2004/1
No.83
1. 謹んで新年のお慶びを申し上げます 2. inter-noise 2003 3. レコード盤収納用キャビネット 4. サーボ加速度計 LS-40C
       <技術報告>
 サーボ加速度計 LS-40C

リオン株式会社 計測器技術部 下 村 和 広

1.はじめに
 地震計測などの低周波数域での低レベル振動を計測する振動センサとしては圧電セラミックを使用した圧電式の加速度計やサーボ式の加速度計が多く使用されています。特に、サーボ式の加速度計は圧電式とは動作原理が異なり、低雑音にDC加速度まで測定できるのが大きな特徴です。今回、新たにサーボ式の加速度計LS-10Cよりも性能を向上させたLS-40Cをラインナップしましたので紹介いたします。

図1 LS-40C外観

2.LS-40Cの特長と用途
 リオンのサーボ式の加速計としては、従来からLS-10Cがあります。LS-10Cは、感度が0.3V/m/s2、DC〜100Hzの周波数範囲でフラットであり、10-5m/s2の分解能を持っています。特に、圧電式の加速度センサと比較すると1Hz以下の周波数で性能が非常に優れています。従って、地震観測あるいは、建築、土木における大型構造物の振動計測や制御を目的とする計測には適しています。しかし、半導体産業などにおける除振台の制御を行うための微振動計測では、LS-10Cよりもさらに低レベルの振動計測を必要としています。 LS-40Cでは、感度が0.5V/m/s2、周波数範囲はLS-10Cと同等、ノイズレベルはLS-10Cに対して1/6(10-6 m/s2の分解能)に減らしていますので、より低レベルの振動計測が可能になっています。(図2,3) また、LS-40CはLS-10Cに比べて消費電流などの電気的な特性が若干異なっていますが、その点を注意すれば外形はまったく同じなので単純に置換えることよって性能の向上を図ることが出来ます。

図2 ノイズ特性
 
図3 性能比較

3.サーボ式加速度計の構成
 サーボ式加速度計(LS-40CとLS-10C共に共通)は図4に示すように振り子、振り子位置検出器、振り子に電気力を作用させるアクチュエーター、装値全体を制御する電器回路の四つの部分で構成されています。 外部からの加速度が作用する部分は振り子です。重りとバネによる振り子はバネの片端がケースに固定されていて、加速度が加わるとケースに対して変位します。振り子は重りの質量は概ね1g程度ですが、バネが非常に柔らかいため共振周波数は非常に低くなっており、僅かな加速度でも振り子は大きく変位します。振り子のケースに対する変位は、振り子の共振周波数よりも低い周波数域では加わる加速に比例しています。振り子位置検出器は振り子のケースに対する位置変位を検出するセンサです。

 振り子位置検出器はコンデンサ式、光学式等の方式がありますが、LS-40C/10Cでは独自の光学式を採用しています。これについては次項で説明します。 アクチュエーターは振り子に取り付けられるコイルとケースに取り付けられる磁気回路で構成されています。この構成はマグネットとコイルを使用した動電型スピーカーのようなもので、コイルに電流を流して振り子に電磁力を作用させるために使用されます。電気回路は振り子位置検出器で得られた電気信号を増幅してアクチュエーターのコイルに電流を流すために使用されます。
図4 ブロック図と外形図
4.サーボ式加速度計の動作原理
 アクチュエーターを構成しているコイルは振り子に取り付けられているためコイルに電流を流すとコイルと磁気回路間に電磁力が発生して、振り子は元の位置からずれますが、もし電流が流れるのと同時に電磁力と大きさが同じで方向が逆向きの加速度が加わると、二つの力は打ち消されるので振り子は動かなくなります。逆に、振り子に加速度が加わった時に、コイルに加速度に応じた電流を流してあげれば振り子を静止状態に保つことができます。すなわち外来の加速度の大きさや方向が変わった場合等にコイルに流す電流の大きさと方向を加速度に応じて変化させれば振り子を静止状態にすることができます。 サーボ式加速度計では、振り子位置検出器が取り付けられていて、振り子の位置変位を検出しているため、振り子の位置変位に比例した最適の電流を自動的に流して振り子を静止状態に保つことができます。振り子の静止状態への自動制御は、電気回路のフィードバック動作によって行われます。このように、サーボ式加速度計は、バネが固くなって振り子がケースと一体になって動作しています。この固くなったバネはサーボ動作の電磁力で 発生したものです。 以上のことから、サーボ式加速度計では、外来の加速度にバランスして振り子を静止状態にするための電流が加速度に比例しているので、コイルを流れる電流を測定すると加速度が分かります。

5.LS-40C/10Cの振り子位置検出器
 振り子位置検出器の性能はサーボ式加速度計のノイズ等の性能を大きく支配します。サーボ式加速度計の最も一般的振り子位置検出器はコンデンサ方式ですが、LS-40C/10Cは従来のものとは異なった光学方式を採用しています。この光学式振り子位置検出器はレーザーダイオード、2素子の分割型フォトダイオード、レンズを使用していて、コンデンサ方式よりも正確に振り子の位置を検出することができます。

 構造を図5に示します。レーザーダイオードと2素子分割型フォトダイオードが振り子を挟んでケースの対向する位置に取り付けられています。振り子にはレンズが取り付けられていて、レーザー光を2素子分割型フォトダイオードにフォーカスさせます。振り子に加速度が加わらない場合には振り子がセンターの位置にあるため、フォトダイオードの真ん中に光が入射し、二つの受光部は等量の光を受けます。加速度が加わって振り子が変位した場合にはフォーカススポットの位置がずれるので、二つの受光部の一方は 入射光量が増加し、他方は減少します。このため二つの受光部の光量差から振り子の位置が分かります。(図6)この方式が振り子の位置を従来方式よりも精度良く検出できるのは、レーザーダイオードを用いているためフォーカススポットの径が非常に小さく、位置検出の分解能が優れているためです。
図5 振り子位置検出器概略図
 
図6 振り子位置検出器概念図

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