2013/1
No.119
1. 巻頭言 2. The 9th ISAIA 3. タッピングマシン 4. 第38回ピエゾサロン
  5. リオネット マジェスシリーズ

    <技術報告>
 リオネット マジェスシリーズ 〜補聴器の快適性の実現を目指して〜

リオン株式会社 医療機器事業部 開発部   中 市 健 志

はじめに
 補聴器は音声コミュニケーションに何らかの不都合を生じた方が、コミュニケーションツールとして使用されることは勿論のことですが、使用に際して簡易に扱えることが望まれます。そのためリオネットマジェスシリーズ(図1)は、補聴器使用者が「操作が楽」、「快適」ということが十分に実感できるよう、機能、性能をもう一度原点に戻り、見直して開発した補聴器です。リオネットマジェスシリーズの製品ラインアップは、耳内へ装着するオーダーメードタイプ補聴器として、目立たない超小型タイプ、適応聴力レベルが100 dBHLまで対応可能なマイエイドタイプ等4機種、耳にかけて使用するタイプ3機種と、お客様の様々な用途に応じることができるようにしました。また、ハイエンドの「リオネットマジェス」に加え、快適性を重視した「リオネットマジェスC」、価値あるエッセンスを凝縮した「リオネットマジェスV」と3シリーズを用意し、お客様の様々なご要望に応じることができるシリーズとして発売いたしました。本稿では、リオネット補聴器の「ハイエンド機種」という位置付けであるリオネットマジェスの特徴的な機能について紹介します。

図1 リオネットマジェスシリーズ

誰もが嫌がるピーピー音からの開放(AFBC+)
 補聴器というと、ピーピーとして使えないというマイナスイメージがつきまとうハウリングの問題があります。補聴器を装用する上で最も不快な思いをされる現象です。そこで、リオネットマジェスシリーズでは、このハウリングというマイナスイメージを払拭すべく、これまでにない、強力なハウリング抑制機能「AFBC+(プラス)」を搭載しました。従来のハウリング抑制機能は「逆位相方式」と呼ばれるものでしたが、それに加え「周波数シフト方式」を搭載することで性能を向上させることができました。ここで「シフト」とは「音の高さ変える」ということです。AFBC+は、ハウリングが発生しそうになった場合、元の音からわずかに周波数を高くして出力することでハウリングするリスクを軽減します。また、これまでのハウリング抑制機能は入/切を選択するのみの設定でしたが、AFBC+は3段階の中から選択していただくことが可能となりました。音質にこだわるモード、ハウリングを徹底的に抑えるモード2種類の切り替えが可能となっており、細かな調整を行うことができます。

補聴器に最も期待される機能(騒音抑制機能)
 補聴器を購入する際、お客様が最も期待される機能の一つに「騒音抑制機能」があります。これは周囲の騒音を抑えて音声を聞き取りやすくすることを目的とした機能です。今回、リオネットマジェスシリーズに搭載された騒音抑制機能「FFNR+(プラス)」は、これまでリオンの最上位機種に搭載されてきた騒音抑制機能FFNRがさらに強力になったものです。騒音レベルの推定時間、騒音を抑制する速度がより速くなりました。屋内から屋外へと静かな環境からうるさい環境に移動した場合に素早く対応して騒音を抑制することができるFast(ファスト)ノイズリダクションと、音声の特徴に着目して騒音だけを抑制することができるFine(ファイン)ノイズリダクションがより正確に騒音成分のみを抑制させます。また、これまでは騒音抑制機能は3段階の設定しかできなかったものが、お客さまの好みにあわせ、7段階の設定が可能になりました(図2)。図中緑の点線がFFNRです。FFNRに比べFNNR+は抑制量が増えた点、様々な周波数特性に抑制量を調整できることがわかります。

図2 7段階のノイズリダクション設定 図中緑点線はFFNR

屋外での快適装用(風雑音低減機能)
 耳介の外側にマイクがある耳かけ型補聴器で起きやすい事象として、風が補聴器に直接あたることで風雑音という不快な音が生じる場合があります。リオネットマジェスシリーズはアクティブに活動する方に有効な機能として、風雑音を低減する機能を搭載しています。この機能は風雑音を自動で瞬時に検出して、風雑音成分を低減することができます。耳かけ型タイプでは最大で30 dB、耳あな型タイプでは最大20 dBの風雑音成分の低減が可能です。サイクリングや風の強い日のアウトドアで是非ご使用していただきたい機能です。

耳障りな突発音を抑えるPNS機能
 屋内の音環境に目を向けると、食器等がぶつかる音、キーボードを叩く音やドアの閉まる音など様々な音が存在します。これらの音は突発的な音で、時として不快な音に感じる場合があります。そのような突発的な音を会話音などに影響することなく瞬時に抑制する機能がPNS(パルスノイズサプレッサー)です。家庭内ばかりでなく、オフィス等様々な場所で発生する突発音を抑制することができるので快適性が向上します。また、抑制する程度についてもあらかじめ選択することができるようになっています。

音の広がりを感じるためのブライトサウンド機能
 これまでのリオネット補聴器は、音声コミュニケーションを主目的とし、音声帯域の出力に重きをおいてきました。しかし、私たちの周りには音楽等高い周波数成分が含まれる音が存在します。リオネットマジェスシリーズでは8-12 kHz周波数帯域の音を人工的に創出する、「ブライトサウンド機能」を登載しました。4-8 kHzの音から8-12 kHzの音を作り出すため、ハウリングするリスクを回避しながら音の広がりを感じていただける機能です。事前のモニター調査では約7割の方が、このブライトサウンドの違いを感じていただけました。お試ししていただきたい機能です。

テレビや携帯電話の音を直接補聴器から
 リオネットマジェスシリーズでは、オプションの「プレミアムリモコンII」をご使用いただくことで、自宅で映画鑑賞や音楽鑑賞を楽しみいただけます。「プレミアムリモコンII」は、テレビの音を付属の送信機「テレビアダプター」を使い、「プレミアムリモコンII」を経由して補聴器に無線で送信することができます。煩雑な設定をする必要がなく、ご家庭のテレビ等のAV機器に「テレビアダプター」をつないですぐに使うことができます(図3)。また、「プレミアムリモコンII」を使用すれば携帯電話をバックの中に入れたまま、補聴器から相手の声を聞くことができ、自分の声を「プレミアムリモコンII」のマイクから相手に伝え、通話することが可能です。電話着信はボタンひとつで応答することも可能です。この「プレミアムリモコンII」では補聴器のボリューム操作や使用環境に応じてあらかじめプログラムされた音質の切り替え操作ももちろん可能です(図4)。

図3 プレミアムリモコンIIとテレビアダプターを使用した視聴イメージ

図4 プレミアムリモコンIIを使用した通話イメージ

補聴器内部を腐食から守る「ナノコーティング」処理
 高温多湿な夏は、補聴器のような電子機器は非常に過酷な使用状況にさらされます。これまでも、リオネット補聴器は耐汗性の高い構造設計を行って来ました。さらにリオネットマジェスシリーズは従来の耐汗技術に加え、特殊な撥水処理「ナノコーティング」を行い、より高いレベルの耐汗性能を実現することができました。主にスイッチ、ボリューム、マイクなどの精密部品の耐汗性を向上させ、お客様により安心して補聴器をお使いいただけるようになりました。

おわりに
 リオネットマジェスシリーズは、補聴器を快適にご使用いただくことを主眼として開発された製品です。ハウリング対策、装用時の快適性に加え、無線機能を用いた音環境の広がりを実現することができました。品質に対しても十分ご満足していただける製品であると思います。我々はお客様の生活の向上(クオリティーオブライフ)を念頭に、音声によるコミュニケーションの阻害を取り除くべく(バリアフリー)、限りある資源(エコマネジメント)を有効に活用して、これからも製品開発を行ってまいります。

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