1984/12
No.7
1. 私と補聴器

2. 低周波領域におけるマスキングについて

振動ピックアップの絶対校正(その2) 4. Tr式微風速計の概要−新しい熱式風速計− 5. 騒音と会話の了解度

 騒音と会話の了解度

 騒音の人間生活における影響として、会話に対する妨害が重要である。ISOにおいては、1960年頃よりこの問題をとりあげ、作業環境騒音(ISO R 1999) 一般環境騒音(ISO R 1996)のほかに、作業委員会(Working Group)において審議をしていた。その後日本においてはその経過が不明であったが、一応Technical Report 3352としてまとめられていることが判明した。すでに1974年に発行ずみであるが、最近入手することができたのでその概要を紹介する。この報告は1960年以前の文献に基づいているので、いずれは最近の研究によって修正されるものと思われる。
ISO Technical Report 3352
Assessment of noise with respect to its effect on the intelligibility of speech.
 この報告は7の文献に示す3つの論文に基づいたものである。ここでいう了解度95%は、 明瞭度指数0.4(これはロガトム-logatom-の認識度50%、または単語了解度90%に相当)である。いろいろなスペクトルをもつ騒音について、オーバーオールA特性値dBAによる会話了解度の評価は、よい対応を示さないので、ここでは会話妨害レベル(Speech Interference level)を採用する。これは騒音のスペクトルのうち中心周波数0.5、1、2、4KHzの算術平均をとったものである。
 ただし、この方法は今後の研究によって見直されることになろう。

1. 適用
 この技術報告は、一般の会話における文章了解度に対する騒音の影響を評価する実用的な方法を記述するもので、文章の内容を了解できる聴き手と話し手の間の距離を騒音レベルに対して示したものである。

2. 応用の値囲
 この報告は、定常的な騒音の存在する一般環境において、通常の会話または少し声を大きくした会話に対するもので、残響があったりエコーのある場合を考慮していない。

3. 参考資料
  (1) IEC Publication 179, Precision sound level meter.
  (2) IEC Publication 225, Octave, half octave and third-octave band filters jntended for the analysis of sounds and vibrations.

4. 定義  
  (1) 了解度(intelligibility)通常の会話において、いくつかの文章を呈示し、内容を了解した文章の数の割合(%)  
  (2) 好ましい了解度(satisfactory intelligibility)了解度95%以上
  (3) 会話妨害レベル(speech interference level)騒音のスペクトルのなかで、中心周波数 0.5, 1, 2, 4KHzkオクターブバンド音圧レベルの算術平均値

5. 測定の方法
 バンド音圧レベルは、聴取者の頭の位置(可能ならば人が存在しない状態)で上記のバンドについて測定する。
 測定器は3で述べた機器を用いるものとし、時定数はFASTとする。

6. 文章了解度による騒音の評価方法
 以下の表は、通常の会話または少し声を大きくした会話において、文章了解度95%になる最大距離を示したものである。

7. 文献
  (1) Beranek, Leo L., Acoustics, MacGraw Hill Book Co. New York, 1954.
  (2) French, N.R., Steinberg, J.C., Factors governing the intelligibility of speech sound.
  (3) Kryter, Karl D., Mehthods for the calculation and use of the articulation index.
    JASA 34 No.11, pp.1689-1697 1962.
注(1) 上記の会話妨害レベルは、通常の街頭騒音の場合、等価騒音レベルでは約7dB程度大きくなる。米国環境庁の報告ではLeq〜60dBにおいて文章了解度95%としているが、これは会話妨害レベルで約53dBになり約1mで通常会話が可能である。
  (2) ロガトム:通信機器の明瞭度試験に用いられる語表

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