1994/10
No.46
1. 騒音に係わる環境を考える 2. 自動演奏ハーモニカ? [ROLMONICA-MADE IN GERMANY] 3. 新型振動レベル計 VM-52/52A  ピックアップ PV-83A
       <骨董品シリ一ズ その23>
 自動演奏ハーモニカ?
     [ROLMONICA-MADE IN GERMANY]

所 長 山 下 充 康

 馴染みの西洋骨董店の一つに、オルゴールや旧い楽器などを専門に扱っている店があって珍しい品物が見つかると連絡をしてくれる。過日、奇妙な自動演奏楽器が手に入ったと知らせてくれた。

 自動演奏楽器と言えばその代表はオルゴールであろう。今、オルゴールの人気が上昇しているらしい。電気的に造られた人工的な音と違って、機械的に弾き出される素朴な響きが好まれるのか、様々な旧いオルゴールの音を録音したCDまでが市販されている。

 円盤が回転するディスクオルゴール、回転円筒式のシリンダーオルゴール、笛やシンバルや大鼓が組み込まれた大形のテーブルオルゴール、等々………。

 大形のテーブルオルゴールになると重厚且つ繊細な音を奏でて、立派な音楽演奏を抜露してくれる。欧米ではオルゴールではなくミュージックボックスと言った方が通用する。一般にオルゴールと言うとパリの街角などで目にする肩掛け式のストリートオルガンのようなのをさすらしい。

 わが骨董品部屋の展示品にオルゴールを一台は加えたく思っているが、残念ながら欲しいオルゴールは高価で手が届かない。

 さて、今回ここに紹介する自動演奏楽器はハーモニカが取り付けられた掌に乗るほどの大きさのべークライトの平たい箱である。「R0LM0NICA-MADE IN GERMANY」という文字が浮き彫りにされている。造られた時代は不明だが使われている材料や構造から推測して新しいものではないらしい。

ROLMONICAの外観、マウスピースの反対側の部分にハーモニカが差し込まれている。

 べークライトの箱の中には孔の開けられた油紙のロールが納められていて、クランクハンドルの付いた円筒でこれを巻き取るようにできている。油紙は巻き取られる途中でハーモニカの吹き口に密着するように造られていて、孔の開けられた部分だけが空気の通路になる。

ROLMONICAに付属した油紙の穿孔ソフト。
曲の内容は不明。

 ベークライトの箱の一部からマウスピースが突き出ていて、この部分を口にくわえて息を吹き込むか吸い込むかするとしかるべきリードが鳴る仕掛けである。ハンドルを回しながらマウスピースをくわえて吸ったり吹いたりすれば、ハーモニカの演奏がいとも容易に実現できることになるのだが………。

 一見したところ、旨く出来た自動演奏楽器のようであるが、実際にやってみようとして根本的な欠陥があることに気が付いた。良く知られているように、ハーモニカは吹く時と吸う時とでは音程が違う。ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドの八音を奏でるのに往復の息を使うから1オクターブを四穴で間に合わせている。油紙の孔が空気の通り道を特定してくれるまでは良いのだが、息を吹くのか吸うのかが不明である。

 ロールを巻き取りながら、息を吸ったり吐いたりしては隠されているはずの旋律を探り出そうと試みているが、今のところたどたどしい音が頼り無く連なるだけで、どんな曲なのか解明されていない。せめてリズムだけでも判明すれば吹き吸いを加減して音楽らしくなるのだろうが、今は落ちつかない気分のままである。

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