2011/7
No.113
1. 巻頭言 2. WIND TURBINE NOISE 2011 3. 手廻しサイレン 4. 第36回ピエゾサロン
  5. 精密騒音計NL-52 / 普通騒音計NL-42

     <技術報告>
 精密騒音計NL-52 / 普通騒音計 NL-42

リオン株式会社 環境機器事業部 開発部  尾 崎 徹 哉


図1 普通騒音計NL-42(左)、精密騒音計NL-52(右)

図2 防水設計

1. はじめに
 多くのお客様にご愛好頂きロングセラーとなったNL-20シリーズが発売され約10年が経過した。
 今回、さらなる“計測の信頼性向上”をコンセプトにフルモデルチェンジしたハンディタイプ精密騒音計NL-52 / 普通騒音計NL-42を開発したのでここに紹介する(図1)。
 本器は騒音計の各種法規である計量法、JIS C 1509-1:2005、IEC 61672-1:2002、ANSI S1.4-1983、ANSI S1.43-1997に適合する。またウインドスクリーン装着時、マイクロホン延長時も同規格に適合する。
 環境騒音測定から工業計測まで幅広い騒音測定での使用を想定している。

2.製品の主な特徴
(1) 防塵防水性能
 本器は防水構造(防塵防水性能:IP54、マイクロホン部除く)になっているので屋外の測定でも安心して使用することができ、突然の降雨による不用意な故障を低減することができる(図2)。また屋外用ウインドスクリーンWS-15を装着することでマイクロホン部も保護される(IPX3)。

(2) ディジタル信号処理技術を駆使した高精度・高安定性
 長年培ってきたディジタル信号処理技術を駆使してすべての演算処理を行っている。測定下限25 dB〜測定上限138 dB(A特性、1 kHz)までを1レンジで測定できるため、レベルレンジを切り替える煩わしさがなく、現場での設定負荷軽減に貢献する。
 NL-52 / NL-42では使用用途に合わせて複数のウインドスクリーンを用意している。各々のウインドスクリーンに応じた周波数補正をディジタル信号処理しているため、ウインドスクリーン装着時も規格に適合する。
 また測定環境(−10℃〜+50℃)においても温度に応じた処理を施しているため高精度かつ安定性に優れる。

(3) 停電時動作保証機能および突然の電源断へのデータ修復機能搭載
 数日間の連続測定では外部から商用電源を利用することが一 的である。その場合、停電などの電源トラブルによって測定が停止することが懸念される。本器は停電時動作保証機能が装備されており、外部電源が遮断した場合でも本体内の乾電池によって動作は継続されるようになっている。また本体内の乾電池が未挿入時などに、突然の電源断が生じた場合でも破損したデータを自動修復する機能があるので再測定の心配もない。

(4) マイクロホン延長コードの影響
 マイクロホン・プリアンプをマイクロホン延長コードで延長した場合、コードの長さによって測定可能な音圧レベルと周波数が制限される。これは延長コードの持つ容 によるもので、コードが長くなるほど測定できる音圧レベルと周波数が低くなる。今回新規にプリアンプを開発し、延長コードの影響を小さくした。これにより100 m延長した場合でも測定上限(20 kHz、138 dB)を測定することができる(図3)。

(5) TFTカラー半透過液晶と日本語メニュー
 画面は大きく視認性に優れた3インチバックライト付TFTカラー半透過液晶を採用した。屋内、暗所ではバックライト付の透過型、屋外では反射型として動作するため、何処でも良好な視認性を得ることができる。また動作状態が一目でわかるLEDも搭載している。
 日本語表示に対応し、機能の説明をよりわかりやすく直感的な操作が可能となり、測定に慣れない人でも安心して測定することができる(図4)。さらにヘルプ機能も新たに追加し、機能の説明や使い方が本体で確認できるため取扱説明書の携帯が不要である。

図3 マイクロホン延長コードの影響

図4
(a)測定画面  (b)メニュー画面  (c)ヘルプ画面

 

(6) 長時間にわたる測定データの取得、波形収録
 オプションプログラムNX-42EXをインストールすることで100 ms毎のLp(瞬時)値連続データや10分毎のLeqLmax等の演算値を同時に最長1000時間連続取得することができる。またタイマー計測も可能で、あらかじめ設定した時刻になると自動的に計測を開始し、1時間毎に10分間の計測を24時間行うといった測定も本器設定でできる。またオプションプログラムNX-42WRにより非圧縮のWAVE波形を測定データと共にSDカードに録音することができ、各種波形分析ソフトやコンピュータによる分析が可能である。
 その他、お客様のニーズに合わせてカスタマイズできる豊富なオプションプログラムを用意している。コンパレータ出力機能やオクターブ・1/3オクターブバンド実時間分析、FFT分析など様々な測定に対応が可能である。

(7) 耐環境性能の向上
 JIS、IECでは電磁環境性能として接触放電(±4 kV)、気中放電(±8 kV)といった静電気放電や26 MHz〜2.7 GHz(電界強度10 V/m、1 kHz、80 %振幅変調)の無線周波電磁界に対して74 dB入力時に±1 dB以内の変動であることなどの耐性能が規定されている。特に無線周波電磁界については広い直線動作範囲を有する騒音計には非常に厳しい条件であるが、シールド性能の強化などでこれを実現した。

(8) 出力端子
 パソコンとの 信はRS-232C端子またはUSBポートを利用する。USBはストレージ対応であるため、パソコンに接続するとNL-52 / NL-42がリムーバブルディスクとして認識される。これにより、SDカードを本体から外すことなく、パソコンへのデータ転送が可能。また、専用プリンタへの印字もできる。
 交流出力端子(ACOUT)、直流出力端子(DCOUT)、コンパレータ端子も個別に用意している。

(9) 環境に配慮した設計
 環境にやさしい製品づくりを目指し、設計段階から環境へ与える負荷を少なくするよう検討し、下記項目において環境に配慮した設計になっている。
 ・すべての部品においてRoHS対応品を採用、および鉛 フリー半田による部品実装(グリーン製品)
 ・ニッケル水素充電池に対応し、乾電池廃棄量の削減に貢献
 ・省電力部品の採用、およびリオン独自のディジタル信号処理技術を駆使することによる消費電力の低減  (ECO設定機能搭載)

3.環境計測データ管理ソフトウェア AS-60
 環境基準などの評価を行うためのソフトウェアAS-60も製品化された。このソフトウェアの操作は簡便であり、録音データの再生や除外音の処理等のデータ編集、日報などの帳票作成を効率よく行うことができる(図5)。

図5 環境計測データ管理ソフトウェア AS-60

 

4.おわりに
 新規に開発した精密騒音計NL-52 / 普通騒音計NL-42について紹介した。騒音測定にNL-52 / NL-42が使用され、皆様の計測に役立つことを祈念している。
 これからもお客様の声を大切にし、より良い製品開発に努力していきたい。

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