2010/1
No.107
1. 巻頭言 2. 2009 IEEE IUS 3. 電灯線からのAC電源 4. 振動分析計 VA-12
   

 
 Change!!    平成22年元旦

理事長  山 下 充 康

 謹んで新年のお喜びを申し上げます。昨年は東西ドイツを分離していたベルリンの壁が取り壊されてから20年を迎えました。日本では劇的な与野党の交代、アメリカ合衆国では初の黒人大統領が誕生しました。年間を通じてトップに選ばれた用語は「政権交代」、今は社会の構造が大きく変わろうとしているようです。

 「財団法人小林理学研究所」が理学研究のための学術団体として文部省による認可を受けたのは1940年8月24日でした。設立から70年が経過することになります。

 大きな「変革」が我々を取り巻いて嵐のように吹きすさんでいる昨今の状況を観るとき、「財団法人小林理学研究所」の70年に及ぶ過去の歴史には重いものを感じます。「物理学の基礎および応用にかかる研究」を中心に長きにわたって音響振動を中心に基礎、応用の研究を進めてまいりました。音響分野の研究の中でも「騒音」を視野の中心に捉えて、その制御と評価、計測の技術を研究テーマに挙げておりました。具体的には「建築材料の音響性能についての研究」、「騒音源からの音の放射を低減する方策の研究」、「音と上手に付き合うために聴覚機能維持のための研究」、「音を的確に捉えるためのセンサーと計測システムの研究」等々が精力的に推進され、物理工学に基づいた音響研究は多くの成果を結び、社会に多大な貢献をはたしてまいりました。さりながら、ここで昨今の社会的な動向を俯瞰するとき音響研究の意味が大きな変革を迎えていることに気付かされます。

 エレクトロニクスの発達、普及は一昔前の研究手法をすっかりアンティークなものにしてしまいました。実験に使用された用具等は骨董品として音響科学博物館に展示されています。町内に普通に見られたDPE店(現像・焼付け・引き伸ばしをする写真屋)はデジタルカメラの普及によって姿を消す傾向にあります。ライトアップ・イルミネーションに使われた多くの豆電球は発光ダイオードに、固定電話機は携帯電話に変わってきました。

 地球温暖化にブレーキをかけるために化石エネルギーの使用が抑制されて電気自動車の開発が進み、エンジン音が小さすぎて危険なことからわざわざ音を付加するという奇妙な対応が要求されています。様々な部分で「変革!」「チェンジ!」が目まぐるしく展開されています。

 音響研究の分野にも変革の大波は着実に押し寄せています。「騒音対策」、「騒音低減」は行きつく所まで到達したのではないでしょうか。今、小林理学研究所がはたして来た役割を振り返ると同時に将来への展望を考えたいものです。

 

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