1989/10
No.26
1. 能舞台の床下大カメ(甕)の音 2. 13th ICA in BELGRADE 3. 音叉と音棒 4. Aモード超音波副鼻腔診断装置 UM-02 5. Noise and Vibration Control
        <新刊紹介>
 Noise and Vibration Control

Leo L.Beranek
(Revised Edition-1988-Published by the INCE USA)

 著者のBeranekは1949年「Acoustic Measurement」1953年「Acoustics」また1960年には「Noise Reduction」1971年「Vibration and Noise Control」とその時代における音響学を代表する著書を刊行してきたが、最近、「Acoustics」がASA(米国音響学会)によって再版され、続いて「Vibration and Noise Control」がInstitute of Noise Control Engineeringによって改訂版が発行された。ここでは後者について改訂された部分を中心に紹介する。この本はもともとMITで行われた夏期講習の資料をもとに17人の著者によって記述されている。今回の改訂に当たってはほぼ初版の再録であるが、第6章に機械騒音のパワーレベルの測定と音響インテンシティの測定方法が追加されている。また最後の第18章に記載されていた「Critera for Noise and Vibration in Communities, Buildings and Vehicles」の内容についてBeranek自身が大幅な改訂を行っている。この章では米国における1972年の「Noise Control Act」及び各官庁から発行された騒音に関する規制等に関連して、騒音対策の基礎となる騒音評価方法について詳しく述べている。まず日常の人間活動において会話を妨害される騒音レベルとして、初版にはSpeech Interference Level(SIL)が提案され、騒音成分の300Hz〜6000Hzを4つのオクターブバンドに分けてその平均レベルで定義されている。その後国際規格としてオクターブバンドを1000Hzを中心とするように改訂されたのに伴い、中心周波数を500、1000、2000Hzの3つのバンドとすることに変更し、これをPSIL(Prefered SIL)とした時期があったが、この提案は余り使用されることがなかった。1977年になってANSI(American National Standard Institute)が中心周波数、500、1000、2000、4000Hzの4つのバンドからSILを算出する方法を規格化した。また以前騒音対策の基本として設定していたNC Curveについては、その後SC(Speech Communication)Curve, RC(Room Cntena)Curve等も提案されているが、今回BeranekはStevensのMark 7を基本としてNCB(Balanced Noise Criterion)Curveを開発し、これによって騒音対策を実施することを提案している(付図)。これはNC Curveに比べて騒音に含まれている低音と高音(RumbleとHiss)により重点をおき、低音を16Hzまでとした評価曲線である。特に63Hz以下の周波数領域の騒音については、軽量構造の家屋を考慮して、音によって発生する振動による影響も含めてある。ここでBalancedというのは騒音の周波数成分がバランスして聞き易いという意味である。著者はこのNCB Curveによる評価方法について実例で説明を行っている。次に環境騒音評価に用いられる単一の評価指標については、等価騒音レベルを中心として詳しく記述してあり、A特性音圧レベルよりもラウドネスレベルを騒音評価に用いるべきであるとしたZwicker等の文献の紹介もある。最後に各種乗り物の中における騒音についての評価対策の方法及び米国各行政機関及び各州で採用している騒音規制、騒音レベルの指針値等についても紹介している。

注:NCB Curveに関する詳細は、Beranekが米国音響学会誌の最近号に投稿しているので、次号に紹介する予定である。

(五十嵐寿一)

付図 NCB曲線(Beranek)
Jour. Acous. Am. 86(2) (1989)650-664
                 (五十嵐寿一)

-先頭へ戻る-