1994/1
No.47
1. 理事長就任にあたって 2. 環境騒音をはかる-気象の影響、測定の時間や期間について- 3. インターノイズ94報告 4. 小型高性能積分形騒音計NL-05, NL-15
       <技術報告>
 小型高性能積分形騒音計
     NL-05,NL-15

リオン株式会社 音測技術部1G 吉 川 教 治

1.はじめに
 平成4年5月20日、国際化、技術革新への対応及び消費者利益の確保の観点に基づき計量法が改正され、翌平成5年11月1日に施行された。昭和26年の計量法制定から40年ぶりの全面改正である。これを機会に、あらためて計量法の全体像に目を向けて感じるのは、騒音計、振動レベル計、濃度計の環境計量器が、数ある計量器の中でも"取引若しくは証明における計量に使用される「特定計量器」"と定義される重要な、あるいは社会的に大きな役目を担っている計量器だということである。
 新計量法は、型式承認制度、検定検査規則等の細部にわたる改正も行われ、旧計量法で実施されていた内容と異なる点も多い。また、計量法の施行に伴い騒音規制法及び環境基準の一部も改正された。これは、法の改正により計量単位が「ホン」から「デシベル」に改められたことによる。
 本報告では、型式承認制度、特定計量器検定検査規則の改正に関係する経過措置に触れ、新計量法の技術基準で型式承認された新型普通騒音計「NL−05型」、精密騒音計「NL−15型」の性能を紹介する。

2.新計量法の型式承認制度
 新計量法(以下、法という)第83条、計量法施行令第23条により、「特定計量器の型式承認期限は5年」と定められ、平成5年11月1日以降申請される新規型式から適用された。
2-1.従来型式の新計量法での承認
 従来型式の計量器は、法、附則第18条により、「旧型式で承認を受けたものは、平成5年11月1日に承認を受けたものとみなす」という措置が取られ、法改正後も旧型式の騒音計、振動レベル計などの特定計量器が自動的に法の適用を受けた。
 蛇足ながら、型式承認の有効期間とは、製造者が型式申請し、型式承認された製品を作ることができる期間であって、検定の有効期間を定めたものではないことを付け加えておく。
2-2.旧型式の承認期限
 型式承認期限が5年と定められたことにより、旧法の技術基準のままで法の型式承認がされたとみなされた旧型式の騒音計、振動レベル計などは、平成10年11月までに型式承認の再申請をすることになる。このときさらに、通商産業省令:特定計量器検定検査規則の附則第4章、第11条「旧型式に属する特定計量器に係る技術基準適合義務に関する特例」により旧型式に属する計量器は、旧法による技術基準が適用され、平成12年10月31日までと期限付きではあるが型式承認される。

3.新計量法の検定に合格する条件
 特定計量器は検定が行われ、検定に合格した計量器には検定証印が付される。検定に合格する条件は法第71条で次のように定められている。
(1)その構造が通商産業省令で定める技術上の基準に適合すること。
  (通商 産業省令:特定計量器検定検査規則)
(2)その器差が通商産業省令で定める検定公差を超えないこと。    
   検定公差は、精密級、普通級とも次の値に改正された。
(1) 普通騒音計 検定公差:1.5dB
(2) 精密騒音計 検定公差:0.7dB
  しかしながら、型式承認に特例があることを受け、旧型式の計量器に検定公差の特例が次の条項に設けられている。
  特定計量器検定検査規則の附則第12章第47条「旧型式騒音計の検定公差及び使用公差に係る特例」がそれで、旧型式に属する計量器の検定公差及び使用公差はそれぞれ以下の値に読み変えて検定公差が適用される。
(1)普通騒音計 検定公差:1.5dBを2.0dB
(2)精密騒音計 検定公差:0.7dBを1.0dB
 この特例により、旧型式の騒音計には、検定時に旧法の検定公差が適用されることになる。

4.新型騒音計の性能
 積分形普通騒音計NL-05及び積分形精密騒音計NL-15はJIS,IEC規格による通常の騒音測定に加え、等価騒音レベルの測定に特に使いやすく設計されている。各種設定は全面の設定パネルカバーで目かくしされ、誤操作を防止するよう工夫した。通常の測定では電源投入後に、Leq演算スタートボタンを押せば騒音のレベル測定と並行して自動的に等価騒音レベルが測定される。等価騒音レベルの測定結果は自動的に記憶され、記憶されたデータはプリンタに出力できる他に、インターフェースによりコンピュータヘの転送が可能である。
 また、周波数補正特性、動特性、測定レンジなどの騒音計の設定内容は電源を遮断しても保持され、電源の再投入後も前回の設定内容で測定が開始できる等、操作性に重点を置いた設計となっている。さらに、基本性能をより充実して新法の型式承認を取得した。
 新法の技術基準で型式承認された普通騒音計「NL-05」の型式番号は第S-47号、精密騒音計「NL-15」の型式番号は第F−26号である。図1は精密騒音計「NL-15」の外観である。

図1 精密騒音計NL-15型の外観

4-1.音響性能
 NL-05型(普通騒音計)、NL-15型(精密騒音計)には、それぞれ専用の1/2インチエレクトレットコンデンサマイクロホンUC-52,UC-53Aを使用している。図2、図3は、マイクロホン単体の周波数特性である。図4、図5は周波数補正特性Aによる騒音計としての総合周波数特性である。

図2 コンデンサマイクロホンUC-52の周波数特性
 
図3 コンデンサマイクロホンUC-53Aの周波数特性
 
図4 基準入射角のレスポンスとその許容差
(NL-05型、周波数補正特性A)
 
図5 基準入射角のレスポンスとその許容差
(NL-15型、周波数補正特性A)
 本器は曲線を多用したデザインにより筐体の音響反射が極めて少ないことから、精密騒音計、普通騒音計とも同じ外観、寸法で実現できている。図6はNL-15型の筐体の音響反射実測データである。
図6 基準入射角度の音響反射特性(NL-15型)

4-2.雑音レベル
 NL-05型(普通騒音計)、NL-15型(精密騒音計)は小型ながら、音響計測に必要な基本機能を全て備えている。その一つが周波数補正特性であるが、A特性、C特性の他にFlat特性を備えている。
 周波数分析器などの前置機器として使用するとき、交流信号出力端子のダイナミックレンジが重要であり、本器では80dB以上が確保されている。マイクロホンを含めた総合雑音レベルにより、測定レンジによってこのダイナミックレンジは減少するがそのレンジはほぼ100dBである。
 図7はNL-15型(精密騒音計)のマイクロホンを含めたFlat特性の自己雑音レベルとその1/3オクターブバンド分析の実測結果である。グラフ中、最も大きな値はFlat特性の自己雑音レベルで、最後にA特性の自己雑音レベルが記録されている。その値は約18dBと低く、仕様に記述されている、最小測定範囲28dBからは約10dBのマージンがある。
 NL-05の場合はそのマージンが約8dBである。
図7 NL-15型の自己雑音レベル
(1/3オクターブバンド, Flat特性)

4-3.応答特性
 騒音計の指示値を決める実効値検波回路の応答特性、特に立上り特性の試験及び規格は厳しくなる方向にある。
 現在JIS,計量法の指示計動特性Fの試験は、周波数1000Hzで継続時間0.2秒の正弦波バースト信号のみが規定されている。しかし、ドイツでは既に4kHzのシングルバースト(0.25ミリ秒)による試験が導入されつつあり、NL-15型では指示特性の性能評価にこの試験を導入して全製品に適用している。図8「NL-15におけるFastの時間応答」はこのバースト信号による試験の実測値である。

図8 NL-15型におけるFastの時間応答
5.終わりに
 新型騒音計の性能紹介にあたり、計量法に一部触れた。法律の条文は実にわかりにくい、計量法の全面改正にあたり、通商産業省他が各計量器ごとの改正点をまとめた解説書を発行する意向と聞いている。計量法の詳細及び個別の解釈はこれに委ねることになるが後述の参考資料が判り易い。
 さて、新型騒音計の性能については4−3.「応答特性」で記述したようにカタログ仕様に表れない性能改善が進んでいる。性能の紹介では従来製品と同様の内容を報告することになるが、新製品が開発される都度、改善された項目を重点に性能公表を継続したい。

参考資料
 新計量法における騒音・振動関連の規定
リオン技術資料513  大熊恒靖
環境計量器検定のご案内 (財)日本品質保証機構

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