2013/4
No.120
1. 巻頭言 2. 第25回中華民国音響学会学術研討会 3. カ ウ ベ ル 4. 光散乱式気中粒子計数器 KC-31/KC-32
   

 
  一般財団法人小林理学研究所への移行


理事長   山 下 充 康

 財団法人小林理学研究所が文部省から許可を受けて設立されたのは昭和15年(西暦1940年)8月24日、今から73年前の夏のことでした。日獨伊の三国軍事同盟が締結され、大政翼賛会の創立、紀元二千六百年式典の挙行、翌年は太平洋戦争の開戦をむかえようとしている年、日本国内はもとより、世界中が不気味な暗雲に覆われようとしていた時代です。小林理研はそんな時期に設立されました。科学の重要性を説き、科学の更なる振興を視野に捉えて日本国の支えの一助としようとの目的で民間の科学研究機関を設立することを志し、これを実現した設立者たちの心意気には敬服の念を禁じ得ません。設立趣意書の文面 は以下のとおりです。今日ではほとんど使われることのない難解な用語が散見されますが、文章の主旨は十分に読み取ることができます。設立73年目に当たるこの年、文部科学省所管の「財団法人」から、内閣府の認可を受けて「一般財団法人」へと移行致しました。移行に伴って「寄付行為」を「定款」に改める等、様々な変更がありました。
 「財団法人小林理学研究所」設立趣意書の冒頭に下記の如く記述されています。

 「方今皇国文運ノ興隆国力ノ進暢ハ前古其ノ比ヲ見ザル所ナリ。然レドモ今回ノ事変、今後ノ国際情勢ニ鑑ミルトキハ、更ニ一層新進学徒ノ献身報国独創的ナル研鑚努力ニ依リ科学ノ新ナル分野ノ開拓応用ニ俟ツベキモノ頗ル多シトス。

(中略)

 仍テ茲ニ財団法人小林理学研究所ヲ設立シ理学及其ノ応用ヲ研究シテ公益ニ資シ以テ皇国現下ノ要請ニ応ゼントス。今ヤ東亜新秩序ノ建設著著其ノ基礎ヲ固メ八紘一宇ノ聖業次第ニ成ラントス。庶幾クハ微力興国ノ一端ニ貢献スルヲ得バ幸ナリ。昭和十五年八月八日」

 73年前に設立された小林理研ではありますが、太平洋戦争をはじめ幾多の社会的な混乱に出会いながらも設立当時の趣意に遵って「科学する心」を忘れることなく研究活動を続けてまいりました。小林理研の財産は73年に及ぶ長い歴史があってこそ培われ得た研究者の精神であると信じます。このたびの一般財団法人への移行が研究所の本質に、何ら影響を与えるものではありません。ややもすると足もとに蠢く魑魅魍魎に惑わされて近視眼的な対応を優先しがちな昨今の情勢ですが、足元を固めて背筋を伸ばし、真理を見据え続けてきた科学者の姿勢は今後とも歴史ある小林理研の誇りとするところでありましょう。

 

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