2009/10
No.106
1. 巻頭言 2. inter-noise2009 3. 鉄の代用:陶器の配電用具 4. 第34回ピエゾサロン
  5. 純水中パーティクルカウンタ KL-30A

     <技術報告>
 8チャンネルデータレコーダ DA-40

リオン株式会社 計測器技術部  進 村 正 樹

■ はじめに
 リオンの液中パーティクルカウンタは、国内トップシェアを堅持し、研究室から電子デバイスの生産現場、医療の領域まで幅広い領域で使用されています。その中でも大きな割合を占めるのが、電子デバイスの生産現場です。電子工業においては半導体をはじめ、微細加工技術の向上によりデバイスの高集積化が進んでいます。製品の歩留まりに影響を与える粒子はより微小となり、生産工程で使用される超純水の清浄度の管理要求レベルは年々高まっています。このような要求に対応するべく、測定の信頼性を高めたKL-30Aを開発しましたので、その特徴について紹介します。

図1 KL-30A外観

■ 製品概要
 パーティクルカウンタKL-30Aは、超純水中に存在する微粒子の測定に特化したモデルで、XP-L4という従来機種を基にした性能上位機で、リオンの純水用パーティクルカウンタのハイエンドモデルとなります。光散乱方式を採用し、液中パーティクルカウンタとしては初めて光源に半導体レーザ励起固体レーザを採用しました。これは低光ノイズであり、空間モードに優れた特徴があります。また、光学系の最適化、流体の最適化を行うことにより、測定可能な粒子の最小直径(最小可測粒径)は0.05μm(1μmは10-6m)で、単位時間に測定できるサンプル量を従来機種に対して大幅に向上させました。これにより、より高清浄な超純水の監視が可能となっています。KL-30Aは特に、最小可測粒径における検出能力を確保し、競合他社に対して優位性を持たせました(詳しくは後述)。
 表示部は、カラー液晶タッチパネルを採用しました(図2)。電源ON/OFFと測定START/STOPはフロントパネルに配されているスイッチで行いますが、表示の切り替えや、設定等は画面上で行います。
 D/Aコンバータ出力を搭載しており、測定データをアナログ信号で監視することが可能となっています。

図2 表示部
(出荷時設定)

■ 製品の特徴

最小可測粒径0.05μm
 測定可能な微粒子の最小直径は0.05μmで、業界最小クラスです。

実効流量2 mL/min
 実効流量とは、単位時間に測定できる試料の量を示した値です。この値が大きいほど製品として優位となります。KL-30Aは、導入試料流量20 mL/minに対して、その10 %を実際に測定しています。この値を計数効率と呼びます。実効流量は、導入試料流量に計数効率をかけた値となります。
 KL-30Aでは従来機の20倍を実現しました。従来機XP-L4では、1 mL/minの純水を測定するのに10分かかっていましたが、KL-30Aでは30秒で測定することが可能となりました。

実効流量が粒径によって変化しない
 他社の競合製品は、実効流量が粒径によって変化するという特徴を持ちます。これは、大きい粒子を小さい粒子として計数してしまうことによって起こります。その結果、測定の信頼性が低下してしまいます。
 KL-30Aは、多チャンネルフォトダイオードを採用した光学システム及びそれに最適化した信号処理アルゴリズムを搭載することにより、この欠点を改善しています。
 図3は実効流量と粒径の関係を表したグラフで、他社の競合製品とKL-30Aを比較しています。
 横軸は粒径、縦軸は実効流量を表しています。KL-30Aが一定の実効流量であるのに対して、他社製品は粒径が大きくなるに従って実効流量が多くなっています。KL-30Aは計数効率を一定に保つことにより測定の信頼性を損ないません。

最小可測粒径における計数性能に優れる
 KL-30Aは最小可測粒径の粒子において、計数性能を確保しています。最小可測粒径付近の粒子を使用して、他社競合製品と比較測定した結果、KL-30Aは他社製品に対して大きく上回っています(図3参照)。他社製品は、大きい粒径では実効流量が多いですが、最小可測粒径付近の粒径では極端に少なくなっています。これは最小可測粒径付近の粒子に対する計数性能が低いことを示しています。KL-30Aの最小可測粒径における計数性能の高さは業界最大を実現しています。

図3 実効流量と粒径の関係

偽計数0.05個/mL
 偽計数は、主にフォトディテクタのノイズに起因する計数で、実際の粒子以外の計数の事です。値が小さければ小さいほど良く、理想的には0個です。KL-30Aでは、0.05個/mLをカタログスペックとしています。

高い粒径分解能
 粒径分解能とは、粒径を正確に分別する能力を表したパラメータで、測定の信頼性に関係します。他社競合製品には粒径分解能の値はカタログに記載されていません。

任意に粒径の設定が可能
 KL-30Aは、0.05μm〜0.2μmの範囲内で任意に測定粒径レンジの設定が可能となっています(2〜10段階)。出荷時設定は、0.05, 0.1, 0.15, 0.2μmで変更可能なステップ幅は0.01μmとなっています。

オールインワンタイプ
 KL-30Aは、センサ、コントローラ、流量制御モジュール、コンパクトフラッシュメモリ、プリンタ(オプション)を一体化したオールインワンタイプのため、超純水ラインに直接接続でき、監視からデータ保存までを1台で行うことが出来ます。また、流量計、電源スイッチをフロントパネルに配置するなど、ユーザからの要求を盛り込み、使い勝手を向上させました。

■ 終わりに
 液中パーティクルカウンタの性能を特徴づける仕様は「最小可測粒径」と「実効流量」です。この2つの仕様の実現性は、相反する特性となっています。最小可測粒径が小さくすることも必要なことですが、実効流量が少ないということは測定の信頼性の低下に直結します。今回、KL-30Aの開発では実効流量の向上を重視しました。
 もちろん、最小可測粒径に対してもお客様の要求はより高い物となっています。最先端の半導体製造メーカからは、最小可測粒径0.02μmという要求も上がってきています。こういったお客様の要求に常に耳を傾け、より良い製品を開発していく所存です。
 KL-30Aは2009年5月末に販売が開始されました。デモ活動も多数の箇所で行っております。このKL-30Aが多くのお客様に認めていただけることを願っています。 。

 

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