定したパート1および型式試験について規定したパート2があるが,さらに追加するパートについても審議が行われている。なおIEC61672は2002年初頭に発行予定だが,JISも国際整合化への流れの中で,その翻訳規格として同一内容で改正される予定である。
 新規格では指向特性や動特性,直線動作範囲などの基本性能についてより厳しい仕様を要求しているが,環境に対する安定性についてはこれまでになかった要求事項が追加されている。新たに規定された主な項目を以下に列挙する。(許容差はクラス1の場合について記載)
(1) 基準静圧に対する85〜108kPaの静圧範囲での指示値の偏差が±0.7dBでなければならない
(2) 静電気電圧±4kVまでの接触放電及び±8kVまでの気中放電を印加した後,騒音計は設定した状態で動作を続けていなければならない。
(3) 80A/mの電源周波数磁界および10V/mの無線周波電磁界に曝した時,騒音計の指示値の偏差は74dBの音場において±1.3dB以内でなければならない。
(4) 騒音計から放射される無線周波の電界強度は30〜230MHzで30dB,230MHz〜1GHzで37dBを超えてはならない。
 ここで(2)〜(4)項については電磁波によって騒音計が機能に大きな障害を発生してはいけない点と,周囲の電子機器に障害を発生させてはいけない点がかなり厳しい仕様で要求されており,それは欧州における製品安全規制(CEマーキング)にも準拠した内容になっている。 以上のような大幅改正が行われる騒音計の新しい国際規格に対応できる性能を装備したのが新しい騒音計シリーズNL-20/NL-21/NL-31であり,特に電磁波対策について力点をおいた設計になっている。

図2 機能毎に分類された操作パネル

測定の信頼性を向上
 長時間の測定では測定上のトラブルを出来る限り避ける配慮が必要である。NL-20/NL-21/NL-31では測定の信頼性を高めるために操作性を良好にし,さらに停電保障機能を備えている。
(1) 操作性の向上
  機能が豊富になるほど,誤操作を防ぐために良好な操作性を備えることが重要になる。特に使用頻度の高い演算の開始/停止キー,現場にて除外音の処理に活用される一時停止キーや電源キーについてはキー形状や色に特徴を持たせており明確な識別によって誤操作を防止するようにしている。
 また,校正時において従来はドライバーを使用してボリュームを回転させることにより調整する必要があったが,新型騒音計ではキー操作のみで簡便に感度校正ができるようになっている。
(2) 停電保障
  数日間の連続測定では外部からの商用電源を利用することが一般的だが,その場合には停電などの電源トラブルによって測定が停止する懸念も生じる。NL-20/NL-21/NL-31には停電保障機能が装備されており,外部電源が遮断した場合でも本体内の乾電池によって動作は継続するようになっている。この機能を応用すると,外部電源の用意できない現場において電池交換をする際には一時的に外部電源として電池ボックス等を用意して電源を供給することで,測定を中断させずに内蔵の電池を交換することが可能になる。

図3 
騒音のレベルの変化をリアルタイムでモニターできる液晶画面
 
図4 本体に装着したメモリーカード
長時間にわたる騒音データの記録
 等価騒音レベルを測定する場合は,1週間の連続測定であってもLAeq,10minであればデータ量は計1000個でありさほど大きくはない。

 それに対して実際の騒音レベルの変化を例えば0.1秒毎に連続記録する場合のデータ量は600万個と膨大になる。しかしこのデータには時々刻々の騒音レベルの変化がそのままの形で記録されるため,例えば除外音や対象音についての考察を行う場合などに多くの示唆を与えてくれる。さらに,後処理にてさまざまな騒音の評価方法を適用することも可能でありとても応用範囲の広いデータになる。
(1)大容量メモリーカードへの対応
 NL-21/31では大容量のメモリーカード(コンパクトフラッシュ)が使用できるため,例えば128MBのカードの使用により前記した0.1秒毎の騒音レベルを1週間記録することが可能になる。このカードのデータはCSV形式になっているため,パソコン上で汎用ソフトの利用により容易に取り扱うことができる。
(2) 専用ソフトウェアの利用
 環境基準や騒音規制法に対する評価を行うための専用ソフトウェアも製品化されている。このソフトウェアの操作は簡便であり,さまざまなデータ編集や帳票作成を短時間で実施することができる。

おわりに
 
電子技術の進歩により,これまで大型の測定器でなければ実現できなかったような機能もハンディな騒音計で実現できるようになってきた。しかし,発展すべき点はまだまだある。今後も測定者の方々から様々なご意見をいただいて一層の改善に努めていきたい。

-先頭へ戻る-