2011/7
No.113
1. 巻頭言 2. WIND TURBINE NOISE 2011 3. 手廻しサイレン 4. 第36回ピエゾサロン
  5. 精密騒音計NL-52 / 普通騒音計NL-42

 
  趣味としてのクルマ、仕事としての車            

騒音振動研究室   松 本 敏 雄

 若者のクルマ離れが叫ばれて久しい。いろいろと調べてみると、クルマに対する興味の低下だけが原因ではなく、経済的な問題や趣味の多様化等の様々な要因により、若年層のクルマ離れが顕在化したようである。私は、18歳で免許を取り、20歳の時に初めてクルマを購入した。そのクルマは塗装も剥げかけたボロボロの中古車。車両価格より保険料の方が高かった。当時のガソリンは170円/L位。お金も無かったので、クルマを使う度に10L入れては出掛けていた。クルマを買ったことで経済的には苦しくなったが、行動範囲は広がり、帰りの時間も気にしなくなった。あれから約30年、6台目の今のクルマはコンパクトカーである。未だにフェラーリやポルシェなどの高級スポーツカーには憧れている。また、中学生の時に友人の影響でクルマのレースに興味を持ち、今でも年に数回はサーキットに足を運び、レースを観戦している。無類のクルマ好きである。小林理学研究所に入所してからは、東名高速道路における道路交通騒音の測定が最初の仕事であった。それ以降今日に至るまで道路交通騒音の対策や予測の研究業務に携わっている。趣味が高じたわけではないが、仕事としても車を相手にしている。

 近年、低公害車、エコカー、次世代自動車といろいろと呼び名はあるが、ハイブリッド車等の普及が加速し、今後更なる増加が見込まれている。2010年4月に経済産業省が公表した「次世代自動車戦略2010」によると、2030年の乗用車の新車販売台数に占めるハイブリッド車等の割合は、民間努力ケースで30〜40%、政府目標で50〜70%である。官民の協力次第では2030年に販売台数の2台に1台が次世代自動車となる。一方で、ハイブリッド車や電気自動車は低速走行時(モーター走行時)の音が小さいため、ユーザや視覚障害者団体から歩行時に車の接近に気付かず危険であるとの指摘が寄せられた。国土交通省では委員会を設置し、この問題に対し検討を重ね、2010年1月に「ハイブリッド車等の静音性に関する対策のガイドライン」を公表した。低速走行時に車の接近を歩行者に知らせる車両接近通報装置の設置を推奨するという内容である。騒音問題の解決に携わる者としては、次世代自動車は大いに興味のある車である。車両接近通報装置からはどんな音がどんなレベルで発生するのか?走っている車の半分が次世代自動車になったら沿道の騒音はどの位下がるのか?など、様々な思いが交錯する。しかしながら、趣味のクルマとしては魅力が少ないように感じる。そのスタイリングなのか、エンジン音なのか、自分でもわからない。最近は、自宅と研究所の往復がクルマの主な使い道で、単なる移動手段となりつつある。今後、趣味のクルマとしても魅力があり、環境に優しい車が登場するであろう。2030年、自分はどんなクルマに乗って、どんな車を相手に仕事をしているのであろうか。

 

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