2005/10
No.90
1. 私の「イヤリング」

2. inter-noise 2005リオデジャネイロ報告

3. ロッセル塩によるクリスタルセンサ 4. 第25回ピエゾサロン 5. 防水型オーダーメイド補聴器HI-G4WE
   
 私の「イヤリング」

騒音振動第二研究室 落 合 博 明

 近年日本人の平均寿命が延び、街でお年寄りをよく見かけるようになった。また、60歳を過ぎても活躍されている方や、余暇を楽しむ方も多くなった。年を重ねるとだんだん目が見えにくくなり、耳が聞こえにくくなってくる。私は近視のため眼鏡をかけているが、最近手元のピントが合いにくくなり、遠近両用の眼鏡に変えた。一方聴力はというと、高周波数域が若干落ちてきているようで、背景騒音のある場所等では相手の話をときどき聞き直すことがある。
  私ももう何年かしたら、補聴器をつけなければならなくなるだろう。しかし、私は「補聴器」をつけることを少し躊躇うかもしれない。一つの理由がその名称にある。「補聴器」という呼び名はネガティブな印象がある。そんな理由から、補聴器をつけていることを他人に知られたくないという人も多いのではないだろうか。
 新聞のスクラップをひっくり返していたところ、10年程前の朝日新聞に女優の故沢村貞子さんが書いた記事が目にとまった。記事には、当時80歳の沢村さんが初めて補聴器をつけてみて聞こえのよさにびっくりしたこと、テレビ番組でナレーションの途中で音楽がかかるとナレーションが聞こえなくなってしまうことなどが書かれている。そして、記事は以下の文章で結ばれている。「知人から"沢村さん、補聴器のことよく書くけど恥ずかしくないの"ってよく聞かれます。"年なんだもの平気よ"と答えています。だって皆さん眼鏡は何の抵抗もなく使っているじゃない。耳だって同じこと。補聴器は私のイヤリング、楽しんで使っているわ」。沢村さんのように、親しめる呼び名(愛称)はないものだろうか。
 もう一つの理由が、補聴器のデザインにある。最近はデザインが重視され、家電・椅子・台所用品等で優れたデザインのものが増えている。眼鏡においても、様々な形ものが市販されており、好みの形のものを選ぶことができる。それに対して、補聴器では選択肢が少ないのはなぜだろう。
 最近流行のiPodを初めて見たとき「オーッ!」と思った。形はまさにポケット型の補聴器ではないか。マイクロホン位置の問題はあるとして、こんなおしゃれな補聴器ができたならネック・ストラップにつけて街を歩いてみたいと思う。色も白・黒・赤・青・銀などのバリエーションがあれば、その日の気分次第で好みの補聴器を選択でき、毎日が楽しくなるのではないだろうか。女性の場合、いくつになってもおしゃれはしたいもの。今の補聴器は目立たないよう、目立たないようにしているが、なぜ目立ってはいけないのだろう。眼鏡でもイブ・サンローランやピエールカルダンデザインがあるのだから、サンローランやカルダンデザインの耳掛け型補聴器があってもよいのではないか。機能さえ損なわなければ、メタリックの補聴器や小さなダイヤモンドの埋め込まれた補聴器があってもよいと思う。そうすれば、パーティや会合で、時計や指輪と同じように補聴器の自慢ができるのに…。
 私がユーザーになる頃には、デザイン的にも優れた補聴器が市販され、「おしゃれな」補聴器を身につけて周囲の音や会話を楽しみたいものである。

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