1994/10
No.46
1. 騒音に係わる環境を考える 2. 自動演奏ハーモニカ? [ROLMONICA-MADE IN GERMANY] 3. 新型振動レベル計 VM-52/52A  ピックアップ PV-83A
        <技術報告>
 新型振動レベル計 VM−52/52A
     ピックアップ PV−83B

リオン株式会社 音測技術部 河 野 正 秀
研究開発部 関   淳   

1.はじめに
 我が国において、振動レベル計規格(JIS C 1510)が制定されたのは1976年のことであり、その後計量器として検定対象となり、今日に至っています。
 当社ではこの間、5機種の振動レベル計を開発し販売してきました。
 昨年、計量法が改正されましたが、振動レベル計に関する検査規則も一部改正され、国際化への対応がなされました。また、JIS改正も予定されており、より高い精度、性能が要求されてきています。当社では、その要求に応えるべく、ピックアップ部の基本構造を含め新規設計し、新型振動レベル計を開発いたしました。

2.開発のポイント
2-1.ピックアップ部
 本器の仕様では、振動レベルの測定下限を30dBとしていますが、これを達成するためには、高感度なピックアップを必要とします。一方、圧電素子を使用した場合、高感度と小型軽量化は相反するものがあり、通常、感度をより高くしようとすると、圧電素子周辺の構造は大形化し、重くなります。そこでPV‐83Bでは、新たにプレート状の高感度素子を開発するとともに素子の配番と構造を工夫し、十分な感度を維持しながらも小型軽量および低重心を達成しています。
 図1にピックアップPV-83Bの構造図を示します。図は蓋をあけ上部より見たところですが、中心ブロックの周囲に圧電素子を配置したところが特徴です。

図1 PV-83構造図

2-2. 本体部
 本体部においても、操作性を損なうことなく小型軽量化を図っています。液晶表示は離れた位置からでも見える様、可能な限り大形にしました。また、収納ケースに入れたまま使用出来るように、入出力コネクタを前面に配置したのも特徴です。

3.性能
3-1.湿度特性
 野外に於いて使用される機器に大切な事は、環境条件の変化に対する安定な動作です。特に、温度については十分安定な性能と感度が要求されます。図2にPV-83Bの温度特性を示します。圧電素子に、その感度変化を一部補正する補正回路を付加し、使用温度範囲内にて0.1dB程度の偏差に納まっています。
図2 PV-83B温度特性(3素子分測定例)

3-2.ノイズレベル
 次に測定範囲の下限についてですが、振動レベル計はいわゆる公害振動の測定だけではなく、構造物の微振動計測などにも利用される事があります。その際、周波数分析を同時に行う事も多く、どの程度までを測定値として利用できるか、知っておくことは大切です。
 図3に測定例を示します。これは、国分寺にある当社工場内の敷地で測定した例で、平たん特性を用い、出力に1/3オクターブの分析器を接続して測定しています。分析結果については、ほぼ15dB程度から測定値として利用できそうです。

図3 ノイズレベル測定例
平たん特性(Z方向)・レベルレンジ70dB
3-3.周波数レスポンス
 図4,5に総合周波数レスポンスを示します。点線の許容範囲は、平たん特性ではJIS C 1510-1976を、鉛直振動特性では新計量法で新たに変更された範囲を用いています。8Hzにおける基準値を0から−0.9に、また上限周波数を90Hzから80Hzにしたことが計量法改正による変更点です。
 80Hz以上については、7次のローパスフィルタにより遮断しています。
図4 総合周波数レスポンス(平たん振動特性)
 
図5 総合周波数レスポンス(鉛直振動特性)
4.特徴
 本器が持っている機能その他の面での特徴を紹介します。
a)X,Y,Zの3方向成分同時表示のバーグラフにより測定値のモニタが可能です。そのためチャンネルを切り換えて確認するわずらわしさがありません。図6に液晶表示器の表示内容を示します。液晶右下に10dBステップで表示されます。
図6 液晶表示器

b)大型液晶の採用で大変見やすく、またバックライトにより暗い場所での読み取りも容易です。
c)演算機能を有し、3方向成分同時にLeq, Lx,Lmaxの測定が可能です。
測定時間 10sec, 1, 5, 10, 15min, 1, 8, 24h
        5sec 毎を100回
       マニュアルによる任意時間
d)プリンタが接続出来、瞬時値または演算結果の印字が可能です。図7にプリンタCP-10を用いた印字例を示します。上半分は瞬時値の印字例、5秒毎に3方向同時に印字します。下半分は演算結果の印字例です。

図7 プリンタCP-10による印字例

e)メモリカードが使用出来、カードに記録したデータはレベルコーダLR-06に転記できます。ただしこの機能はVM-52Aのみに搭載されており、VM-52では使用できません。
g)時計を内臓しています。通常、液晶上部に表示しており、プリントアウト時やメモリーカードへの記録の際、測定データとともに時刻も記録されます。
h)商用電源が使えない野外測定では、電池の寿命は測定作業の簡便化に大きく影響します。回路素子の選択と回路構成を工夫し、低消費電力にすることにより、単2マンガン電池で約20時間、アルカリ電池では40時間以上の測定が可能となっています。

5.おわりに
 開発にあたっては、過去に逆上ってユーザーアンケート等も調査し資料としました。また、製品企画では、営業より常時2名の方に参加頂き、各営業所、代理店を通じユーザーの意見を出してもらいました。その中で強く要望された事が操作性の重視です。多機能のあまりに、基本機能に関する部分が、使いづらくなるようでは困るということです。各種演算機能を搭載する事は、現在では当たり前のようになっていあますが、極力、操作を煩雑にしないよう工夫が必要です。また、本来もとめられている機能、性能は何かをメーカは常に検討していかなければなりません。

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