2006/10
No.94
1. “中庸の精神”の功用

2. WESPAC \ 2006 SEOUL

3. 汽車の汽笛・鐘 4. 精密騒音計(1/3オクターブ分析機能付) NA-28
      <技術報告>
 精密騒音計(1/3オクターブ分析機能付) NA-28

リオン株式会社 計測器技術部 大 屋 正 晴

1.はじめに
 NA-28(図1)はオクターブ、1/3オクターブ分析機能を備えた精密騒音計(サウンドレベルメータ)である。ロングセラーとなったNA-27の後継器であるとともに、リオンがラインナップするハンディタイプ騒音計の中でも最上位に位置する機種である。建築音響計測における現場測定のほか、環境騒音、産業分野などでの使用を想定している。計量法精密騒音計、騒音計の新しい規格JIS C 1509-1のクラス1、またIEC 61672-1、ANSI S1.4にも適合する。
 また、NA-28は計測現場におけるスピードと安心の実現をコンセプトにして開発された。誰でも迅速かつ安心して測定を行っていただくための機能や特長を備えている。このコンセプトを実現するための技術と機能について報告する。

図1 精密騒音計NA-28


2. ディジタル信号処理技術の寄与

2.1 広い直線動作範囲
 NA-28はディジタル信号処理により様々な機能を実現している。従来に比べて広い110dB(A特性、1kHz)の直線動作範囲を有しており、これはディジタル信号処理によるものである。

2.2 ウインドスクリーン補正
 ウインドスクリーンはわずかではあるが騒音計の周波数特性に影響を与える。また、新しく発行したJIS C 1509-1ではウインドスクリーン装着時の影響の程度を記載することを求めている(図2)。NA-28はウインドスクリーンによる影響を小さくするための補正機能を備えている。

2.3 拡散音場対応
 ANSIでは騒音計の周波数特性を拡散音場にて規定している。NA-28はディジタル信号処理にて拡散音場での周波数特性を補正する機能を搭載した。

図2 ウインドスクリーン周波数特性

3. コンセプトを実現する特長
3.1 データを短時間に取得するオクターブ、1/3オクターブ同時分析
 例えば建築音響の測定では、評価のためにオクターブ分析、詳細を把握するために1/3オクターブ分析を行うことがある。これまでは2回に分けて測定を行う、音圧波形を収録しておいて後で再分析を行うなどの方法がとられていたが、NA-28はオクターブ分析と1/3オクターブ分析の結果(図3)を一度の測定で取得することができる。これにより2回に分けて測定する必要がないため測定時間を短縮することが可能となる。また、その場で両方のデータを得ることができるため再分析の後処理も不要となる。オクターブ、1/3オクターブフィルタは、いずれもJIS C 1513、JIS C 1514、IEC 61260のクラス1に適合する。
3.2 見やすいカラー液晶
 TFTカラー液晶を採用した。バックライト付き半透過液晶であり、屋内、暗所ではバックライト付の透過型、屋外では反射型として動作するため、場所を選ばず良好な視認性を実現している。

3.3 安心の電池寿命16時間
 新規電源回路の開発、徹底した電源管理により通常動作状態でアルカリ乾電池使用時に16時間の電池寿命を確保した。1日の測定の中で電池の心配をしないで安心してご使用いただくことを目指した結果である。

3.4 暗闇ではキーバックライト
 従来は暗い場所における測定の際にはキーを照らすためのライトが別に必要であったが、NA-28では操作パネルのキーにもバックライト(図4)を備えることで、暗い場所においてキーを照らすためのライトを不要にした。

3.5 慣れない人のための日本語メニューと起動時設定読み込み
 音響測定に慣れない人でも安心してお使いいただけるよう、日本語メニュー(図5)を搭載した。さらに起動時設定読み込み機能も備えており、予めCFカードに書き込まれた設定で起動することも可能である。

  
  図3 オクターブ、1/3オクターブ同時分析画面  
  図4 わかりやすいキー配置とキーバックライト  

図5 安心の日本語メニュー

3.6 CFカードによる長時間測定
 外部メモリとして信頼性の高いコンパクトフラッシュメモリーカード(以下、CFカード)を採用した。これにより環境騒音などの長時間測定が可能となる。例えば、標準付属である128MバイトのCFカードを使用すると、100m秒毎のオクターブ分析データを24時間記録することができる。2GバイトまでのCFカードにも対応しており、さらに長時間の測定を行うことも可能である。

3.7 高速データ転送のUSB
 高速なデータ転送のためにUSB端子を搭載した。パソコンに接続すると、CFカードがリムーバブルディスクドライブとして認識されるため、パソコンへのデータ転送はドラッグアンドドロップで簡単に行うことができる。また、データはテキストファイルでCFカードに書き込まれるので扱いが容易である。

3.8 持ちやすい本体形状とゴムグリップ
 斬新なデザインであるばかりでなく、持ちやすさについても考慮した形状になっている。底面をなるべく丸くし、さらに側面にゴム素材を採用することで、現場で安心してNA-28を保持していただけるよう配慮した。

3.9 プログラムカード対応による拡張性
 NA-28は様々なオプションプログラムカードに対応できるプラットフォームを備えている。今後のオプションとして建築音響測定専用のプログラムカードおよび音圧波形の収録機能を備えたプログラムカードの開発を予定している。

4. 耐環境性能の向上
 新しいJISでは、電磁環境性能として接触放電(±4kV)、気中放電(±8kV)といった静電気放電や26MHz〜1GHzの無線周波電磁界に対して74dB入力時に±1dB以内の変動であることなどが規定された。特に無線周波数電磁界については広い直線動作範囲を有する騒音計には非常に厳しい条件であるが、NA-28はシールド性能の強化などでこれをクリアしている。
 また、新規に開発されたマイクロホンを搭載しており、気圧変化、経年変化への安定性をさらに向上させている。

5. おわりに
 NA-28は最新の技術を盛り込みつつ、現場で実際の測定に携わる方々のご意見をいただきながら開発された。お使いいただく方々のフットワークを軽くし、また慣れない方でも安心してお使いいただける現場型の計測器としてお役に立てれば光栄である。

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