2014/1
No.123
1. 巻頭言 2. inter-noise 2013 3. 17th workshop of the Aeroacoustics Specialists’ Committee of CEAS 4. はかり・天秤(重さを計る)
  5. 誘発反応検査装置 Integrity V500 ER-H1

      <会議報告>
 17th workshop of the Aeroacoustics Specialists’Committee of CEAS


騒音振動研究室  横 田 考 俊

  9 月24〜25日の2日間で「Atmospheric and Ground Effects on Aircraft Noise(航空機騒音に及ぼす気象と地 表面の影響)」と題する第17 回のCEAS-ASC (Council of European Aerospace Societies - Aeroacoustics Specialists’ Committee) workshop がスペインのセビリアで開催された。会場は、町の中心部から3 km 程離れたセビリア大学工学系研究科のキャンパスであった。このワークショップは今年で17回目の開催となるが、例年は航空機の機体やエンジンなど発生源に関してテーマが設定されており、航空機騒音の伝搬過程がテーマとされたのは今回が初めてである。日本からはJAXAの石井氏と私の2人が参加した。
 プログラムは、3件のKeynote Lecture(45分)と一般講演(30分)17件で構成され、“Meteorological effects” “Effects of Turbulence”“Modeling of atmospheric and ground effects on aircraft noise”“Long range sound propagation studies”“Assessment of atmospheric and ground effects in methodologies related to airport noise”の5つのセッション全ての発表が1つの会場で行われた。 また、1日目の夕方に航空機メーカーAirbus社の工場見学、夜にはバンケットが開催された。
 3件のKeynote Lecture はいずれも興味深いもので あった。1件目はturbulence の影響に関する講演で、その中で紹介された風および温度勾配の影響について検討可能な模型実験設備は非常に興味深かった。2件目では、FDTD法による屋外音響伝搬解析についてレビューがなされた。FDTD 法の基礎から、気象影響や地表面吸音の影響に関するモデル化、CFD解析結果との連携等、簡潔に整理されており大変勉強になった。3件目はアメリカの3つの機関(FAA, Volpe,Pennsylvania State University)が共同で開発した航空機騒音の予測モデル“HPM”の概要および検討結果が紹介された。このモデルは、PE法、FFP法、音線法の3種類の計算方法を組み合わせた航空機騒音の伝搬予測モデルで、以前より興味を持っており、インターネット上にuploadされていた報告書等を読んでいた。疑問に思っていた点をモデル開発者に直接聞くことができ、非常に良い機会となった。
 一般講演も興味深い発表が多く、音線法を適用した検討やturbulenceの影響に関する検討が比較的多かった。 また、予測結果を可聴化する検討事例も見られた。航空機騒音の予測結果を可聴化する検討については、internoise2013 でも事例が見られ、1つの研究の流れになっていることを感じた。
 私の発表は初日午前のkeynote Lecture直後、一般講演の1件目であった。JAXAで進められている航空機の次世代運航システム「DREAMS」の研究開発の一環と して進めている、気象影響を考慮した航空機騒音の伝搬予測モデル構築のために実施したフィールド実験について紹介し、モデル内で使用する気象パラメータの設定方法について説明した。発表後や休憩時だけでなく、メールでも質問を受け、概ね好評だったと感じている。
 今回、比較的少人数のワークショップというものに初めて参加した。30分の持ち時間に内容を詰め込めるだけ詰め込み、原稿を一気に読み上げた。読み終わった時には会場内には「よく読みきった」という感じの(暖かな?)ほほえみが起こっていた。その後、発表を聞く立場になったが、他の発表は内容をじっくりと説明するものが多く、ワークショップでの発表とはこのようなものかと非常に勉強になった。また、今回はcoffeebreak も lunch も全参加者が一緒にとるように設定されており、 朝会場に入ると全く逃げ場のない状態で1日を過ごした。常に英語での会話の中、いつ自分の研究について聞かれるかドキドキしながら過ごす緊張した2日間であったが、それぞれの参加者の顔が覚えられるまでゆっくりAirbus社の工場にて話ができたのは非常に貴重な体験であった。

Airbus社の工場にて

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