1988/4
No.20
1. 巻 頭 言 2. 環境基準(騒音)の設定経過(その2) 3. WECPNLについて 4. 水鉄砲形周波数分析器 5. 透光性強誘電体セラミックス(BCN-PZT)の物性
       
 WECPNLについて

 航空機騒音に係る環境基準の設定にあたり、ICAOの提案に従ってWECPNLを採用した経過は以上の通りであるが、それから約15年経った今日における航空機騒音評価の現状について述べる。ICAOは空港周辺における航空機騒音評価指数について、世界各国がそれぞれ異なった単位を用いているのでこれらを統一することを目的としてWECPNLを採用したが、これは基本的にはISOの提案に基づいたものである。しかし、これらはまた米国FAAが採用していたNEF(Noise Exposure Forecast)を参考にしたものであった。いずれも騒音証明に用いられるEPNLを基礎資料として予測計算を行うことを前提にしたもので、PNLの算出、特異音及び継続時間の補正等きわめて複雑である。ISOはICAOの提案と前後して、ISO R507(1970)"Procedure for Describing Aircraft Noise around an Airport"を発行した。これはEPNLの測定方法と空港周辺における航空機騒音の評価指数に関する文書で、ここにはICAOのWECPNLという単位をLPN,eqと記述してある。ISOはその後ISO R507の改訂を行いLPN,eqと並列に、A特性等価騒音レベルを用いることも提案した(ISO 3891)。一方、ICAOの調査によると、WECPNLを採用した国は日本を含めて3ヶ国に過ぎないことも分かった。また日本で採用している指数は、WECPNLといってもこれを簡便化しているので、むしろ等価騒音レベルといってよいところから、ICAOにおいても従来のWECPNLをさらに簡素化する方向で審議がすすめられた。また日本のWECPNLはICAOが提案した本来のWECPNLではないのでICAOの付属書からWECPNLを削除することに問題はないとして、空港周辺の土地利用の指標をA特性等価騒音レベルとして改訂することになっている。これには米国が航空機以外の各種騒音との整合性を考慮してNEFをLdnに変更したこととも大いに関係があると思われる。米国以外のヨーロッパ各国においては、一度決定した評価指数を変更することは非常に困難であることから、英国は相変わらずNNI,ドイツはLAEQ(等価騒音レベルの係数が13.3)を用いているのが現状である。

(五十嵐寿一)