2001/1
No.71
1. 21世紀を迎えて 2. WESTPRAC VII 会議報告 3. 音響校正器 NC-74
 
 21世紀を迎えて

西暦2001年 元旦

理事長 山 下 充 康

 新年明けましておめでとうございます。

 この数年間、日本国はもとより全世界を覆っていた世紀末に特有の暗雲も新世紀がもたらす旋風で吹き飛ばされるような、どこかしら明るい気配が感じられます。小林理学研究所が民間の科学研究機関として発足したのが昭和15年(西暦1940年)。昨年は60周年を記念して、研究所の職員によるささやかな祝賀会を催しました。

 音響研究を中心にして60年の間に培われた数々の成果は国内外の研究者や関係諸機関から高い評価を得ているところであります。小林理学研究所がたどってきた道程には幾多の障害がありました。先輩達が乗り越えてきたそれらの障害については名誉顧問の五十嵐先生が書かれた記事「研究所と60年(No.70、2000年10月)」や監事の時田先生の「半世紀前の小林理学研究所(No.69、2000年7月)」などで詳しく紹介されております。この研究所が今日、このような姿を保ちながら精力的に研究活動をなし得ていることは、創立以来、先輩たちが凌いでこられた多くの苦難があってのことであり、それらの歴史的遺産に支えられているということを忘れるわけにはまいりません。今日、公益法人を取り巻く社会的な環境は決して平穏なものではありませんが、先輩達のご苦労を思うとき、新世紀を迎えるこの時期に我々が担うのは、苦難に負けることなくこの研究所の更なる発展を実現するという大きな使命であると考える次第です。

 今日、騒音を含めた様々な公害が「産業型公害」から「都市生活型公害」に変化しつつあります。道路沿道、鉄道沿線、工場などの事業所や空港の周辺といった特定の地域での環境問題に限らず、もっと広範囲の普遍的な姿で日常生活の場にとけ込んだ公害を視野に入れ、それを防止して環境を保全することに努めることが望まれており、これが我々の責務になってきていると感じます。我々の研究所が60年にわたって培ってきた音響科学に係る深く広い知見は、多様化した環境問題に対して適切で効果的な解決策を提言し、これが我々のなし得る社会への大きな貢献であると信じます。

 我々は目先の利益に捕らわれることなく、広い視野に立ち、音響学を中心にした科学者集団としてこれまでにも増して精神的に研究活動を続けて行く所存でございます。そして、質の高い研究成果の創出こそが諸先輩のへの恩返しであり、60年に及ぶ歴史的遺産の真価が示されるものと考えます。 21世紀の幕開けを迎えたこの初春に皆さまの益々のご健勝をお祈り申し上げるとともに、小林理学研究所が更なる発展をできますよう、従来にも増して強いご協力、ご指導をお願い申し上げる次第でございます。

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