1993/1
No.39
1. 十歳を迎えた[小林理研ニュース] 2. 環境騒音問題の推移 3. バルクハウゼン式騒音計 4. 第14回国際音響学会議周辺 5. 超音波診断装置 UX-01
    
 
十歳を迎えた[小林理研ニュース]

所 長 山 下 充 康

 時の流れは速いもので、[小林理研ニュース]が発刊されたのが昭和58年(1983年)だから今年で丁度十年目を迎えることになる。毎号十数ページの印刷物であるが、年四回、季刊として発行してきたので創刊号から束ねると、ほぼ480ぺ一ジ、25mmの厚さになっている。

 そもそもこのパンフレットの刊行のきっかけは五十嵐理事長のふとした提案であった。「小林理学研究所の活動状況を外部の方々になお一層理解していただくとともに時機に即した情報を広く提供することを試みたらどうだろうか。」

 当初、[小林理研ニュース]の刊行を何号まで続けることができるか、正直なところ不安が無かったわけではない。学術刊行物ではないので平易な記述をしなければならないが、かといって記事の内容に厳密さを欠くことは許されない。ニュースの原稿となると、論文や報告書を書くのとは勝手が違う。

 三ヶ月ごとの季刊ではあるが、ニュースの編集担当者は原稿集めに毎号四苦八苦している。記事のテーマの選択、執筆者との交渉、期限までの原稿集め………日常の業務に追われて手一杯の研究室職員を相手にしての執筆依頼だから、なだめたりすかしたりの駆け引きが展開される。そんな苦労を繰り返しながらも、いつの間にか十年続いてしまった。今となっては刊行を継続しないわけにはいかない。

 [ニュース]の紙面には様々な研究の足跡が残されていて、生々しい研究活動のプロセスを時系列的に見ることができる。低周波音のように社会的動向に即応して勢力的に推進された研究、模型実験技法や航空機騒音監視システム、道路用ルーバーの開発、振動ピックアップ校正方法の研究、音響材料の研究等々がそうであるように、一つの研究が発芽し、育成され、結実を見るに至った今日までの経緯を、学術的な研究レポートとは違った側面から眺めることができるのも[ニュース]の特質であろう。さらに、十年前の[ニュース]の記事に登場している事柄の多くが、形こそ変わっているものの今なお研究の対象として大きな関心を集めているのである。

 十年一昔と言われるが、[ニュース]の紙面に見られるように、研究の推進には十年が決して長い年月ではない。研究者にとっては、十年前の事柄でも昨日のことのように新鮮な姿で存続しているのではないだろうか。

 今年はどんな研究が新たに発芽し、どんな研究が結実の時を迎えるのか、十歳になった[小林理研ニュース]のファイルを繰りながらあれこれと思いを廻らせている。

-先頭へ戻る-