1998/10
No.62
1. "ピエゾサロン"の開設 2. 斜入射吸音率試験室の新測定システム 3. サウンドボックスと竹のレコード針 4. 第16回 ICA/ISA(シアトル)会議報告 5. 0.05μm検出の液中微粒子計 KS-17
       <技術報告>
 0.05μm検出の液中微粒子計 KS‐17

リオン株式会社 環測技術部 松 田 朋 信

1.はじめに
 電子工業においては半導体をはじめ、微細加工技術の向上により高集積化が進んでいるが、微細化が進むにつれて製品の歩留まりに影響を与えるゴミは、より微小となる。超純水では0.1μm以上の粒子が1mL中に1個以下のレベルになっており、さらに微小な粒子の除去と計測が要求されている。そこで0.05μm粒子が検出可能なパーティクルカウンターKS‐17を開発したので報告する。

写真 KS-17(KZ-70はオプション)

2.従来の検出原理
 液中パーティクルカウンターは、図1に示すようにレーザービームを広く照射する高検出型とレーザービームを絞る一部検出型とに大別される。

図1 フローセルとレーザービーム

 一部検出型は光エネルギー密度を高めることで粒径感度を向上している。またフローセル壁面の散乱光が減って光ノイズが減少する。最小可測粒径を小さくすることを目的に、KS‐17に採用した。

 従来の一部検出型の短所として、フローセル内で光エネルギー密度が一様でないため、粒子の通過する場所によって感度が異なってしまうということがある。光強度の弱いところを大きい粒子が通過すると小さい粒子として誤って計数してしまうことが発生する。また、比較的小さい粒子は検出される確率が少なくなってしまう。つ まり、計数効率が粒径に依存してしまうことになる。

 これらの短所を克服すべくKS‐17では一部検出型の改良に取り組んだ。

3.短所を克服するための設計
 照射領域の光強度分布が一様でなくとも、粒子信号を検出する領域を中心付近のみに限定することで、その領域内での照射光強度の差を少なくし、粒径を弁別する精度を高めることができた。その具体的3つの手段を次に記す。

 1) フローセルを屈曲したL型にして、照射域の流路方向と受光軸方向を一致させることで、受光軸方向前後での粒子弁別誤差を無くした(図2参照)。

図2 光学系の概略

 2) 照射光軸と流路方向に垂直な方向での粒子の通過位置を検出するために、受光面が3分割された3chフォトダイオードを採用した。極中心を通過した粒子の信号はbチャンネルのみに現れる。中心からずれるとa,b両方、またはb,c両方に信号が現れるか、さらに中心よりずれるとaまたはcのみに信号が現れる。a,b,cの信号の割合から粒子の通過した位置の情報を得る事が出来る。同時にこのフォトダイオードより粒子の散乱光量を検出することが出来る。粒子の位置と散乱光量の情報により、粒径の弁別を精度良く行う事が出来る。

 3)粒子の通過位置情報を精度良く検出するために、高精度で収差の少ない集光レンズ群を設計した。

4.計数効率の粒径依存性能
 計数効率の粒径に対する変化の試験結果を図3に示す。従来の一部検出型の他社製品は前項で説明した欠点が現れ、計数効率の粒径に対する変化が大きい。KS‐17は、0.11μm以上にて計数効率1%でほぼフラット、0.05μm付近ではその半分を計数するというように、パーティクルカウンターの理想的な特性が得られた。図 4に多分散試料を測定したデーターを示す。高検出型の0.1μmパーティクルカウンターとKS‐17で同じ試料を同時測定したが、データーの連続性が見られる。

図3 計数効率の粒径に対する依存性

 

図4 高検出型との多分散粒子の比較測定

5.おわりに
KS‐17の特長をまとめると、0.05μm検出、計数効率の粒径依存性が小さい、軽量小型、低価格である。更なる市場の要求として最小可測粒径の微小化や計数効率のアップ等が有り、今後取り組む課題である。

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