2013/1
No.119
1. 巻頭言 2. The 9th ISAIA 3. タッピングマシン 4. 第38回ピエゾサロン
  5. リオネット マジェスシリーズ

 
  新年明けましておめでとうございます
            
平成25年(西暦2013年)元旦

理事長   山 下 充 康

 大震災と大津波、原子力発電所の事故などの未曾有の災害に見舞われてから2回目の新年を迎えました。昨年は被災地の一日も早い復興を祈りつつ新年のご挨拶を遠慮させていただきました。

 今年はここにあらためて新年のお慶びを申し上げます。

 電力需給逼迫が叫ばれる中で昨年も酷暑に見舞われ、政治に目を向けると与野党が衆参で逆転した「ねじれ国会」が継続、更には尖閣列島や北方四島を始めとする国際的な諸問題など、解決しなければならない幾多の難題に直している日本国です。大震災、大津波、原発事故などネガティブな事件が続きましたが、この秋、久々に明るいニュースが飛び込みました。京都大学の山中教授によるiPS細胞に係るノーベル医学生理学賞受賞のニュースでした。かつて全日本国民が太平洋戦争の敗戦に落ち込んでいた時期に、湯川秀樹博士がノーベル物理学賞を受賞(1949年)したことが日本国民に与えた喜びはひとしおのものでした。今日の暗い世相に覆われている日本国にとって、今回の山中教授ノーベル賞受賞のニュースは湯川秀樹博士の受賞に勝るとも劣らない輝いた出来事であったことでした。

 小林理学研究所が国内屈指の歴史を持つ音響物理研究機関として誇りを感じているところですが、音響科学の足跡を振り返るとき、近年のディジタルエレクトロニクスの技術に拠る部分が極めて大きなものであることに愕然とさせられます。さはさりながら自然科学研究の根底にはアナログ的な観点を忘れてはならないことが、いずれのノーベル賞についても研究の礎であることに気付かされる次第です。

 小林理学研究所では音響科学博物館を設けて旧い科学研究の実験道具を展示しているところですが、展示物に共通のコンセプトはアナログの考え方が根底になっていることです。自然科学の基本にはアナログ的な考え方があって、われわれはこれらの基本を見失うわけにはいきません。いまなお数々の実験を繰り返して様々な事象の物理的な本質を見極める努力を続けているところです。ディジタルが万能の世の中ですがその裏づけにはアナログ的な観点があることを忘れないようにしたいものです。

 新年に当って将来的な研究姿勢を考えてみました。今後ともご指導ご鞭撻をお願い致します。

 

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