2007/1
No.95
1. 新年を迎えるにあたって 2. 能本乙彦先生と小林理研 3. ECAPD'8参加報告

4. 静電気発生器

5. 第27回ピエゾサロン 6. 1/2インチエレクトレットマイクロホンUC-59
        <技術報告>
 1/2インチエレクトレットマイクロホンUC-59

リオン株式会社 計測器技術部 大 八 木  淳 史

1.はじめに
 環境への社会の関心が高まるにつれ、環境騒音、建築音響、産業など、多くの分野において、音響計測の必要性が高まっている。高い精度が求められる音響計測には、一般に、トランスデューサとしてコンデンサマイクロホンが用いられる。UC-59(図1)は現在の計測用マイクロホンの主流である1/2インチ型で、エレクトレット型のコンデンサマイクロホンである。またUC-59は、これを用いた騒音計測システムが、騒音計の規格(JIS C 1509-1:2005 クラス1、IEC 61672-1:2002 class1)に適合するのに十分な性能を備えたマイクロホンで、リオンの騒音計の中でも最上位機種に位置する精密騒音計NA-28にも搭載されている。

図1 1/2インチエレクトレットマイクロホンUC-59

2.UC-59の特徴
 UC-59は、リオンのマイクロホン製品群において、1/2インチエレクトレットマイクロホンUC-53A(自由音場型)の後継として開発された。性能はUC-53Aと類似した点が多いが、特に異なる点としては、次の3点が挙げられる(図2参照)。
・ UC-59はプリアンプとの接続部が標準マイクロホンの規格(IEC 61094-1:2000 Type LS1aP)に準拠しており、この規格に適合しているプリアンプであれば、他  社のプリアンプにも取り付けることができる。この点、UC-53Aは、接続対象となるのがリオン製のプリアンプのみであった。
・ UC-59のグリッドの角部がR面に仕上げてあるため、ウィンドスクリーンによる引っかかりが抑えられる。 UC-53Aはグリッドの角部がC面にカットされており、ウィンドスクリーンが引っかかることがあった。
・ 振動膜の固定方法を圧入方式にすることで、構造が単純になり、機械的な変動要素を減らすことができる。 この点、UC-53Aはネジ式による固定であるため、比較すると構造が複雑となる。

図 2 UC-59の特徴

2.1. 性能
 UC-59は自由音場型のマイクロホン(自由音場における平面進行波に対して、周波数レスポンスがほぼ平坦)であるので、通常の騒音計測に適している。図3に周波数特性の代表特性を示す。
 感度レベルは−27 dB(re 1 V / Pa at 1 kHz)であり、このクラスのマイクロホンとしては、平均的な値である。
 入力換算自己雑音音圧レベルはマイクロホンカートリッジ単体で16 dB、プリアンプNH-17と組み合わせた場合では18 dBである。UC-53Aと比較すると、2 dB程度性能が上がっている。
 使用温度範囲は−20 ℃から60 ℃である。UC-53Aが−10 ℃から50 ℃であるので、使用温度範囲が広がっているが、これは、振動膜の固定方法を圧入方式にすることで構造を比較的単純化できたことに起因している。また、温度による感度レベル変化は、−10 ℃から50 ℃の範囲で、±0.35 dB以内。−20 ℃から60 ℃の範囲で±0.5 dB以内である。
 UC-59の仕様を表1に示す。

図 3 周波数特性の代表特性

3.システム構成
 UC-59は精密騒音計NA-28に搭載されている。その他、リオン製品とUC-59との組み合わせは図4のようになる。
 音響校正器NC-72Aの公称音圧レベルは114 dB、公称周波数は250 Hzである。またNC-74の公称音圧レベルは94 dB、公称周波数は1 kHzである。
 UC-59はエレクトレットマイクロホンであるので、これに接続するプリアンプへのバイアス電圧の供給は不要である。リオンのプリアンプでエレクトレットマイクロホンに対応しているのはNH-17A、NH-17、NH-22である。
 またマイクロホンとプリアンプ間の距離を延ばし、且つマイクロホンの方向を自由に変えたい場合はフレキシブルロッドUA-20を用いることができる。
 プリアンプから先はコードを介して騒音計ユニットUN-04A、音圧レベル計測アンプNA-42、4chデータレコーダDA-20、多チャンネル分析処理器SA-01、2ch小型FFT分析器SA-78などが接続できる。
 また、プリアンプはリオン製品の他に、マイクロホンとの接続部が標準マイクロホンの規格に準拠しているエレクトレットマイクロホン用プリアンプであれば接続することができる。
 UC-59を用いた測定としては、音響計測、現場における騒音レベル計測、騒音レベルモニタリング、作業環境騒音の計測、音による品質管理、建築物の遮音などの性能測定、音質評価などが挙げられる。

表1 製品仕様

図 4 接続図
(図をクリックすると拡大図が開きます)

4.おわりに
 生活環境や作業環境の快適さや静けさに対する要求は今後も高くなっていくものと思われる。それに伴い、音の測定も多方面にわたり、ますます必要になるものと思われる。それらの音の測定に、UC-59が少しでも役立つことができれば光栄である。

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