2010/10
No.110
1. 巻頭言 2. Low frequency 2010 3. inter-noise2010 4. 音 玩 具
5. 第35回ピエゾサロン 6. 補聴器 リオネット クレア

    <会議報告>
 Low frequency 2010


騒音振動研究室  土 肥 哲 也

 低周波音や低周波振動に関する国際学会“International Conference on Low Frequency Noise and Vibration and its Control”が2010年6月9日〜11日の3日間、デンマークのオールボーで行われた。当所からは私1人が参加した。

 


写真1 発表会場


写真2 オールボーの街並

 この会議は1973年から開催されている国際会議で、近年はイギリスのDr. Geoff Leventhallが中心となりおよそ2年に1回のペースで開催されている。研究発表の内容は低周波の音や振動に関する幅広い分野で、低周波音の人的影響や物的影響、低周波振動の人的影響、低周波音の計測手法や実験設備の紹介、各国の低周波に関する基準や対策事例など多岐に渡る。今回の発表では、特に風車から発生する音や、低周波音の人的影響に関する研究内容が多く見られた。

 会議の参加者は50人程度で、3日間を通して合計32件の発表が1セッションで行われた(写真1)。国別の参加者は日本が最も多く10人以上、その次が開催国のデンマークであった。2004年に参加した時と比べて、中国、韓国、台湾などアジアからの参加者が増えた印象を受けた。日本からの参加者の半数はこの会議の次の週に行われたinter-noise2010にも参加していたが、一方でこの会議のためだけに来た日本人も多く、低周波音や低周波振動に関する日本の関心の高さが感じられた。

 開催地のオールボーはデンマークの北端に位置する小さな町で(写真2)、この時期は夜の11時頃まで日が暮れなかった。町の中心から車で15分程度離れた所にあるオールボー大学では、昔から音に関する研究が盛んに行われており、1970年代に既に低周波音実験室があったことを知り驚いた。開催2日目に行われたTechnical tourではこのオールボー大学の1100 m2もある音に関する研究施設を半日かけて見学した。特に印象に残った施設は、部屋のある一面で発生させた低周波音を、対面する壁に設けたスピーカ群で打ち消すことができる実験室だった。室のもつモードをなくすことができるため、さまざまな条件で感覚閾値などを調べる被験者実験を行っていた。

 

 私は低周波音により建具が振動してがたつき音を発生させる現象について実験結果を発表した。トンネル発破音などに見られる衝撃性を持つ低周波音は、定常的な低周波音よりもがたつきが発生し難いといわれていたが、これまで屋外での実験結果はほとんど報告されていなかった。私は独自に開発した3〜20 Hzの超低周波音を屋外で発生させることが可能な装置を用いて実験を行い、建具のがたつきと衝撃性の影響を報告した。発表後にDr. Leventhallとがたつきの検知方法について議論させて頂いた。加速度計などを用いてがたつきを判定する方法もあるが、やはり最後は人間がその音を聞いて判断するべきだという意見で一致した。

 他の発表で会場の関心が高かったのはやはり風車に関するものだった。この会議の実行委員の1人でもあるオールボー大 Dr. Pedersenは、風車から発生する音の測定結果を明確に整理し発表していた。風車の音のパワーレベルが風車の電力に比例することや、電力で基準化すると45箇所の風車から出る音の周波数特性が概ね同じ特性を持つことなど、有用な知見を得ることができた。また、ポルトガルのDr. Brancoは同国で問題になっている風車の音について、近隣住民や馬などに与える影響を2007年からの経過調査という形で報告していた。

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