2007/7
No.97
1. 低周波音という名の“お化け” 2. FDTD法とPE法を組み合わせた効率的な屋外音響伝搬解析 3. 珍品 ルミエール蓄音機

4. 第28回ピエゾサロン

  5. 精密騒音計(1/3オクターブ分析機能付)NA-28オプションプログラム
 
 精密騒音計(1/3オクターブ分析機能付)NA-28オプションプログラム
     波形収録カード NX-28WR,建築音響カード NX-28BA

リオン株式会社 計測器技術部  大 屋 正 晴

1  はじめに
 NA-28はオクターブ、1/3オクターブ実時間の同時分析を行うハンディタイプの精密騒音計であり、「測定現場におけるスピードと安心」の実現をコンセプトにした測定器である。この度、NA-28の機能拡張用として波形収録カードNX-28WRおよび建築音響カードNX-28BAを開発したので報告する。
図1 精密騒音計NA-28

 

2 波形収録カード NX-28WR
 NX-28WRは音圧レベルの記録に加えて、音圧波形も同時に録音する機能をNA-28に付加するプログラム製品である。これにより測定現場に音圧波形を記録すためのデータレコーダの携行が不要となる。録音ファイルは非圧縮でWAVEファイルとして記録されるためパーソナルコンピュータでの取扱いが容易であり、再分析にも利用できる。

2.1 基本仕様
 基本仕様は以下のとおりである。
・ サンプリング周波数
   オクターブと1/3オクターブ同時分析時     48 kHz、24 kHz、12 kHz
   騒音計、オクターブ分析、1/3オクターブ分析時     64 kHz、32 kHz、16 kHz
・ ビット長     16 bit
・ データフォーマット     PCM(非圧縮)形式WAVE
・ 周波数重み特性     本体の設定によらずZ特性(平たん特性)固定

2.2 録音モード
 NX-28WRは様々な録音モードを備えている。以下の1)〜3)はイベントの発生により録音を開始するモードであり、NA-28のオートストア中に使用でき、それぞれ併用が可能である。  

1)  レベル録音
  設定レベルを超える1秒前から、設定レベルを下回った後5秒間の録音を行う。レベルの大きな音を録音する場合に使用する。  

2)  インターバル録音
  一定時間ごとに15秒もしくは1分の録音を行う。 周辺の環境音を把握するために使用する。  

3)  マニュアル録音
  手動で任意に録音の開始/停止を行う。現場にいる 測定者の判断により録音を行う場合に使用する。  

4)  トータル録音
  オートストア中もしくはLeq等の測定中すべての音を録音する。短時間測定において測定された音圧レベルと共に音を記録として残しておく場合などに使用する。

3 建築音響カード NX-28BA
 本製品は建築音響の現場測定で必要な測定機能を備えている。JISに対応した室間空気音/床衝撃音遮断性能(D値、L値)、室内騒音(N値、NC値)の評価および残響時間の算出を行う。わかりやすいアドレス表示、データ表示、操作性により簡便に測定を行い、評価結果を得ることができる。建築音響に携わる専門の方ばかりでなく、測定経験の少ない方にもご使用いただけるように配慮した製品である。

3.1 暗騒音測定モード
 NX-28BAではアドレスを測定点で表示する。アドレスは選択された暗騒音測定モード(1回測定(Once)、Before、During)に応じてインクリメントを行う。1回測定(Once)モードは、暗騒音測定を受音室内の代表する1点で行う場合に使用する。Beforeモードは受音室内各測定点の暗騒音補正をより厳密に行う場合に使用する。Duringモードは暗騒音レベルが変動しやすい場合に使用する。

3.2 暗騒音レベル重ね書き/警告表示
 受音室内音圧レベルを測定する場合、暗騒音レベルとの差が6dB以上あることが望ましい。従来はその差を瞬時に把握することは困難であったが、本機能を使用するとその差が6 dB未満の場合は該当する周波数バンドのバーグラフの色が赤色、6 dB以上15 dB未満の場合は黄色で表示されるため、瞬時にその差を把握できる。特に室間音圧レベル差測定においてこの機能は有用であり、バーグラフの色を見ながら音源室の音量を調整すれば、必要最小限の音量で室間音圧レベル差を測定することが可能となる。
図2 暗騒音レベル重ね書き/警告表示

3.3 等級曲線、等級値表示
 D値、L値(軽量/重量)、N値、NC値などの等級値を計算する。さらに測定値を等級曲線と共に本体上にグラフ表示するため、測定現場でデータの妥当性を直ちに判断できる。
図3 等級値および等級曲線表示

3.4 残響時間測定
 室間音圧レベル差測定で使用した音源をそのまま使えるように、ノイズ断続法による残響時間測定方法を採用した。
図4 残響時間測定

1) 簡単な操作性
 NX-28BAでは測定開始のトリガ点をノイズの立ち上がりとしている。これはトリガレベルを暗騒音レベルからノイズの定常レベルの間であればどこに設定してもよいことを意味しており、これにより厳密なトリガレベルの設定を不要とした。また、取得した減衰曲線全体から残響時間を自動算出するため、残響時間を簡単に得ることができる。

2) T20、T30の自動計算とエラー率表示
 自動的に算出された残響時間の信頼性を確認するために、本器ではT20(20 dB減衰区間から算出された残響時間)とT30を同時に計算し、さらに両者の差をエラー率として表示する。このエラー率が小さいほど信頼性が高いと判断できる。

3) 手動再計算
 エラー率が大きいなど信頼性がないと判断した周波数については、減衰曲線を表示し、任意区間を指定することで残響時間を手動で再計算することができる。

3.5 設定変更の監視機能
 NX-28BAにおいては、起動時に設定読込機能を使用すると、設定変更の監視機能が自動的に動作する。測定に必要な設定を変更しようとすると警告が表示されるため、誤操作による設定変更の事故を防ぐことができる。

3.6 NX-28BAとNX-28WRとの併用
 NX-28BAはNX-28WRと併用して使用することができるため、遮断性能測定や残響時間測定中に音圧波形も録音することができる。再分析で用いる他に、経験の少ない方が測定する際にも録音してもらい、専門の方が後でその音を聞くことでデータの信頼性を確認する場合にも有用である。
図5 残響時間一覧表示

4 おわりに
 2つのプログラムカードを紹介した。それぞれがNA-28の機能を拡張しながら、コンセプトである「測定現場におけるスピードと安心」を実現する製品になったと考えている。この場を借りて、開発に際してご意見を伺うことができた方々に感謝申し上げる。今後も皆様のお声を頂きながら、お役に立てる製品開発に取り組んでいく所存である。  

 

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