2021/10
No.154
1. 巻頭言 2. 多チャンネル音場再生技術を用いた防音壁の挿入損失推定 3. inter-noise 2021 4. 第13 回公衆衛生問題としての騒音に関する国際会議
  5. 医薬・製薬業界向け生物粒子計数器

       <会議報告>
  第13回公衆衛生問題としての騒音に関する国際会議(ICBEN2021)
     
- ICBEN 会議のオンライン形式に参加して-


  騒音振動研究室 室長  廣 江  正 明

 13 回目となる「公衆衛生問題としての騒音に関する 国際会議(ICBEN 2021)」は、当初2020 年6月15 日~ 18 日にスウェーデンのストックホルム、カロリンスカ研究所にて開かれる予定であったが、新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大の影響を受け、約1年の延期の 末ICBEN会議初のオンライン形式で、2021年6月14日 ~ 17 日の4日間にわたって開催された。
 会議の母体である国際委員会ICBEN(International Commission on Biological Effects of Noise)は執行部(会長 Mathias Basner、副会長Mark Brink、事務局長Sabine Janssen、前会長Stephan Stansfeld)の下に9つのチーム-

Team 1: Noise-induced hearing loss (騒音による聴力損失)
Team 2: Noise and communication (騒音と音声伝達)
Team 3: Non-auditory effects of noise (騒音の非聴覚的影響)
Team 4: Effects of noise on performance and behavior (騒音の作業能率や行動への影響)
Team 5: Effects of noise on sleep (騒音による睡眠影響)
Team 6: Community responses to noise and annoyance (騒音に対する社会反応とアノイアンス)
Team 7: Low frequency noise and vibration (低周波音と振動)
Team 8: Interactions with other agents and contextual factors (騒音以外の要因や背景要因との交互作用)
Team 9: Noise policy and economics (騒音政策と経済)

-がある。
 今回のICBEN 2021は、Team 8を除く8つのセッショ ンに、Noise exposure assessment in health effect studies (健康影響評価に関する騒音曝露評価)、Health impact assessment / Burden of disease(健康影響評価と疾病負荷)、 Special topics related to noise effects(騒音影響に関連 する話題)の3つを加えた11セッションで構成された。 ICBEN 2021の発表件数は約200件(基調講演4件、口頭 発表140 件以上、ポスター発表50件)、参加登録者247名以上で、前回のICBEN2017(約200 件、266 名)とほぼ 同等の盛況さで充実した内容であった。チーム別の件数はTeam 3 が最も多い30 件台、次いでTeam 4、6、1 が 20 件台で、騒音による聴覚的・非聴覚的な影響、睡眠影響、アノイアンスに関する発表が全体の約6割を占めた。
 コロナ禍でオンライン形式の発表会が一般化してきた が、オンライン開催には利点と欠点がある。今回の ICBEN 2021 でもそれを感じた。140 件以上の口頭発表 を4日間で終える為、前回のICBEN2017 と同様に、基調講演など一部の発表を除き、常に3セッションを並行開催するパラレル形式が採用されたが、今回の ICBEN2021 では、参加者は11 月11 日まで発表(ビデオ)をオンデマンドで視聴可能である。本来であれば同時聴講できない発表を、後日、自由な時間帯に何度でも聴くことができる。これは大きな利点である。一方、口 頭発表はビデオ配信であったが、質疑応答は発表時刻にライブで行われた。その為、日本時間の真夜中に質問に対応しなくてはならず、日中の業務や研究活動後に行う には無理があった。時差のある国からオンライン国際会議に参加する場合の大きな問題点(欠点)である。
 さて、今回のICBEN 2021には小林理研から筆者と土肥の2名が参加した。筆者はTeam 5 のセッションで、夜間に被験者宅で人工的な交通騒音を聴かせた場合の睡眠影響(覚醒反応)を体動計と睡眠日誌で評価した結果の報告を行い、またTeam 3 から招待され、初めてチーム会議(今後3年間の活動について討議する会議)に参加した。土肥は、Team 7 のセッションに低周波音の音源同定手法の結果を報告すると共に、同研究チームの主査Norm Broner 氏と交流をもち、幾つもの貴重な情報を得た。パソコン画面を介したオンライン形式の国際会議であったが、共に貴重な経験をした。
 ICBEN 2021 の会議中に執行部が交代し(会長Mark Brink、副会長Dirk Schreckenberg、事務局長Charlotte Clark、前会長Mathias Basner)、次の3年間(実質2年間)の活動が開始された。次回のICBEN会議は、当初開催予定であった2020年の3年後、2023年にセルビア共和 国の首都ベオグラードで開催される予定である。その頃には対面形式の国際会議に戻っていることを期待する。

-先頭へ戻る-