2010/10
No.1101. 巻頭言 2. Low frequency 2010 3. inter-noise2010 4. 音 玩 具
5. 第35回ピエゾサロン 6. 補聴器 リオネット クレア <技術報告>
補聴器 リオネット クレア(CREA)
リオン株式会社 医療機器事業部 開発部 堀 田 聡
図1 RICタイプの耳かけ型と一般的な耳かけ型補聴器はじめに
リオネットクレアは平成22年 2月に発売されました。補聴器本体からイヤホンを分離した方式のRIC(Receiver in the Canal:外耳道イヤホン型)を採用し、また操作部であるボリュームやスイッチを補聴器本体から無くす事で軽量化及び小型化を実現し、可愛らしい補聴器となりました(図1)。カラーバリエーションとして、宝石のようなブリリアントな輝きを持った7カラーを用意し、手元で操作可能なリモコンも同時に開発しました。
リオネットクレアのラインナップとして、音の処理機能の違いによるHB-G8BA、HB-G8BBの2機種を開発し、それぞれの機種で「パワーイヤホン」/「スタンダードイヤホン」を装備し、装用される方の適応聴力範囲も軽度〜高度難聴に対応可能となっております。
本稿では、リオネットクレアの特徴的な機能について紹介します。きめ細かな調整
入力音を周波数バンド毎に分け、複数のチャンネルできめ細かくデジタル信号処理を行います。さらにOPC(出力制限装置)を搭載しているので、大きな不快音も抑えることが出来ます。
図2に表すようにHB-G8BAは10バンドのGAIN調整、4チャンネルのCRC(Compression Raito Control圧縮比調整器)2チャンネルのニーポイント(圧縮をかけ始めるマイクへの入力音圧)にて調整が可能です。
HB-G8BBは7バンドのGAIN調整、3チャンネルのCRC、1チャンネルのニーポイントにて調整が可能になっており、HB-G8BA/HB-G8BB共に自由度の高い調整が容易に行えます。
図2 補聴器DSPの処理過程を表現したイメージ図
音声の聞き取り向上と雑音抑制
騒音下の聞き取りを向上させる機能としては、一般的にノイズリダクション機能が用いられ、リオネットクレアもノイズリダクション機能を搭載し、定常雑音を抑制する事で聞き取りやすい環境を提供します。またノイズリダクションは128バンドで環境分析を行う為、きめ細かい処理が行われます(図3)。
またリオネットクレアはマイクを2つ搭載する事で図4に表す様に、正面からの音はそのまま増幅し、後方からの音を抑制する事で、正面の会話音を聞き取りやすくします。さらにHB-G8BAに搭載している適応型指向性では、背後や側面からの音(例えば車やバイク)が動いても素早く追いかけて抑制する事でS/Nを向上し、正面からの音声が強調されたような聞こえをお届けします。
図3 ノイズリダクションの効果例
図4 指向性機能イメージ図
更なる快適性を提供するために
リオネットクレアには、快適にお使い頂く為の機能として、音環境の分析を瞬時に行い状況に合わせて指向性機能、ノイズリダクション機能のONとOFFを切り替えるAMC(Auto Mode Change:自動モード切替)を搭載し、装用者が場面毎にメモリー切替を行う必要をなくしています。また常に入力音を監視し、ハウリングが発生しそうな場面になると、適応フィルタが素早くハウリング成分を抑制するAFBC(Adaptive Feedback Canceller:ハウリングキャンセラー)を搭載する事でハウリングを抑制し、音響利得を上げる事が可能です。 (※AMCはHB-G8BAのみ搭載)
従来機種の電池警告音等は、純音でのお知らせ音のみでしたが、HB-G8BAはそれ加え、メロディーでお知らせする事も、フィッティングソフトでの設定により可能になっています。電池警告音の他に、起動時、音量切替時、メモリー切替時の音もフィッティングソフト上で用意されているメロディーを選択する事が可能です。 (※HB-G8BBは純音のみのお知らせ音です。)補聴器の使用範囲を広げるリモコンの役割
従来機種であるリオネットルーク専用のリモコンに続き、リオネットクレアでは、プレミアムリモコン(RH-02A)、シンプルリモコン(RH-02B)の2種類のリモコンを新たに補聴器と同時に開発しました(図5)。
図5 プレミアムリモコンとシンプルリモコンの外観
図6 RH-02AとHB-G8BAシステム例シンプルリモコンは補聴器の音量切替及びメモリーの切替を装用される方が、手元で確認しながら操作が行えるリモコンとなっています。また両耳装用の方で、片耳のみ操作したい場合、もしくは両耳同時に操作したいといった場面でも、どちらにも対応可能な“左/両耳/右”切替スイッチも搭載しています。
プレミアムリモコンはシンプルリモコンの基本的な操作に加え、音を楽しむ為にBluetoothを搭載し、φ3.5の入力ケーブルも接続できる仕様になっています。 Bluetoothを搭載している事で、携帯電話や、固定電話用Bluetooth送信機によりハンズフリーでの通話を行う事が可能になります。またその他Bluetooth機器と接続することで、ワイヤレスにて音楽やテレビを楽しむことも可能です。また付属のケーブルを使用して、携帯音楽プレーヤーやTV等を接続する事により、リオネットクレアへ音を届けることも可能となっています(図6)。
プレミアムリモコンは生活の中にある楽しむ為の音を装用者へ届け、シンプルリモコンにも搭載している基本機能にて手元で操作できる安心感を届けます。おわりに
リオネットクレアは補聴器としての機能に加え、リモコンにより、補聴器を装用される方が生活の中で楽しむ為の音を届けたい、また手元で操作出来るという安心感を届けたいという想いで開発をしました。
リモコンの開発には、補聴器開発部門以外からも協力をしていただきました。
装用される方へは、いつも楽しみにしているテレビや、音楽をリオネットクレアでお届けし、そしてご家族やご友人との日常の会話を更に楽しんで頂ける補聴器となる事を願っています。
そして補聴器の存在に新たな一歩を踏み出したリオネットクレアに続く今後の製品開発においても多くの方に、より身近でそして愛着を持って頂ける製品を開発していきたいと考えています。